夜空の星
「星が綺麗だなぁ……」
こっちの世界で星座が有るのか分からないけど、明るい星とその周囲の星を線で繋げば星座の10や20は軽くありそうな気がして来る。でも正直、こいぬ座みたいに星を2つ繋いで子犬に見えるみたいな事を言われても困るけど……こっちの世界にも星座はあるのか調べてみるのも良いかも?あの時図書館で調べれば星座の本が1冊か2冊はあったかもしれないな……
「なんか手が届きそうだ」
地上よりも空に近い空島の原っぱに寝転がりながら空に手を伸ばして空を掴む。勿論何も掴めないけどこういうのは雰囲気だ
「ハチサン、ツギハ、ホシヲトルツモリデスカ?」
「星を取るって……そんな事が出来たら島なんて霞んじゃうレベルだよ?まぁ、こうして空を見たら星空の星の1つくらい手が届かないかなとは思うけど、ただ思ってるだけだからね?まぁ確かにこの星空の星の1つくらい僕の物になったらそりゃあ凄いけど、この星空は別に誰の物でもないから僕の物にするつもりも無いよ。ゲヘちゃんは僕が世界征服……宇宙征服でもすると思ってるの?」
星1つ自分の物にする。そんな事が出来てしまったらそれこそ理想の世界を1から作るなんて事も可能かもしれない。でも、全てが自分の思い通りの世界を作るよりも思い通りに行かないからこそどうやって切り抜けるかを考える今のこの世界の方が僕は好きだ
「ハチサンナラバ、デキルノデハ……ト」
「流石に僕よりもずっと強い存在が沢山居るから無理だよ。もしもこの世界で最強になれたら……その時は考えても良いかもね?」
確実に勝てないだろうニャラ様とか、村のアトラさん、ヘックスさん、ヴァイア様……僕が全力で戦ったとしても勝てないだろう相手はまだまだたくさん居る。まだ出会ってないだけでもっと強力な存在だって居るかもしれない。だが、そんな存在達に勝てたのなら……宇宙に乗り出すなんて事も出来るかもなぁ……
「まぁそんな遠い未来の事は置いておいて、ゲヘちゃんも見てみなよ?星空綺麗だよ?」
「タシカニ、コレダケノホシヲミタノハ、ハジメテカモシレマセン。イママデアノヘヤニイタノデ」
「戦争の時も戦ってて空を見る余裕とかもなかったねー。今はゆっくり出来るし、体のサイズも小さくなってるから寝転ぶ事だって出来るでしょ?」
「ハッ!ソウデス!」
今更になって気が付いたのか、ノシノシと歩いて原っぱに寝転がるゲヘちゃん
「オォ、トテモイイキブンデス……」
「でしょ?お昼寝も良いけど、夜の星空を見ながら寝転ぶのだって負けちゃいないよ?」
こうやって横になって星空を眺めるのは現実だったら風邪をひく可能性がかなり高いけど、ゲーム内なら話は別。これを活かさないのはまさにもったいない
「ジユウホンポウデスネ?」
「まぁ、別に清く正しく生きようとかして無いしね?」
ルールに縛られないようにするにはどうしたら良いか?と言われたら周りに人が居ないところまで逃げれば良い。そうすれば自分が縛られないように出来る
「追い詰められる前に逃げ出す……それでも良いじゃん?息抜きしないと息苦しくて辛いだけだし……思ってたよりも勇者軍の人達に情報寄越せって言われたのがストレスになってたかも」
こうしなきゃいけない、ああしなきゃいけない……勇者軍の人達が来て情報を寄越せと言われてからちょっと考える事もあったけど、やっぱり僕は誰かにどうすれば良いか聞くよりもまずは自分でやってみるのが一番だと思う。ボスの攻略法だって1つだけとは限らないだろうし、倒し方によっては出てくるモノだって違うかもしれない。可能性を狭めるのは自分だし、広げるのも自分だ
「人の後を追いかけるより自分で開拓する方が絶対楽しいのになぁ……」
「ヒトトハ、ミチヲ、オソレルモノカト……」
「未知を恐れるねぇ……僕はその未知が好きなんだけどなぁ」
寝転がりながらゲヘちゃんと会話する。愚痴を聞いてくれるゲヘちゃんは優しいなぁ?
「失敗をしたくないから成功した人に聞くんだろうけど、その人の成果だけ聞いてもあんまり自分の力にはならないと思うんだよ」
「ハチサンハ、イロイロチョウセンシテマスネ?エライデス」
「ありがとうゲヘちゃん」
愚痴もこのくらいで止めよう。ゲヘちゃんにもまったりして欲しくて呼んだんだからこれ以上は可哀想だ
「そういえばゲヘちゃんは星空を見るのが初めて何だっけ?」
「ソウデス。チシキハ、スコシダケアリマスガ」
「それなら星座とか分かる?」
「セイザ……コノホシゾラノナカナラ、ヒトツダケワカリマス」
ゲヘちゃんは星座が1つだけ分かると言った。やっぱりこっちの世界にも星座はあるんだ
「アノホシカラ、コウツナイデ、リブラノセイザデス」
「え?リブラ?」
ゲヘちゃんはてんびん座では無く、リブラの星座と言った。こっちの星座の呼び方が少し違うのかもしれないけど、リブラの星座……僕の持っている【リブラ】とは無関係なのだろうか?
「ゲヘちゃんゴメン。もう一回星座の形を教えて?」
「デハ、シツレイシマス」
「えっ?」
ゲヘちゃんの両手で僕の頭を固定する。すると、小さな炎が空中に浮かび、星と星の間を炎が繋いで星座を認識する事が出来た
「現実よりも天秤に見える……」
そこで気が付いたのは現実の星座とは形が全く違う事。より多くの星を使い、星座を形成している
「もしかして……」
何か起きたら良いなと何気なくその僕が認識出来たリブラの星座に向かって【リブラ】を使用した