禁書保管庫
「夜か。んーどうしようかな?」
ログインしたら夜だったので、どうしようか悩む。学園も夜だと閉まってるし、森に行くのもなぁ……
「夜の図書館にでも行くか」
開いてるか分からないけど、行くだけ行ってみよう。ルクレシアさんが居ない時に何か起きるかもしれないし、何より禁書保管庫の正確な場所も分からないから確認してみないと……こんな事はルクレシアさんが居ない時じゃないと出来ない
「窓の外から見れば多分問題無いでしょ」
建物の中に入ってしまったら不法侵入になってしまうかもしれないけど、窓の外から見る分にはまだ見つかっても何とか言い逃れ出来るだろう。図書館に忘れ物をしたけど、入るのもアレだから窓から見て忘れ物があるかどうかの確認をしていた……とか何とか
「ぱっと見は誰も居ないかな?」
図書館前までやってきたけど、見える範囲だと誰も見当たらない。これなら中を確認しても咎められる事は無いだろう
「さて……ん?誰か居るな?」
図書館内部に微弱な反応を【察気術】で感じ取った。数は……3人かな?
「ルクレシアさんじゃ無い……あの男何処かで見た事あるな?」
えーっと……そうだ。ルクレシアさんに本を貸し出せとか何とか言ってた人だ。こんな夜中にやってくるなんておかしいねぇ?
「一旦離れて【アビスフォーム】になって【淵伝】を使えば窓をコッソリ開けられるかな?」
触手の出現場所を窓の内側に出して、鍵を開ければ中に入れるだろう。その為にも一度この場から離れよう
「この辺なら大丈夫かな?【アビスフォーム】あっ」
そうだった。【抑圧】の効果忘れてた……フォーム未使用時はNPCとかに警戒されなくなったけど、フォームを使っている間はヘイトを集めてしまう。これだと多分図書館に近付いただけで警戒されちゃうだろうな……【淵伝】の効果範囲ギリギリで何とか鍵を開けて【解除】しないとバレる。そういえばそうだった。【アビスフォーム】で潜入するとは思ってなかったからこれは想定外だ
「流石にちょっと難しいな……」
気付かれないように森の中から図書館の窓の1つの鍵を外そうとする。だが、この窓は何故か鍵の代わりにドアチェーンが迷路のようになった物みたいだ。外すのに触手の絶妙な操作を要求される。元の自分の体には無い部位の精密操作。リハビリの時は指一本から動かすのはもちろん、バランス感覚の訓練で目隠しをした状態で鉄骨渡りとかもやってたし、触手も最近は割と使ってたから全く出来ない訳じゃ無いけど……見ないで操作して開けるのは非常に大変だ。でも何とか開けられそう
「ここを……右か?よし出たな。【解除】」
【アビスフォーム】を解除して、図書館に近寄る。窓はちゃんと……開いていた
「ま、これで何が起きても即座に中に入れる訳だ」
あくまでも、これは緊急時に備えての事だ。内部の3人が何をするか、何をしているのかは分からない。だから、何か悪い事をしていたら即突入出来る様にしておいた
「とりあえず観察だ」
中の奴らが何をしているのか、まずはそれを観察だ
「あのガリ勉野郎が気付く前に急ぐぞ!」
「女って怖いねぇ?」
「本当に男ってチョロいわ。それに今日はあの本の虫が鍵を掛け忘れるなんて滅多に無いチャンスなんだから、早く禁書保管庫を開けなさいよ」
男2、女1か。女が禁書保管庫の鍵を誰かから盗んで男が実行犯かな?まぁここに居る全員実行犯だけどさ?話を聞いている限りだと今日はルクレシアさんが図書館の鍵を掛け忘れたみたいだ。何かあったのかな?
「とりあえず見てるか」
禁書保管庫は僕も入りたかったし、都合が良い。便乗させてもらおう
「あれか?」
「あれだ!これで俺も魔戦会優勝だ!」
「ちゃんと私達の願いも叶えなさいよ?」
「分かってるよ。金だろ?」
「分かってれば良いわ。早く中に入りましょう」
金の関係か。「他の奴に倍額で雇われたんだよ!」とかでめっちゃ裏切り起きそうだけどなぁ
「よし!」
3人が図書館の一番奥にある巨大で色々な模様が書かれている壁に鍵穴を探し、鍵を開けると壁がひとりでに開いた。開いた壁も天井近くまで開いてくれたので僕も天井を伝いながら中に侵入出来る
禁書保管庫。その中に入ってみると、そこはまっ白い空間。なんだかプラクティスゾーンに似てるな?その真っ白い空間の中に本が何十冊か浮いている。キラッキラの宝石とかついた本もあれば、普通の本もあるし、ボロボロの本もある。個人的にはボロボロの本とかかなりヤバそうな雰囲気だ
「これが……禁書!圧倒的なパワーを感じる!」
完全に悪役のセリフだ。君それ絶対に暴走する奴だよ?
「流石にもっと近寄らないと本の名前は分からないか」
天井から見る程度では流石にどんな本か名前は分からない。一度本に近寄らないと……
「【擬態】」
真っ白空間だしこれで問題無いだろう。とりあえずこれでもう少し接近しやすくなった。アイツらと欲しい本が被るか被らないかでその後の対応がかなり変わるよなぁこれ
「あった!ナコト写本だ!」
よし、強奪しよう。君達は今から相乗り相手から敵対者だ
「これさえあれば……」
「さっさと撤収するわよ!誰か来たわ!」
「早い所逃げないと捕まりますよ!」
どうやら誰かが図書館に来たみたいだ。窓の外にランタンの灯りが見える
「まずはアイツで魔法の試し打ちをしてやろう」
「何言ってんの!さっさと逃げるわよ!」
禁書を手に入れて気が大きくなっているのか、やってきた誰かを魔法で片付けるつもりか。コイツヤバいな?