まったり焚き火
「ねじ山を切って……よし!これで糸を張る為のピン完成!」
冷えた鉄の棒をグラインダーで切り、やすりでバリを取り、ねじ切りタップとダイスというねじ山を作る為の道具もあったのでダイスを使って切ったピンにネジ山を作る。これで後は板にネジの穴を付けて、取り付けてしまえば糸を張る為のピンは完成だ
「今までは糸でやってきたけどちゃんとした工具を使うのはやっぱり良いな?流石に糸で鉄を斬るとなると糸ノコギリ風に使うならかなり時間も掛かるだろうし、何より工具を使って物を作るって言うのが素晴らしい!」
たまには良い道具を使って良い仕事をしたいと思う時だってある。無くても出来るけどあるならそれを使うに越したことは無い
「よし!ゲヘちゃんとコーグン達、ありがとう!」
「イエイエ」
「役にたったー!」
「夜になったらまた呼んでも良いかな?」
「イイトモ!」
「いいよー!」
このまま鉱山の近くから、森まで行くのにゲヘちゃんを置いてコーグン達とさっさと行く訳にもいかないので、パンドーラを閉じて一度別れる。夜に焚き火近くで呼び出すのが一番負担が少ないだろう
「という訳で木材ゲットしたし、焚き火の準備とカンテレ作成しますか!」
パパパッと木材を入手して後はピンと糸を張るだけ。貰ったカンテレの形状を思い出して、製作していく
「ここに棒を設置して、糸を張って……このくらいの音だった気がするなぁ」
長めに取った糸を手で持ちながらおおよその長さで切り、ピンを付けて糸を張る。一応ネジを切っているから多少は調整が可能なハズだ
「おっ、危ない危ない。板の長さ結構ギリギリだったなぁ?」
低音域の弦が長い分、板からはみ出そうになりちょっと危なかった。でも何とか形にはなったはずだ
『お手製カンテレ を入手』
---------------
お手製カンテレ
レアリティ PM
耐久値 140%
キチンと調整すると良い音色になる
---------------
「よしよし、ちゃんとカンテレって認めてもらえたぞ?」
ゲーム的にもこれはカンテレと認めてもらえた。ティッシュ箱で作ったウクレレとかとは訳が違うのだ!はっはっは!
「いやぁ……時間掛かったなぁ?もう夕方かぁ……それじゃあちょっとだけ」
音を完璧に調整は出来ないけどだいたいこのくらいと調整する為にも一度弾いてみる
「んー?これがちょっと低いか?もう少し張ってみるか」
絶対音感など備わって無いので多分このくらいと適当な調整しか出来ないが、ピンを回し、糸の張りを強くする。ある程度の調整をしてポロロロロンと音が急に高くなったり低くなったりしない丁度良い所に調整出来た
「よし、調整完了!それじゃあ原っぱでやるかぁ」
もうそろそろ完全に日が落ちるし、焚き火をしよう。一応地面は一度掘って原っぱに燃え移らない様にした方が良いか
「んー、やっぱり石火の手袋じゃなくて久しぶりに火熾し器で火を付けるか」
すぐに火を熾せる石火の手袋は優秀だけど、今までお世話になった火熾し器もたまには使ってやらないとな
「さて、おりゃぁぁぁ!」
弓きり式の火熾し器の弓をシャカシャカして火を熾す。中々火種が出来ないけど、これがこの火熾し器の醍醐味だ
「よしよし、良いぞ。おっと繊維繊維……よーし!火が付いた!」
火種が出来たので、乾燥した草などの繊維を集めて火種を大きくして木に火を移す。木を追加して火が安定したら焚き火の完成だ
「この世界に初めて来たときもこんな感じだったかなぁ?」
狼を何とか倒したり、今みたいに魚を獲って焚き火で焼いたり……他の人から見たら過酷なのかもしれないけど、僕からしてみれば楽しい事だらけだ。おっと、ゲヘちゃんも呼ばないと
「カモンゲヘちゃん!」
呼び出した時に焚き火の上に出てこない様に焚き火に背を向けてゲヘちゃんを呼び出す。これならゲヘちゃんが焚き火を潰してしまう事も無いだろう。他の白武と黒武。ウカタマみたいに最低限のMPで呼び出したとしてもゲヘちゃんは小さくないので今後は呼び出す時にそういう事も気を付けた方が良いかな?
「オヨビデショウカ?」
「うん、一緒に焚き火でも眺めよう?」
「マッタリスルノデスカ?」
「うん」
「マッタリシマス!」
そんな張り切らなくても良いんだけどな?
パチパチと弾ける焚き火を見ながらカンテレを取り出す。調律はある程度やったし、多分1曲くらいなら引けるだろう
「やっぱり難しいな……途中で詰まっちゃう。下手でごめんね?」
調律したからと言っても弾けるかどうかは別問題。知ってる曲を弾いてみたけど、途中で詰まってしまったからゲヘちゃんには聴くに堪えない曲になっていたかもしれない
「ミテイルダケデモタノシイデス!」
そんな事も無かったみたいだ。ガンガンとゲヘちゃんが手を叩いている。拍手の音とは思えないな……?
「ありがとう。おっと、魚が焦げちゃう」
焚き火にセットしておいた棒を刺した魚が焦げてしまう前に食べなきゃ
「あちちち、フーフー……うん、うまい!」
あの時は本当に何も付けなかったけど、今は塩とか調味料がある。あの時とは違って隣には友達もいる。状況がほんのちょっと変わっているだけなのに何倍にも美味しく感じるなぁ
「うわぁ……綺麗な星空」
不意に空を見たら満天の星空。空島からだからなのか空の星を近くに感じる。ほんの少し焚き火から離れて原っぱに寝ころんで夜空を見る
「なんだかこのまま寝ちゃいそうだな?」
セーフティエリアである空島なら原っぱで寝転んでいようが魔物にキルされる事は無い。今までにない安心感でそのまま寝ちゃいそうだ……