トーマ君スタイル
「ハチサン、ドコニイタンデスカ!?」
ゲヘちゃんが慌てていた。という事は結構な時間居なかったのか
「ゲヘちゃん?僕、どのくらい居なかった?」
「2ジカンクライ、イマセンデシタ」
「2時間……大体迷路を彷徨っていた時間と同じくらいか。心配させてゴメンね?」
どうやら僕は原っぱから完全に消え、あの謎の迷路に飛ばされたらしい。時間が超加速されたとか、精神だけ飛ばされたとかではないみたいだな?って事はあの迷路はしっかりと僕の体ごと転送されたって事だ。だとするとあの迷路は死ぬ可能性があるな?
「ブジデナニヨリデス。キュウニキエテシマッテ、トテモアセリマシタ」
「何とか帰って来れたけど……もしかしてアレがキーだったのかな?」
ゲヘちゃんにリブラの星座を見せてもらって、【リブラ】を使用してみたら知らない迷路に飛ばされた。そしてそこには大きな天秤が……ここまで来たらもうあそこは『リブラの迷宮』とでも言うべき場所なんだろう。そういえば【リブラ】が強化されたって言ってたな?
『リブラ 消費MP100 5分間、ステータスを2つ選ぶ。対象ステータスの片方を50%上げ、もう片方を50%下げる。この時相手にも選択した下降ステータスの20%分を低下させる』
なるほど、説明文に若干追加された内容を見るに僕が割と使う【リブラ ItoX】とかの場合だとDEX50%アップ、INT50%ダウンで終わっていたのを、追加で相手のINTも20%下げる効果を持ったのか。自己完結型から相手に影響を与える様に変化……強化されたのは本当みたいだな
「とにかく心配させて悪かったよ。でも、ゲヘちゃんのお陰で新しい力が入手出来るかもしれないんだ。星取りに一歩近付いたかもよ?」
ゲヘちゃんが僕に星座を認識させてくれたから【リブラ】を強化出来た。しかも星座魔法は12種類あって、どれかを覚えたのなら他のも覚えられる可能性があるみたいな事を言ってたし、ゾディアックスペルをコンプリートするとかも面白そうだ
「ホシトリ……フフフ、ジョウダンデイッタツモリダッタンデスガネ?」
「さて、宇宙征服への第一歩だぞー?」
冗談には冗談で答える。星座を知る事も必要だけど、まずは素となる他のゾディアックスペルを覚える事からだな?経験を積んで覚えたのなら他の物もその内覚えるだろうって言ってたし、今の職業のレベルを上げていたらその内素になる魔法を覚えられるのかな?だとしたらあの時クラスチェンジみたいな事しなくて正解だったな
「あっ!こんな所に居たんですか」
「あれ?トーマ君?」
「ハチさんの邪魔をするつもりは無いんですが、今じゃないとハチさんとお話出来ないかなって……イベント中のお話、覚えてますか?」
「あー、近接戦を教えるって言った奴かな?」
そういえばそういう約束はした。トーマ君にはヨウちゃんとエン君という強力な前衛が居るし、アイテムを使った強力な後方からの支援や攻撃が出来るけど、トーマ君本体の防御力とか、自衛力はそれ程高くない。だから自衛の為に近接戦が出来る様になりたい。っていう話だった
「よし、それじゃあトーマ君は素手が良いの?それとも武器アリ?」
「流石に素手で戦う勇気はないです……何の武器が良いんでしょうか?」
そこまで僕が決めるのは何か間違ってると思うけど……やっぱり勇気がないとかなら敵との物理的な距離が出来る槍とかが心理的に余裕が出来てトーマ君でも扱えるかな?
「じゃあ槍とかどうかな?リーチが長い武器なら相手に反撃されにくいし、何より突きの攻撃って結構避けにくいんだよね」
剣の斬撃による線の攻撃と槍の刺突による点の攻撃。対人戦闘も意識するなら相手が盾を持っている可能性が高い等を考えると、防がれる可能性が高いのは攻撃の延長線上に盾を構えると防がれる剣だと思う。トーマ君なら距離を取れればアイテム投げの時みたいに冷静に対処出来そうだし、合っているんじゃないかなぁと……
「槍……確かに距離が取れるから少しは抵抗出来るかもしれません」
「えーっと、ちょっと待ってね。【魔糸生成】」
固くして糸と言うよりは棒のようになった魔糸をトーマ君に渡す
「とりあえずこれで練習してみようか」
「これは……」
「これなら万が一当たっても安全だからね」
槍が刺さるよりは当たってもちょっと痛い程度で済む魔糸の棒でやるのが良いと思う
「突きとかやってみて?」
「はい!ふっ、ふっ、ふっ」
思っていたよりも綺麗なフォームの突き。これなら意外とすぐ使えるんじゃないか?
「ほい」
「ふっ!あれ?」
試しに枝を投げてみたらその枝を狙って突きを出したけど少しずれて枝はそのまま地面に落ちた。そこまで正確な突きは流石にすぐには出せないよな
「一応剣もやってみようか」
魔糸をさっきよりも短くして剣に見立ててみた。トーマ君はそれを受け取ると両手で構えて剣道の様に振り下ろす。フォームが凄い綺麗だな?
「ほい」
「ふっ!」
距離が近付いたからか、今度は枝をど真ん中で真っ二つにした。ふむ……やっぱり得物が短い分コントロールが良くなっているのかな?
「トーマ君?」
「ひょっとして何かダメだったでしょうか……」
「いやいや、両方とも上手かったから両方とも使ったらどうかなって……」
「両方とも……?」
「前々から思ってたんだけど、金属を粘土みたいに形を変えられるのなら、武器が1本あれば剣と槍に変形させながら戦う事も出来るんじゃない?怖いとか少し遠い相手には槍、正確に攻撃したい至近距離なら剣で、錬金速度が高速化してるトーマ君なら出来ると思う。これならトーマ君だけの戦闘スタイルになるんじゃないかな?」
武装をその場で作るというか変形させて戦う。ハスバさんのあの武器と近い所も有るけど、トーマ君の槍捌きと剣捌きの両方とも悪くないと思ったから片方しか使わないのはもったいない気がした。それにトーマ君の高速錬金で武器の形を変えてしまえば武器2本を持つとかしなくて済む。オンリーワンな戦闘スタイルになるんじゃないかな?