呪い付与
「人に悪感情を引き出す為に作ってる呪具を人間が作るっていったい何を考えてるんだ……」
「おいおい、ちょっと見ない間に随分と物騒な物に手を出そうとしてるな?」
「実はもう装備自体はしてるんですけどね」
魔硬貨を死神さんに向かって山なりに指で弾く。死神さんがその魔硬貨をキャッチしてちょっと見ただけで僕の手元に勝手に魔硬貨がワープしたように戻ってくる
「その感じ……間違いない。呪具だ」
「あと形が変わっちゃってますが、これも呪具ですね」
手足のブレスレットとアンクレットになった呪枷を悪魔のお兄さんに見せる
「おいおい、なんだこの呪具は?作った奴は相当凄腕の悪魔だぞ……」
「あー……これが最高傑作とか言ってましたね」
モニクの最高傑作は僕にとってもかなり重要なアイテムになっている。これのお陰で僕の火力というか手数が倍になっているような物だ。正直呪いが無くてもモニクに返したくない装備だ
「お前……呪具を作った悪魔と会話したのか?」
「ええ、まぁ……」
あ、これどうしよう……悪魔のお兄さんにはモニクの事は黙っておく方が良いかな?下手に詮索されても困るし
「中々の強敵でした。運が悪ければ僕は死んでたかもしれません。これは最後の切り札として装備させられた物です」
嘘は言ってない。ただ詳細を話していないだけだ
「あの躊躇の無さと良い、すぐに奴の搦め手を見抜いた辺りもしやとは思ったが、お前……悪魔と既に戦った事が有ったんだな?」
「……呪具を装備させられても悪魔と対等にやり合える時点でお前はおかしい」
「もちろん向こうから襲ってきたから抵抗したまでです。手出ししてこなければこっちから事を構えようとはしませんよ」
死神さんと悪魔のお兄さんに警戒されてるっぽいなぁ……まぁ言い方的に殺している様に聞こえてしまうかな?
「あの、何か勘違いしてるかもしれませんが僕はその悪魔、殺してないですよ?」
「「は?」」
「一応倒してこれ以上悪さしないようにって約束させましたね」
「「はぁ……」」
二人してため息をしないで欲しい
「悪魔をただ殺すより生かした状態で倒すというのは屈服させたと同義だ。悪魔にとって屈服は死ぬ以上に受け入れられない事……それを成すという事はその悪魔よりも上だと完全に認めさせたって事だ。普通の人間には天地がひっくり返ってもそんな事は出来ない」
「じゃあ天地がひっくり返ったんだ」
「お前が普通じゃないって言ってるんだ。さっきもなんだあれは?悪魔以上に悪魔みたいな奴だな……そいつは今どうしてるんだ」
そこで悪魔の方が普通じゃない可能性が抜けてる時点で悪魔はイレギュラーをそんなに考えないタイプなのかな?
「まぁ、僕に手を出さないのであれば殺す理由も無いので好きな所に行きなって感じで解放しました」
ま、これでモニクの事に関しては一応隠せたかな?
「引き連れているような様子も無いし、そこは信じよう。だが、何故お前は呪具の作り方を知っている?」
おっ、これなら良い感じに話を逸らせそうだぞ?
「それに関しては交換条件って奴ですね。見逃す代わりに何か情報をくれって話したら呪具の情報を貰いました。まぁその場限りの口約束でしか無いのでガセかもしれませんが、僕も詳しい事は聞いてないんでお手伝いして頂けたらと」
「言っちまった事には責任を取らないとな……分かった。呪具製作を最後まで見てやろう」
よし、アシスタント確保成功だ!話を逸らせてアシスタントも手に入ったぞ?
「それじゃあ、負の感情の溜まり場までお願いします」
「あぁ、ついてこい」
「ここまで来たら最後まで一応見ていくか……」
悪魔のお兄さんを追って、負の感情の溜まり場へと向かう。死神さんも一応まだ付いて来てくれるみたいだ
「うっ……」
「これはまた……中々に悪いエネルギーというか、気みたいなのを感じますね」
連れて行かれたその場所はプールのような物がたくさん並んでおり、その中には水では無く、どす黒いドロドロとした物で満たされていた。あれからはあまり良い物を感じない。という事は負の感情の塊という事で間違いないだろう。死神さんも顔を若干歪めてる。嫌な物を見せてしまったか
「とりあえず、ここで負の感情を付与しな。その間に余計な念が入らない様に俺は離れてるぜ」
濃密な負の感情を装備に付与するには余計な事は考えないのが一番みたいだ。この空間で無心かぁ……中々大変そうだ
「現世にまだ恨みがあるのなら、コイツにぶつけてくれ。地上まで持っていく」
ブラックイヤーカフをインベントリから出して、負の感情らしき物が溜まっているプールの中に放り込んだ。これで恨みのエネルギーが装備に引き寄せられて呪いのアイテムに変わるだろう
「おぉ……明らかに何か吸い込んでる」
放り投げたアイテムを見てみると徐々にアイテムが変色、変質していく様を見る事が出来た。恨みがアイテムに貯まっていってるんだろう、これがどういうアイテムになるのかまだ分からないけど、念が入ると良くないみたいな事を言ってたし、逆にこういう形にしたいという念があれば伝わるのか?
「よし!」
やってみる価値ありますぜ!