ハチ君PV
「ここがメモリーシアター……思ってたのと違うな?」
シアターっていうから映画館みたいな物を予想していたら、巨大な水晶玉がドンと置かれていただけだった。触れてみると水晶の中にいくつかの映像が浮かび上がり、選択出来るようになっている。初めてのイベントの時のPVもあったし、これを選択する事で見られるみたいだ
「これだな?あ、他の人も見られるんだ」
どうやら映像は他の人も見られるみたいだ。何か木の椅子というかベンチが結構な数置いてあったので座らせてもらう。誰かが映像を見る為に用意してくれたんだろう
「それじゃあ再生っと」
水晶からPVを選択してからベンチに向かう。水晶から映像が上空に映し出される状態になったので他に周りに居た人達もぞろぞろとベンチに座って一緒にPVを見るみたいだ。さて、どんな感じになってるかなぁ?
「警告 心臓の弱い方、勇者軍に所属していた方は注意してご覧ください」
「ぶふっ!?」
開幕いきなりの注意書きで吹き出してしまった。いきなり物騒だなぁ?
「あっ、そういえばアンタ。ひょっとして前のイベントの時2位だったアイツか?丁度良い!力量もあるだろうからやってくれよ!」
「あぁ、あの時の!」
PV始まってすぐに僕の事はバレた。まぁいずれはバレる事だったし、大々的にやってもらった方が良いかな?
「指揮官!」
「「「指、揮、官!指、揮、官!」」」
僕が指揮官になった時の会話だ。何だか懐かしいなぁ
「あっ!あれは!」
「「「「「ん?」」」」」
他の所を指差して地下に逃走してるシーンだ。本当にこんなので良く纏め上げられたと思う
「逃げたぞ!」
「地下に戻って行ったぞ!追え追え!絶対に指揮官にするぞ!」
本当によくこれで勝てたよなぁ……
「我の力では30人。それ以上は無理だ。それでは不満か?」
バルミュラ様にメッセージ機能を回復してもらう所だな?
「いえ、ありがとうございます。話し合い、決めたいと思い……あれ?」
「まお……バルミュラ様。失礼ですが、守護をしやすくする為にも指揮官を決めた方がよろしいかと思われます。指揮官を決めれば後はこちらで振り分けが出来ますので、先程のメッセージ機能を回復させる30人等も決める事が出来ます」
後ろでニヤニヤしている人達がアップにされる。こうしてみると本当に流されて指揮官になったんだなぁ
「そうか、ならばそこの白いローブを着た者よ。名を名乗るが良い」
「……ハチと申します」
まぁ名前も公表されてしまったけどいつまでも名前を隠し続ける事は出来ない。バルミュラ様との会話とか大体名前を呼ばれてた気がするし
「ではハチ、お主を指揮官としよう。7日と短い間ではあるが、我が命を預けるぞ?」
「……はい、お任せを」
魔王軍PVラストのシーンがどういう流れだったのかがここで分かるのか
「あぁ~、どうして僕なんだよぉ!一応勝つ為に頑張るけどさぁ……」
「グア?」
え?このシーンも流すんですか!?
「あぁ、聞いてくれる?皆して僕に指揮官やれって……」
眷属達に愚痴を溢すシーンは要らないでしょ!?
「はぁ……皆愚痴聞いてもらって悪いね?とりあえず僕もここでいつまでもサボってる訳にもいかないから、もう行くよ。ありがとうね?」
「グアグア」
「さて、それじゃあ行きま……」
「「「「「ムフフフフ」」」」」
このシーンは本当に恥ずかしかった……
「すまないな。だが、結果として結束力は上がったはずだ。献身に感謝する」
「……この身の恥で結束が高まるのなら安い物です。そろそろ行かなければ他の人に示しが付かないので」
「待て、指輪無しで眷属と話せるのであればこやつを連れて行くと良い。1体しか居ないが、充分役に立つはずだ」
「それは影のスピリット。クセはあるが、光の無い所ならどこにでも行ける。影の中に入る事も出来るぞ?」
影のスピリットさんが仲間になった所か
「夜ならば空を飛ぶワイバーンよりも早く動けるだろう」
「ワイバーンがどのくらいの速さで飛ぶかは分かりませんが、素晴らしい眷属を与えてくださり感謝します。それでは改めて行って参ります」
仲間になった後、森で能力を試しているシーンが入り、僕がどうやって姿を見られずに移動していたかのカラクリがこれで分かる訳だ
そこから砦の20秒で支援に入る戦闘シーン、の後に街を燃やしに行くシーンだ
「それじゃあ今日はここをキャンプ地とする!ってね」
影移動とか使って街の中の高い建物の上に移動した場面か、そこから一瞬画面にノイズが入ると街は炎に包まれていた。消火活動する人達の後ろから近寄って【ハシャフ】で魔法を使えなくして火災が広がっていく様は外道と言われてもおかしくない
「お仕事完了」
そしてこの決め言葉である
そこから僕の悪行……もとい功績がドンドンPVとして紹介されていく。洞窟に入って属性結晶を入手したり、ゲヘちゃんを仲間にした後村を破壊したり……
「まぁ、あの白ローブと直接やりあうなんて俺はゴメンだね」
「ひゅ……」
「まぁ、これ以上進んでも危険だし一旦撤退するか……あ?」
「危機感を持つのは素晴らしい事ですが、判断が遅かったですねぇ?【ハシャフ】」
「……」
「お仕事なのは分かりますが、それはこちらも同じです。悪く思わないで下さいね?」
「……」
「大丈夫、死ぬときは、一瞬です」
「……」
「こんな風に」
【ハシャフ】を使って喋れない状態にして、霧を出しながら相手の偵察の周りを走って回りながら最終的に首をへし折る戦闘スタイル……うわぁ、走り回ってる所もしっかり映ってる。見えてるとこれはダサいぞぉ?
「まずは30セット!」
これはスタミナサンドを作った場面だな?うん、キルした場面から急に料理シーンに移るという振り回しっぷり。まさに滅茶苦茶だ……そして
「果たしてそんな喧嘩をして勝てる相手なのかな?」
「なんだ?」
「誰だ?」
白ローブの姿からポン君の力を使って姿が黒の乙女に変わった僕が現れる。大暴れして腕やら足やらを喰らっているけど、地面に落ちた剣とか盾でそういう部分は見えない様に配慮されていた
「それじゃあ破壊の限りを尽くしてくるよ」
「冗談に聞こえないねぇ?」
クロクマの僕と変態フルアーマーハスバさんのコンビが城から出ていくシーン、但しクロクマの横に半透明の白ローブが映っている。うーん……ここまでされたらもう分からない人は居ないだろう
「全く、この体たらくはなんだ?」
影の中から現れる軍人。畳み掛けていくなぁ?
「倒す……」
操られている風のシスターが最後に出てきた。最後の僕が出てきて画面が暗くなっていく
『パート2に続く』
「パート2!?」
まさかの僕のPVにはパート2があるのか……