アストレイ・オブ・アミュレット
「ア、アトラさん?なにこれ?恐ろしいくらいの性能なんだけど……」
アストレイ・オブ・アミュレットを見ながらアトラさんに訊ねる。黒い正二十面体の結晶に首から下げる事が出来る様に丈夫そうな紐が付いている
「これはハチから貰った物を纏めて首飾りにしようとしてたらよ?他の奴らもハチの物なら私も私もってよ?全部纏めてみたらこんな風になった。人望あるなぁハチ?」
付いている能力的にそんな気はしてたけど……だとしても1つのアクセサリーでこれだけ能力とステータス上昇効果があるっていうのも凄い。だってこれ今の僕のステータスより高いよ?
「大体強い装備を入手した奴は浮かれて自分の実力よりも高い戦場に行き死ぬ事がある」
とても真剣な口調のアトラさん。確かにこんな装備を入手すれば浮かれてしまうのもおかしくない
「気を付けないとなぁ……」
「おいおい、随分呑気だな?」
さっきまで真剣だった口調が砕ける
「だって自分から危険な所に入って行くってより、危険って向こうからやってくる物じゃ無い?」
「……それもそうだな!気を付けて行けよ!……で、コレ仕舞うかどうにかしろよ」
フロッカウの死体の事すっかり忘れてました
「まぁこれはこれで使えるから私にくれないか?」
「良いですよ?じゃあそれはドナークさんにあげます」
「よっしゃ!」
ドナークさんがフロッカウの死体を持ち上げ、何処かに持っていく……うわぁ凄いパワー
「じゃあ僕はアルファン山を登れる所まで登ってみます」
「頑張るのだぞー!」
ヴァイア様の応援を背に受け、アルファン山に向かう
「やっぱり自動回復って素晴らしいな!」
紫電ボードに乗りながらアルファン山に向かうが、アストレイ・オブ・アミュレットのMP自動回復効果で紫電ボードに使ったMPも回復するから速度もかなりのスピードで移動出来る。倒木を使ってジャンプし、木の上を通るという中々無茶な事も出来る
「またあの崖ルートで登ってみようかな?」
多分山の下の方じゃ温かそうな敵は出てこないと思う。出来るだけ上の方に行きたいから早く上がれる崖ルートで……リインフォースも使えばもっと速く登れるかな?
そんな事を考えながらも洞窟を越え、崖の前までやってきた
「【リインフォース】よし!登山だ!」
【登攀】のスキルで崖に張り付き、【リインフォース】で強化された脚力で崖を飛び上がりながら登る。非常識な登山だけど、前の時に比べたら登るスピードが何倍も速い。これ傍から見たら凄い光景だろうなぁ……
この前パーライさんと出会った所まであっという間にたどり着いた。今回は更に先に、上に進む
「あ、この前の……」
「フゴフゴ……」
豚っぽい猪っぽい奴が目の前を横切っていく。こっちをチラッと見たけど興味無さそうに歩いて行った。これは【欺瞞】の効果なのかそれとも普通に攻撃的な性格じゃ無かったかのどっちかかな?
「温厚な性格だったらこの前の奴は悪い事したかな?いや、あいつのお陰でパーライさん達に会えたから感謝しないとね」
通り過ぎる豚猪くんに両手を合わせて感謝の意。まぁ別の個体だけどやるだけやっとく
「さて、どこまで登れるかなぁ?」
山を登るのにコンパスも無しに……とか、この前村に戻れなかったのに、とか心配な事があるかもしれないけど実際僕は崖を登って来たから真っ直ぐにしか進んでいない。迷う方がおかしい
「うぅ……結構寒いなぁ?」
崖を登っていると氷柱が出てきたり、雪が降ってきたりと寒さを感じる様になった。状態異常に強くなったと言っても環境に適応する訳じゃ無いから結構寒い
「やっと地面……」
崖を登ってやっと自分の先に地面が出てきた。そこは見える限りの銀世界
「わお、真っ白だ」
雪で辺り一面真っ白な地面を見て今現実だと夏だよなぁと思いながらも肌寒さが少し堪える
「火を起こすのも大変そうだし……出来るだけ早く帰りたいね」
動き続けないと中々寒いここじゃ体の動きがすぐに悪くなりそうだ
雪が降っているから余り遠くまで歩いちゃうと足跡が消えてしまうだろうから探索範囲もそこまで広く取らない様にしないと絶対これは迷う
「暖かそうって言ったらやっぱ毛皮かなぁ?」
毛皮のコートとか暖かそうだけど、まぁ中々見つからないよね
獲物が居ないか歩いて探していると遂に出会った
「シロクマかな?……中々大きいなぁ?」
四つん這いでも2mくらいあるシロクマ。このシロクマを倒してドナークさんに献上しよう
「それじゃあシロクマくん。悪いけど先制の一撃は僕が貰うね?」
シロクマはまだこっちに興味が無いようだ
「リブラ ItoDEX オプティアップ DEX パシュト」
自分に掛ける物を3つ。リブラとオプティアップDEXで60%アップ。パシュトで追撃を付与する
「オプティダウン DEF」
シロクマに対してオプティダウンのDEFを掛ける事で10%下げる
「グオォ?」
シロクマがこっちに気が付く。デバフを掛けられた事で戦闘状態になったのかこっちに向かって走ってくる。というかオプティダウンの射程、僕の中じゃかなり長いかな?いや、基本自分にしか掛けないから射程とか特に気にしてなかった
出来るだけ近くまで来ないとアレが使えない
「ウガァァ!」
僕に噛みつこうとするシロクマ。スローの中でもこの圧迫感は中々怖いかもしれない。対処する方法が無ければだけど
「レスト」
シロクマの前足に手を触れ、レストを発動する。これでダメージは倍……少しだけ下がる
ゆっくりとだが、その巨体が倒れてくる。現在【リインフォース】で強化された凶器となっている僕の腕で頭上から落ちてくる頭……というか鼻先に裡門頂肘をヒットさせる。巨体が倒れてくる勢いと鼻先をしっかり捉えた肘がぶつかりボギッ!と嫌な音が聞こえる。強化された僕の肘が折れた音ではない