ウシガエル・リベンジ
「ふぅ……よし!行こう!」
いつ皆に会うか分からないけど会ったらきちんと話さないと……
「あっ、皆……」
ドアを開けて外に出た途端に皆が待っていた
「ハチ。待ってたぞ」
アトラさんが昼にも拘わらず村に居た。これはいつもと違う
「ハチ、この村はいつでもお前が帰って来て良い場所だ。あの時は一言掛ける前にお前が行ってしまったから皆困ってたんだぞ?」
「そうだぞハチ?全く、せっかくこの村の泉に転移出来る様に水を持ってこさせたのにお前が居なかったから別の者に頼んで運んでもらったぞ?」
「兄さん急に家に走って行ってしまったから焦ったで……もしかしておらぁのせいかと……」
「ハチー!僕達もこの村の住人になったよー!」
「良い機会だったので私達もハチさんが居ない間にこの村の住人になりましたよ!」
僕が失敗したと思って居なくなった後、色々あったみたいだ
「おう、村としての力が増したから昼でも皆が出られるようになったからな?ハチが居ない間に」
「そうそう。ハチが居ない間に!」
姫様の言い方がグサッと来る
「ハチは旅人なんだからいつかこの村を出て行くってのは皆も分かってんだよ。俺も昔は色々冒険してたなぁ……」
「なーに昔の事懐かしんでんだよこの骨は」
「悪いかよ!俺だって昔は結構やんちゃしてたんだぞ?今は農業の楽しさが骨身にしみて……ギャグじゃ無いぞ?」
「ぽよ……」
ワリアさんの骨ジョークが炸裂し、周りの空気が凍り付く
「まぁこいつの話は置いておいて、姫様もハチがいつか村を出て行くってのは納得してるからよ」
ドナークさんにぴったりくっついている姫様を見れば姿は違えど姉妹のようにも見える
「ハチは私をこの村に連れて来てくれたように他にも色んな者達を村に連れてきた。そしてそのお陰で夜しか出られなかったこの村も朝でも外に出られる様になった。私の勝手でハチの世界が広がる事を邪魔する事は出来ない。村を出て行くのは寂しいけどまだ出て行く訳ではないのだろう?」
「そうだね、人形の修復が出来るまでは出て行かないよ」
人形の修復。初クエストでもあるこれを成し遂げなければ僕はこの村から胸を張って出て行く事は出来ない
「ならいつもと変わらないな!」
「……そうだね。僕もちょっと考えすぎだったかも。それにこの村から出て行ったとしても泉を使えばこの村に来ることも出来るんだよね?」
「あぁ、旅人ならば他の泉を見つければその泉と移動する事が出来るぞ?本来ならば金が必要になるが、ハチがここに来る時とここから出発する時は私の力でタダにしてやろう」
ヴァイア様がとても頼もしい事を言ってくれた。というかその移動にお金が掛かるんだね……
「ヴァイア様には感謝しか無いですね」
「むふふっ!ハチだけだぞ?」
悩んでいた僕がバカみたいだ。やっぱりここの村に居る皆は良い人ばっかりだ
「僕、皆の事を軽く見てたよ……本当にゴメン」
「それなら頑張って人形を修復してくれよ?」
アトラさんからの依頼。絶対に成功させて見せる。だけどその為には絶対にリベンジしなくてはならない奴が居る
「うん、絶対に修復するよ。だけど僕には倒さないといけない奴が居る」
「ん?そんな因縁のあるやつでも居るのか?」
「沼地のカエルにリベンジしなくちゃいけない。あいつに勝たなきゃ僕は前に進めない」
あの勝てなかったウシガエルにリベンジして勝てなければ他のパーツを集めるのも難しいだろう。旅に出ると言っても僕が一人でやっていけるのか。それがあのウシガエルが倒せるかに掛かっていると思う
「なるほどなぁ、まぁ今のハチなら倒せるんじゃないか?」
「アトラさんがそう言ってくれるなら勝てる気がするよ。それじゃあリベンジ行ってきます!」
「気を付けてなー」
皆も手を振って見送ってくれる。絶対あのウシガエルに勝ってやるぞー!
森を走りながら沼地を目指す。いつもなら紫電ボードに乗って行く所だけど今回は【リインフォース】用のMPを確保しておく為、走って沼地に向かう。だけど色々な称号とか装備のお陰で走っても結構速い
「待ってろウシガエルー!」
岩場を越え、沼地に辿り着く。紫電ボードを取り出し、この前と同じように沼の上を滑る様に移動する
「見つけたぞー!おりゃ!」
「グェゴッ!?」
ホルスタインカラーのデカいカエル。前回撤退したあのカエルだ。鉄貨を取り出し、投げつける。手に持てて投げやすい物って今の所これくらいしか無いんだよね
『スキル 【投銭術】を入手』
今新しく手に入ったスキルを確認するのは後だ。陸地で【リインフォース】を発動し、戦闘を開始する
「さっさと片を付けてやる!」
ウシガエルが僕を押しつぶそうと跳躍して落下を始めた所で落下地点から動き、僕も跳躍する。強化されたジャンプ力で、このタイミングならウシガエルの着地の隙に合わせて僕が上を取れる
「打撃が効かなくても刺突ならどうかな?」
カエルの脳天に強化された左手を窄めて蟷螂手の形にして刺す
「グゴッ!?」
カエルの脳天に肘まで腕が刺さり込む。すっごいぐにゅぐにゅしてる……このウシガエルに頭蓋骨は無いのか
「もう一発!」
今度は右手も蟷螂手の形にして刺す
「ウゴキュッ……」
声にならない声を出すカエル。ここだ
「【リブラ】 ItoS」
かなり省略したけどINTを50%下げ、STRを50%上げる事が出来た。でもこの省略方法だとDEFとDEXの入れ替えとかは出来なさそうだなぁ……
「ついでに【パシュト】」
両手で掴んだカエルの多分脳を底上げした力で引っ張り出す。パシュトも入っているからなのか赤ポリゴンが凄い出てくる
「グビャ……」
僕が上に乗って頭に腕を突っ込まれた時に暴れていたウシガエルだが、【ラフライダー】の効果で振り落とされる事も無く、攻撃を続ける
強化された両手で掴んでいた脳を一旦手放し、周りの皮膚を手刀で切り裂く。殴った時は全く痛みも感じていなかったウシガエルの皮膚はあっさりと切り裂けた
完全にアウトな光景だけどそこはゲーム。中身が全く見えない程の赤ポリゴンの奔流。バタンとウシガエルが地面に倒れ伏した