発見
「はぁ!」
「中々厄介ですね」
剣と盾。守りながら攻撃してくるジェイドさんの戦い方は非常に面倒だ。左手の盾で上半身を隠しながら右手の剣で横斬り。急所を隠した攻撃は今までの対人では無かったタイプだろう。間合いで言えば普通の剣を使う人に比べたら短いが、攻防一体で相手にするには嫌な相手だ。盾も割と大きめだし、足元もすぐ守れるのは本当に厄介だ。とりあえずこっちからは出来るだけ隙が生まれないようにフェイントだけで留めておく。下手に手を出すと腕とか斬られるだろうし、中々攻め手に欠けるな……
「どうした?こっちから行くぞ!」
あ、どうぞどうぞ。攻めてもらえる方がありがたい
「どうぞ」
「……何か嫌な予感がする」
攻めようと体勢を低くしたジェイドさんだったが、僕の態度から攻めたらマズイと感じ取られたようだ。ジェイドさんが攻撃を中断して盾を構え直す。攻めて来たら【精神防壁】で防ぎながら色々やろうと思ったけど、こっちから攻めなきゃ動かないとなるならどうすべきかな……
「来ないのですか?」
「予想の域は出ないが、君はカウンタータイプだろう?ならこちらから攻めるべきではない」
なるほど?まぁ否定はしない。実際相手の攻撃に合わせてカウンターで攻撃が入れた方がダメージは大きいだろうから狙っていたのは間違いない
「そうですか。ならばこちらから行かせていただきます。バリアは張らなくてよろしいのですか?」
「下手にバリアを張るのは動きが遅くなってしまうからやらないだけだ。負ける訳にはいかないんでね」
バリアって発動したら移動速度とか遅くなるんだ。僕はそんな事無いけど、そういうデメリットもあるんだろう。まぁ別にこっちから攻めて良いと言うのなら望み通り攻めようじゃないか
「【フラッシュ】」
一瞬の閃光。それを使って光る瞬間に攻撃を出すが、振りかぶりモーションは遅く、【フラッシュ】で光った直後に加速して掌底で攻撃する。左手で攻撃しようと見せた所で【フラッシュ】を使って右手で攻撃。パンチと見せかけて【フラッシュ】を使って水面蹴り。とにかく【フラッシュ】を織り交ぜた攻撃で敵の感覚を狂わせる。盾で目を隠せば容赦なく、その盾が防げていない部分に蹴りを入れたり、掌底をお見舞いするけど、まだ手に関しては右手でしか攻撃は当てていない。ドクターの作った変質毒は戦闘前に左手に液体A、右手に液体Bを塗ってあるから、あとは左手で触れるだけで何かしらの毒の効果が発揮する訳だ。触れただけでアウトは中々素晴らしいじゃないか
「な、なんだこの戦い方は!?」
大量のフェイントモーションを入れて動きを読ませないようにし、軽い攻撃を数発当てるだけ。相手にしてみれば次に何が来るのか良く分からないだろう
「どうしました?攻撃受けるだけで攻めてこないのですか?それで私に勝てるんですか?」
煽りも忘れずにやる。これで相手がペースを崩せば良いけ、ど……アイツは!
「ふふっ」
「何だいったい……」
ミツケタゾォ?
「どうしたんですか?ふふっ、少し攻め方を変えた方が良いですか?」
ちょっと喜色が漏れてしまっただろうか?正面から攻撃するのをやめて、ジェイドさんを中心に左右に不規則なステップして背後を取ろうとする。勿論そんな事で簡単に背後を取れるとは思っていない。大事なのは立ち位置を変える事。今の僕とジェイドさんの立ち位置は僕の背後には魔王軍、ジェイドさんの背後には勇者軍が居る。だからそれをステップしながら自然に立ち位置を逆にして僕の背後に勇者軍が居る状況を作る
「中々その盾も頑丈ですね?腕を使えないようにした方が良いでしょうか?」
「腕の1本や足の1本使えなくなるくらい覚悟しているさ……だが負ける訳にはいかないんだ」
おー、カッコいいねぇ?でももうジェイドさんに興味無くなっちゃったんだよね?今はどれだけ隙だらけな背中を見せる事で奴に不意打ちをさせるかの方が重要だ
「ふふっ、どうしましょうか?あなたを倒したら残った人達は全員を肉達磨にするのも良いかもしれませんね?」
首を大きく傾げてジェイドさんを挑発する。そしてここでジェイドさんがやられたら次は自分達の番だと思えば小心者にはタイマンとかどうでも良いだろう。なりふり構わず攻撃してくるはずだ。その為に軍人の時にタイマンなんてしないで人数を活かせって言う免罪符を用意したんだ
「…………え?」
こっそりと背後から背中を一突きしようとしていた奴の剣を体を半身になって避ける。そして刺さると思っていた攻撃が外れる事で体勢は崩れる。背中を晒したので左手で捕まえて、剣を手から蹴り飛ばす
「みつけた」
軍人にトドメを刺した事で味を占めたのだろう。不意打ちでまたやってやろうと思ったのだろうけど、今回は刺されるつもりは無いし、逃がさないよ?
「ミツケタ!ミツケタ!!ミツケタ!!!ミツケタ!!!!ミツケタァ!!!!!」
「ひっ!?」
復讐対象を見つけたんだから思いっきり壊れた演技をしよう。メンヘラ?とりあえず狂気に満ちた演技がどこまで出来るかな?