仕組まれる結末
「【パフォムエフェクター】これ素晴らしいですね!おほほ~」
ドクターがホログラムの魔物を出して装甲を追加したり、オーラ系エフェクトを付与して楽しんでいる。やっぱりこういうの得意だったか
「これ、楽しいですよねー」
「おっほ!指揮官が5人も!しかも全員姿が違いますねぇ!なるほどなるほど!こんな面白いスキルもっと早く使いたかったですよ!」
ドクターがまじまじとホログラムを見て、ツンツンと指で僕のホログラムを突く。そのまま流れで僕まで突かれた
「それ、僕です」
「おや、失礼。でも全然見分けが付かないですね?」
「あの、そろそろ突くのやめてくれません?」
「指揮官の肌って結構モチモチしててこう、いつまでも触っていたくなる感覚ですね……」
「あにょー……」
「おぉっと!失礼しました!とにかく必要なホログラムを完成させますね!」
僕の頬を突いていたドクターが急いで空中にキーボードを展開して、凄まじいスピードでタイピングしている。そうやってホログラム作るんだ……
「超特急で作りました!これとかどうでしょう?」
「これは……城の中の壁?うおっ!?急に敵が!」
壁のホログラムから急にカマキリのような両手が鎌になっている魔物のホログラムが飛び出してきた。この魔物はプリセットに無かった気がする……今のアレで作ったのか?
「指揮官の頬で弄んでしまいましたからね。女性のプレイヤーに見つかったら私はボコボコにされてしまう可能性が……今の内に自分が隠れられる様な物を用意しなくてはと……」
命の危機が迫ってたから急いでいたのか……まぁ流石にやめないからと攻撃して止めるまででも無いし、多少はやらせてたけど、我に返ってからはもの凄いスピードでホログラムを作っていた。人って追い詰められると限界超えるんだな?
「これで敵は本物の壁と偽物の壁があれば壁を触れながら進まざるを得ない状態に出来るでしょうし、味方からは隠れる事が出来ます」
ホログラムの壁作って隠れる所まで考えてるのか
「だったらあんなリスクある行動しなかったら良いのに……」
「最初はそんなつもりは無かったんですが、実際触ってしまった時の感触がですね……」
仮面を首輪状にしていたのが仇となった。やっぱり真っ黒お面状態に戻した方が良いかな?
「とりあえず、先程はすみませんでした」
「まぁあまりやられるのは好きじゃないですけど、ドクターも頑張ってくれてますからさっきのは不問にします」
「ありがたき幸せ……なんか違う気がする?」
まぁ間違いでは無い気はするけど、間違っていると言われれば間違っているような気もする
「ところでこのホログラムって共有は出来るんでしょうか?」
「あっ、そういえば……」
このホログラムはドクターが1から作った物だ。僕が作った訳じゃ無いから僕がこのホログラムを使えるかと言われたら使えないだろう
「さっき指揮官は自分のコピーを出していましたよね?」
「はい、出してましたね?」
それでツンツン突かれる事になったけど……
「実体ある物がコピー出来るのなら、ホログラムもコピー出来るのでは?」
「なるほど、オリジナルをコピーして使えるかって話ですね!じゃあちょっとコピーさせてもらいますよ?」
城の壁と同化するこの魔物一体型壁のホログラムをコピーしてみる。大きな正方形のスキャン膜みたいな物を展開し、ドクターの作ったソレのコピーを試みる
「こうやってホログラムのデータがやり取り可能なのは良いですね?」
「これならスムーズに受け渡せますね?流石に巨大過ぎる物だと難しいですが……」
一度実際にホログラムを展開して、それをスキャンしないとコピー出来ないから、巨大過ぎる物だとスキャンが出来ない。こればっかりは仕方が無い問題ではある。まぁこういうのは出来るだけでもありがたいと思おう
「そうそう、ドクターや他の皆にも伝えておかなきゃいけない事がありますから一旦皆の所に戻りましょう」
「ん?何でしょう?」
「ちょと最終日の立ち回りについてですね」
運営と会話した事に関しては喋らずに、どうにかして魔王軍の皆にネタバラシは今しないという事を全体に浸透させなくては
「という訳で、今回のイベント中は偽の魔王と戦ってるとか、実は四天王何か居ないとかの情報は全部伏せたまま、イベントを終了したいので皆さんに協力して欲しいんですが……」
「途中で公開して精神的ダメージとか与えないのか?」
「やっちゃった方が面白いんじゃないか?」
「ん?なんか引っかかる言い方……」
案の定と言うべきか、僕は最初は途中でネタバラシして敵を混乱させるつもりだったけど、それを方針転換するんだから味方の人も今の僕のやり方だったらネタバラシするんじゃないのか?と疑問が浮かんだみたいだ
「あくまでこのイベント中は、という話です。このイベントの最後に僕がやられて時間切れなら僕達の勝利ですが、こっちの魔王様は世界を平和にしたいから世界征服の魔法を使うって言ってるんですよね。だから敵をコントロール出来れば、勇者軍はラスボス倒した世界は平和になったーっていうグッドエンドでこのイベントが終了。でも、こっち側は全部知っていて、実は魔王は倒せてない。魔王のお陰で世界は平和になったんだっていうある意味トゥルーエンドに到達している状態でイベントが終わるんですよ。PVもそうなれば魔王軍サイドのPVももっと良くなる気がしません?」
偽りのグッドエンドPVの勇者軍。残酷な真実のトゥルーエンドの魔王軍。これならあの運営の人も文句ないんじゃないかな?
「イベント終わってからのPVが楽しみですねぇ……これは?」
「良いじゃん良いじゃん?トゥルーエンドとか大好きよ?俺!」
「どっちもハッピーで終わるんだよなそれだと、しかも勇者軍は真実知らないで勝った勝ったと言ってる所を横目で(実は負けてたんだよなぁ?)って……あぁもう最高。リアルの酒の肴になりそう」
「イベントが終わってもずっと黙ってたらめっちゃ面白い奴じゃんそれw」
どうやら乗り気みたいだ。気持ちが変わらないようにまた少し料理を振舞いますか!
「どうしてまな板ごと素材が切れてしまうの……」
「何故お玉が溶けるの……」
「女子力が欲しい……」
あの集団は見なかった事にしよう