やってない
「おいおいおい、無傷じゃねぇか……」
「ウッソだろ……」
「一番タチ悪い奴や……」
お約束に反応してもらえるのは嬉しいけど、そんな反応されたら最初に倒したくなっちゃうなぁ?
「どうやら期待してくれていたようなのでそろそろ本気を出しましょうか?」
「いやぁぁぁ!」
凄い良い反応してくれるなぁ……こういう反応をしてくれると悪役冥利に尽きる
「では行きますよ?【強化】」
【マクロ】で設定しておいた3つ目の複合魔法。【オプティアップ DEX】とか【リブラ ItoX】、【リインフォース】、【パシュト】等の強化詰め合わせパック。一つずつ発動するのも面倒なので一括にした。別に個別で使用しても良いけど、やっぱり一回で全部使える方が途中で邪魔される心配も無い
「よし」
現状、全戦力をデス状態にするなんて超リスキーな行動はしない。でも魔王としての役回りをする為に250人程をデス状態で待機してもらってる。流石に全ステータス250%アップになれば勇者にもブラックホールボムが無くてもそれなりにダメージを与えられるハズだ
「まずは貴方から」
「へっ!?ゴハァ!?」
ゴキブリダッシュ+遺志の権利を一瞬だけ使用する。やっぱりゴキブリダッシュに強化魔法、更にステ+250%だと、一直線にしか動けないな?ゴキブリダッシュは無くても良かったかもしれない。レバーブローとして左手が腹に当たるようにちょっとだけ軸をずらしてダッシュをしてみた結果。壁まで到達してしまった。速度が乗っていたお陰でSTRが無くても人1人を壁に叩きつける威力……しかも僕の場合追撃が発生するから4発分+壁との激突ダメージ……まぁ、即ポリゴンだね?
「力が、馴染みますねぇ?」
もちろん嘘だ。全然まだ馴染んでない。正直さっきはよく壁にぶつかる前に止まれたと思う。でも、一応現状の最高速度……多分銃弾よりもずっと早い速度の移動を一度経験したから次、ゴキブリダッシュを抜けばさっきよりも動けそうかな?
「今の、全然見えなかった……」
「超スピード!?」
「は?え?」
うんうん、良い感じに驚いてくれてる
「ファ!?なにあの速さ!?」
「瞬間移動?」
「今ので一人倒したのか……」
幽霊の皆も驚いている。やった自分でも驚いてるんだから驚いてない人の方が少ない
「次、行きますよ?」
過ぎたるは猶及ばざるが如しってこういう事を言うのかな?だからこの権利を有効活用するのならもっと瞬間的に、当たるその瞬間に遺志の権利を発動出来れば、自分の体の動きの邪魔をせずに威力だけを跳ね上げられるかな?
あ、そういえばこの権利って別にスキルじゃないからあの姿でも使えるよな?だったら……
「またさっきのは撃ってこないんですか?」
とりあえずあのとんでもレーザーがまた撃てるのかどうかを確認してみよう
「とりあえず囲め!奴が移動出来る範囲を狭めるんだ!」
さっきの人は油断していた、助走もあった、壁に突き飛ばされた。とか色々合わせて一撃でキルされた。そう考えて僕を囲んで、移動させないつもりなんだろうか?
「おやおや、それは確かにやられると厄介ですね?何処か一か所を突破しましょうか」
ジリジリと僕の包囲網が狭まってくる。やろうと思えば包囲網とかジャンプで飛び越える事も余裕で出来るだろうけど、それはやらない。せっかく敵の方から迫って来ているんだから出来るだけ近くで見てもらおうじゃないか
「改めて見ると勇者軍の方も結構居ますね?」
「これでもかなり減らされたんだがね……はぁ!」
「しっ!」
「オラァ!」
「くたばれですの!」
包囲網が狭まり、踏み込んだ攻撃がギリギリ届くくらいの距離。勇者軍の数人が中心の僕に対して攻撃を仕掛けてきた。じゃあ見せてあげようか
「やはり全て吹き飛ばしてしまいましょう【アビスフォーム】」
一言小さく呟けば、僕の体から黒い衝撃波が飛び、ノックバック効果で攻撃を仕掛けてきた人達を吹き飛ばす。変身する時にこうやって安全性を確保出来るのも【アビスフォーム】の良い所だ
「サテ、ダイニラウンドト、イキマショウカ」
包囲網の中心には全身真っ黒になり、背中から4本の平たい触手が生えた二足歩行の化け物が立っていた
「なっ!?これが魔王の真の姿……」
「なんだこの化け物は……」
「形態変化とか聞いて無いぞ!?残り時間だってそこまで多くないのに!」
「こ、こんなの大した事ありませんわ!撃てば死にますわ!」
まぁ攻撃が当たれば痛い。だけどその前に……
「【淵伝】」
背中の触手を包囲していた勇者軍の後ろに展開して、背後から【触手攻撃】で突き刺す
「「「「うがぁ!?」」」」
背後からの攻撃で包囲網が崩れる。中心に居る僕を見ていなければならないのに、横に居た仲間が背後から突き刺されれば、そちらを見ない訳にはいかない。たった一瞬。その一瞬の隙にバッタジャンプ+遺志の権利で天井まで跳ぶ。うーん、やっぱりもう少し練習するべきだったかな?でもあんまりやり過ぎてリスポーンが遅くなってしまうのも嫌だし、とりあえず少しずつ練習しよう
「あれ?どこ行った!?」
「天井だ!」
「天井に……立ってる?」
上下逆さまの状態ながらも天井が地面だと言わんばかりに逆さに立っている黒い化け物。こんなのいきなり出て来たら絶対無視なんて出来ないだろう
「サイゴマデ、タッテイテクダサイネ?」