呪いのアイテムの作り方
「えっと、呪いのアイテムの作り方なんですが、まずは呪いの装備の元になる装備を用意しましょう。それと……恨みの念が必要になります」
「恨みの念……また用意するというか集めるのが大変そうな物が来たなぁ?」
恨みの念ってどうしたら集められるんだ?
「ここで恨みの念を集める為には誰かを酷く憎んでいる人達から恨みを肩代わりするか、あちら側に行けなかった魂の淀みを見つけて装備に定着させるのが呪いのアイテムを作る手段です。ただし、酷く憎んでいる人を見つけるのはとても難しいのと多分1人分では足りません。そしてその人の恨みを呪いのアイテムが出来るまで自分が代わりに恨み続けなければならないので、完成する前に恨みの量に耐えられなくなり狂ってしまうでしょう。魂の淀みの方はただの彷徨える魂ではなく、恨みの籠った魂なので攻撃してくる可能性が高いです。ですが、アイテムが完成するまでに反撃してしまうと恨みがアイテムに貯まらず、呪いを付ける事は出来ません。こちらはジッと恨みがアイテムに貯まるまで待つ必要がありますが、その間に自分も命を落とすか、狂ってしまうでしょう」
「ふむふむ、つまりどっちも時間が掛かるし、危険だって事だね?……でも最初にここでって言ったよね?」
何かを恨んでいる人を探すか、魂の淀みを探すか……どっちみち呪いのアイテムを作るには絶対に何かを探す必要がある訳だ。でも最初に言った「ここで」という言葉の裏には別の場所で呪いのアイテムを作る方法があるという事では?
「……はい、あまりこちらについてはオススメしたくないのですが……師匠は地獄に行く覚悟がありますか?」
「地獄?」
「地獄には濃密な負の感情の溜まり場があります。そこなら呪いのアイテムを作るのはここよりも簡単ですが……周りは悪魔だらけなので人間が踏み込んで無事でいられる確証はありません。そもそも生きたまま地獄に行く事自体がほぼ不可能に近い事ですから……」
「なるほど、人間だと時間が掛かって狂っちゃうから地獄に行けない。行けたとしても悪魔をどうしようも出来ないから呪いのアイテムを作るのは不可能。悪魔だったらその辺の問題はサクッとスルー出来るから呪いのアイテムを作る事が出来るって話なのか。大体の事は分かったよ」
聞けば聞く程呪いのアイテムの製作難易度が高い事が分かる。人間が呪いのアイテムを作るには普通は狂気との勝負になる訳だ。まず呪いの装備を作ろうって考える人がそもそも少ないし、そんな物を作ろうとする人は基本的に正気じゃ無いだろう。すぐに狂気に呑まれてしまって目的の物は作れずに終わってしまうんだろうな……
「師匠……やっぱり辞めませんか?今ならまだ間に合いますから」
「じゃあ僕は地獄に行ってみるかなぁ?」
「師匠!?」
「冥界は行ったけどそういえば地獄にはまだ行ってなかったなぁ……まぁ悪魔とやり合うのは可能な限り避けるつもりだけど……もし、戦闘になっちゃったらその時はその時だよ」
作ろうとした人間が誰も成功して居ない。ならその答えは誰にも行ったことが無い地獄に活路があるんじゃないか?どっちにしろ負の感情を集めてアイテムが一度破損?しなければならないみたいだし、詳細だけ聞いて地獄に突入してみるか。幸い、地獄への行き方は何となく見当は付いている。帰りはちょっと見当が付かないけど……
「地獄には亡者という存在が沢山居ます。彼らはゾンビにも似た存在ですが、生前の罪を償う為に地獄で悪魔の下で働いています。そしてその数も尋常ではありません。流石に師匠でもそれは無謀過ぎます!」
あぁ、アイツらか
「うーん、一応死神さんと知り合いだし、亡者は何とかなるかな。とりあえずやり方の詳細を紙に書いてくれる?」
「普通の人間は死神と知り合いにはならないんですが……」
「普通の悪魔は人間を師匠なんて呼ばないんじゃない?」
「うぐっ……」
「それにシスターもやらないんじゃない?」
「ぐはぁっ」
自分が特別な存在なのを忘れてるな?
「モニクが頑張ってるから僕も頑張るんだよ。絶対モニクなら叛逆の悪魔になれるって信じてるから僕は不可能って思われてる呪いのアイテム作成をして出来ない事は無いって証明したいんだ。そしたらモニクだって自信がつくでしょ?」
「まぁ、不可能を可能にするという面では、自信になりますけど……それが呪いのアイテムって考えるとちょっと……」
確かにこういう場面だったら奇跡のなんちゃらみたいな方が後押しになりそうだけど、モニクに貰った呪いのアイテムが僕にとっては奇跡のアイテム達だから間違ってはいないだろう。僕視点だと
「まぁ、師匠の無事を祈ってよ?己の為だけど同時にモニクの為でもあるから」
「それは言われなくても毎日……」
「え?」
「い、いえっ!えーっと、これがやり方の纏めてある紙です!他の人に広まらない様に気を付けてください」
呪いのアイテムの作り方なんて広まったら悪い事を考える人達が居るかもしれない。まぁ人間だけじゃ無理だろうけど、何らかの介入があれば話は別だ。そういった手合いにこの紙は見せないように気を付けろって事なんだろう。モニクも迷惑になる事を広めない様にキチンと考えて行動している。師匠として鼻が高いなぁ?僕は特に何もしてないけど