悪魔の腕試し
「おやおや、死神様がわざわざこんな所に何用ですか?」
「あぁ、ちょっとした野暮用でな。なんだ?見られたらマズい物でもあるのか?」
死神さんに連れられて地獄を進んで行くと、死神さんに負けず劣らずのイケメンで上裸の悪魔がそこに居た
「いやいや、見られたらマズいじゃ無く、近寄られると危ないから言ってるんですよこっちは。問題を起こして死神様の逆鱗に触れるなんて面倒な事は避けるに限ります」
「良く言うぜ……」
このイケメン空間に割り込まずに空気と化していた方が絶対話が進むなと思っていたので何も言わなかったけど、これ実は本気で気が付いてないのでは?
「ところで、そっちの小さいのは何なんです?」
おっ?喧嘩か?
「おいおい、丁寧に扱ってくれよ?一応これでも賓客みたいなものなんだからな」
「死神様の賓客ねぇ……」
値踏みするように見られるが、とりあえず動かないでおこう。もしこれで更に侮辱されるような事があれば僕も黙っちゃいないが
「なぁ?ちょっとした腕試しをしても良いか?」
「腕試し……何のためにでしょうか」
「そりゃあわざわざ死神様が地獄まで連れてきた特別なお客さんとあれば、普通じゃないんだろ?何の為にやって来たかは知らないが、どの程度の実力者なのか知っておいて損は無い……何なら俺に勝てたらアンタが地獄までやって来てやりたい事の手伝いくらいならしてやっても良いぜ?」
ふむ、悪魔に呪いのアイテム製作を手伝ってもらえたらしっかりした呪いのアイテムが作れるかもしれない。ここは腕試しを受けた方が良いかもしれないな
「辞めといた方が良いと思うぞ……」
「アァ……アノオカタハ……!」
「ウァァ……ユルシテ……ユルシテ!」
「アノオスガタハ……!」
悪魔とは対照的に恐れだす亡者達。僕の噂どうなってるんですかね……
「なんだ……急にどうしたんだ。とりあえずお前らはそこで見ていろ」
「これ言ったら負けフラグだけど……死神さん。別にアレ、倒してしまっても構わんのだろう?」
「お?おぉ……良いんじゃないか?」
急に振られた死神さんも生返事で答える。倒してしまってもって言ったけど相手の実力も分からないし、勝てるのかどうかも分からない。でも、タイマンならまだ多少は戦えるはずだ
「面白い事言ってくれるじゃないか。そこまで言うのならアンタに先制の1発をくれてやるよ」
「え?マジですか?やった【強化】【アビスフォーム】」
先制の一撃を譲ると言われたので【マクロ】で組んだ強化魔法詰め合わせと【アビスフォーム】を発動する。【深淵の一撃】は流石にヤバいけどこれで触手を腕に纏わせてドリルパンチ的なノリで攻撃する分には先制攻撃としては最大の一撃だろう
「「「「「!?」」」」」
「それじゃあ行きますよ!」
「ちょちょちょ!待て待て!分かった!変な事言って悪かった!」
悪魔が急に戦闘態勢を解き、謝ってきた。僕もちょっとやり過ぎかなと思ったけど、やっぱり実力が見たいなら僕のこの姿は出さざるを得ないだろうと思っていただけなんだけど……やっぱり【アビスフォーム】の時の見た目って相当ヤバい雰囲気が出てるんだろう。交渉がめちゃめちゃスムーズだ
「「「オオ……オユルシクダサイ……」」」
「なんだ今のは……」
「おい死神様よ?なんだよアイツ!?本当に人間か?」
亡者達が地面にひれ伏して、死神さんが何かを必死に考えて、悪魔は僕の事を死神さんに確認してる。まさに大混乱だ
「あの、腕試しってこれで終わりですか?」
「試すも何もあのままだとお前絶対俺の事粉砕する気だっただろ!」
「粉砕って……流石に腕の1本くらい持っていく気概が無いと悪魔のお兄さんには攻撃が当たらないかなと……だって、何か幻覚系の魔法使ってましたよね?」
「っ!」
僕に先制の一発を譲ると言ったあの時、確かに悪魔のお兄さんは前に出てきたけどオーラが動いていなかった。という事は幻覚系、というかデコイみたいな物を出していたから先制攻撃しても良いとあれほど余裕だったんだろう。僕もそれが分かったのでデコイのその後ろ。本体が居る位置に攻撃が届く様にドリル状にした触手のパンチを出そうとしたけど止められてしまった。もしかして何か障壁系の魔法(対魔法用の)もついでに発動していたのかな?
「何となく魔法は防がれそうだと思ったんで物理で行きたかったんですが、間違ってましたか?」
「あの一瞬でそこまで見抜いて……完全に俺の負けだな……」
一応そんな気がすると思って言ってみたけど合ってたみたいだ。これで違ってたら非常に恥ずかしい事になってた
「良いぜ、腕試しはそっちの勝ちだ。それで、何をしにわざわざ地獄まで来たんだ?」
「どうしても自分で使う用の呪いの装備が作りたくて地獄まで来ました」
「「はぁー!?」」
死神さんと悪魔のお兄さんの2人とも顎が外れた様に驚いている。凄い顔してるな?
「呪いの装備!?しかも自分で使うってなんだよ……」
「おいおい、とんでもない賓客を連れてきたな……」
「他の人とかに迷惑を掛けるつもりとか無いんですが、ダメですかね?」
これで呪い装備が上手く作れれば良いんだけど……