魔王的演出
「なんで急に施設バフが無くなったんだ!?」
「なんで急に敵にバフが?」
混乱している間にさっさと仕掛けてもらおう
『近接組の皆さん。仕掛けてください』
「「「「「うぉぉぉぉぉ!」」」」」
バフが無くなれば人数差なんて大した問題ではない。形勢は完全に逆転した
「くっ……撤退だ!」
ジェイドさんが撤退を指示するが、まぁ簡単に帰すつもりは毛頭ない。実体化するまでの時間が足りないのなら【イリュジオ】で出してしまえば良い。声は城の内側の門を開けた状態で城内から出せばそれなりに届くだろうし、まずは幻影が出てくるので丁度良いだろう。それにこっちの最高戦力達は戻ってきているんだから改めて顔見せしておかないとね?
「おやおや?確か……そうだ、ジャイロさん。もうお帰りになられるのですか?」
今は脅威に感じないのでワザと名前を間違える
「お前は……」
門をゆっくりと操作して開けながら【イリュジオ】の僕が歩いて外に向かっていく。そしてその幻影の僕が先頭に、両脇から少しずつ後ろにずれて一緒に歩いてくる人達が居る。自爆から復活した魔王軍の精鋭が偽りの魔王を先頭に城の中から出てきた……という演出だ。自爆を指示した時からリスポーン位置をこの正面エントランスにしたので復活してすぐに来てもらえる。後ろから見ているけど、ただ並んでいるだけでもかなり強そうに見えるな?おっと、見とれている場合じゃ無いや
「彼女達が消えてしまったのは大変残念ですが、そうですね、最後に残された者として使命を全うしましょうか。さて、ここで私には2つの選択肢が用意されています」
「2つの選択肢……?」
「今、不完全な状態で戦うか。明日までに可能な限り準備を整えて万全な状態で戦うのか……おっと、これでは私の選択肢ではなく、貴方達の選択肢でしたね?」
ワザと間違えて挑発する
「準備しろだと……重要施設を破壊しておいて今更何を準備しろと?」
「そうですね……最後の晩餐の準備でもしたらいいんじゃないでしょうか?もしくは守るべき場所が無いのであれば人を纏めるのが良いんじゃないですか?貴方達は施設による強化が無ければ戦う事すら出来ないのですか?」
足りないのなら束ねる事で補うしかない。バフ頼りで個々で動こうという考えが間違っている
「我々は個の力を、貴方達は全の力を……おっと、喋り過ぎましたかね?」
ヒントとして出せるのは全員で協力しろとしか言えない。まぁそれでも負ける気は無いけどね?
「流石にヒントを出し過ぎなんじゃないのぉ?」
「教え過ぎは成長の糧にはならねぇぜ?」
「なんでも良いけどやらないのー?」
「今は抑えろ。邪魔をしてはダメだ」
「引く勇気、って奴ですね」
こうやってキャラの立った人達(主にフレンド)が率先して行動してくれるととても助かる。だけどその……数人居る妙な立ち姿の人とか何とかならないですかね?ドドドドドとかゴゴゴゴゴとか背景に見えそうな立ち方の人が数人居ますねぇ……
「だが、このまま引いた所で勝ち目など……」
「ここで引かずに戦う。それもアリでしょう。ですが」
ゲヘちゃんアームを城の敷地内で呼び出す事で2本の巨大な塔が急に現れる
「大技を使って大して動けない勇者を庇って貴方は私を倒すと、本気で言っているんですか?」
4人目を倒して疲労している勇者を見捨てなければ確実に損害が出る状況。この状況でどう判断するか
「……撤退する時に攻撃しないと、そう捉えて良いんだな?」
「まぁそうですね。ただ、あまりにも時間を掛け過ぎると私の後ろに控えている人の抑えが効かなくなるので決断は早い方が良いですよ」
キリアさんとかめっちゃウズウズしてる。まるで猫じゃらしを目の前でフリフリしている時の猫みたいだ
「撤退……させてもらう」
「素晴らしい選択です」
「ちょっとジェイドさん!こんな所で退いてどうするんだ!?」
「なんで退くんだ!まだ戦える……」
「煩いですね。そういう事をするから命を無駄に散らす事になるんです」
折角ジェイドさんが撤退の意思表明をしたのに反抗する人が居たからゲヘちゃんアームで叩き潰した
「味方全ての意思を纏める事はとても難しい事です。味方の総意と言っても本当の意味で全員の意思が同じである事はそうある事ではありません。誰かが何かしら我慢する事があるでしょう。ですが、全体の生存率を考えたジェイドさんの判断を無碍にする行為は非常に愚かな行いです」
泥を被ってでも皆を生存させる事を選んでいるのにアレは無いよなぁ……
「私はジェイドさんを評価しますよ。例え味方に罵倒されようとも、ここで退く判断が出来るリーダーは優秀です。文句がある人が代わりにリーダーをしたところでどうせ無駄に消耗するだけでしょう。残っている時間はわずかかもしれませんが、私達を本当に倒したいのなら一度撤退するのは正しい判断です。さぁ、皆さん拍手しましょう」
まばらな拍手を皆で送る。敬意と煽りの両方を込めるという中々あり得ない拍手だ
「では最終日にまた会いましょう」
くるりと城の方に向き直り、中に入って行く。勿論控えていた周りの人達も一緒に城の中に入って行く
「こんなバカにされて!」
外の城門から矢を放たれたが、残念ながらその僕は幻影だ。矢は通り過ぎて幻影の僕も消える
「なっ!?」
「私を倒したいのなら城の奥で待っていますよ?ではさようなら。勇者諸君」
そう言い残して門を閉じた
「ぷくくっ!勇者諸君って!ぷふっ!」
「ちょっと!?キリエさん笑わないで下さいよ!?」
頑張って決めたつもりだったけど、キリエさん的にはツボだったらしいのかお腹を抱えて笑っていた。門が閉まってなかったら危ない所だった……




