地獄への第一歩
「ありがとう。それじゃあ一旦地獄を目指してくるよ。メリアさんとミリアさん、あとイアさんにもよろしく言っておいて」
「師匠は忙しないですねぇ?」
「善は急げってね!」
呪いのアイテムが僕を待っている!
「待って下さい師匠」
「ん?」
「これを持って行ってください。師匠の事です。素材になるアイテムを持たずに地獄に行って、現地調達しかねません」
僕の事をどう思っているのか若干問い詰めようかと思ったけど、何かくれるというなら問い詰めるのは止めておこう
『ブラックイヤーカフ を入手しました』
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ブラックイヤーカフ
レアリティ レア
INT +5
耐久値 100%
ピアスと違い、耳に穴を空けなくても付けられる安心仕様
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黒いイヤーカフは見た感じ耳の上部に付けたら良さそうなデザインだな。正直能力としては大した事は無い物だけど、こうした元になる物が無かったら呪いを付与する事が出来ない訳だ
「特殊能力が付いている装備は呪いを付けると特殊能力が消えてしまうので、何も付いていない装備を用意した方が良いです」
なるほど、確かに装備で何も特殊能力が付いてない物を用意するのは意外と準備とか必要だ。しかもなによりイヤーカフなら戦闘時に邪魔になる事もないだろうし、ピアスだと引き千切られて耳を負傷(この世界だとするか分からないけど)する可能性を考えたらイヤーカフなら外されても安全だ。僕の弟子はちゃんと考えているなぁ?
「ありがとう。大事に使わせてもらうよ!」
「えーっと、貴方の旅路に幸あらんことを?」
「最後を締めれない所まで師匠の真似をしなくても良いんだけどなぁ……」
悲しきかな。師匠の悪い所が弟子に伝わってしまった様だ
とりあえず一度安全の為に空島に戻ろう。街はほぼ必ず勇者軍がうろついてるだろうし、もう少しほとぼりが冷めるのを待たないと碌に冒険出来ない気がする。空島で入り口が見つかれば良いけどなぁ……
「よし、じゃあまずは入口を探す為にちょっと細工しようか」
仮面を変形させるのだが、狭間の通行手形を取り出して仮面の目に当たる部分に入れる事が出来る様にする。見た目は溶接用の面に似ているけど、通行手形は完全に透明なので若干違和感はある。でもこれで通行手形を手で構える必要無く、島を探索出来る
「これで良し、探してみるか」
セットも完了したし、とりあえず練り歩いてみるか
「なぁ、あれ……」
「なんだ、あれ……」
「指揮か……ん?」
「何かあっ……たか、えぇ?」
僕が近くを通ったら何か言おうとしていた人達は僕の頭についている溶接面みたいな仮面を見て言葉を失っている
「どうかしましたか?」
「い、いや、何でもない……いやマジあれなんだ!?」
僕が通り過ぎたら後ろで聞こえる声が何でもなく無い様子を僕に伝えてくる。まぁ剣と魔法なファンタジー世界(銃とかもあるけど)で溶接面を被ってる奴は浮いてるよな?
「この辺には無いか、とりあえずワイバーン君呼んで上から見てみるか?ピュー!」
指笛を吹いて、ワイバーン君を呼んでみる。居たら多分これで来てくれるはず……
「おっ!来た来た!」
「ギャウ!(お久しぶりやな!)」
ワイバーン君が飛んで来てくれた。これで空から島を見る事が出来る
「ちょっと背中に乗せてくれないかな?島を上から見たくてね?」
「ギャウ?ギャギャウ?(ええけど、随分妙な恰好しとるなぁ?まぁ行こか?)」
イベント時より更に口調が砕けている気がする。まぁ平和になったからかな?
「じゃあ頼むよ!」
「ギャウ!(行くで!)」
ワイバーン君の背に乗り、空を飛ぶ。パーライさんとホーライ君の背に乗った時もそうだけど、空を飛ぶってやっぱり凄いなぁ
「ギャウ?(何処に行きたいんや?)」
「ちょっと探しものをしてるから島全体をぐるっと飛んでくれるかな?」
「ギャウ!(了解!)」
そう言うとワイバーン君が島を見やすい様に若干傾いて飛んでくれた。【ラフライダー】の効果で落っこちる事は無いから逆さまでも僕は問題無いけど、こうした気遣いが出来るワイバーン君も中々器用だなぁ?
「ん?あれは……おぉ!あった!」
無いと思っていたけど草原の端に門が見えた。周りに少し霊も居るみたいだし間違いない
「ワイバーン君ありがとう。あっちの方に向かって。僕はあそこで降りるから」
「ギャウ?(あそこは何も無いぞ?)」
「良いの良いの。よし、送ってくれてありがとう!」
「ギャ!?(ちょ!?)」
ワイバーン君の背から飛び降り、門に向かって落下する。【ダブルジャンプ】で地面に激突する前に速度を落として着地する。それを空から見ていたワイバーン君もホッとしたような顔をしていた。人間メテオの時と同じ様な感覚だと思ったんだけどな?あの時は復活するって分かってたからそこまで心配してなかったって事かな?まぁ手だけ振っておくか
「さて、ほらほら迷ってるなら導いてあげるよー」
シスター服に着替えて門周りの霊達を導く。こうしないと門が開かないだろうし、冥界には行けない。仮面も首輪に戻して通行手形も外しておこう
「来た、うおぉぉ……」
死神の腕に掴まれて門に引き摺り込まれる。さて、地獄への第一歩だ