シスター出陣
「お前ら……終わったぜ?」
「何を……」
「そりゃ」
城門の上から熱湯が勇者軍に降り注ぐ
「「「「「ぐあぁぁ!?」」」」」
火傷に対して耐性が無い人は熱湯を被った事によるダメージと火傷の状態異常がセットで襲ってくる。しかも攻撃が終われば地面に熱湯は吸われるので、近接組が直ぐに追撃が出来る。高温に対する耐性と、火傷に対する耐性の2つが揃って初めてこの熱湯攻撃を防げるんだろうか?僕も事故でこの熱湯を被っちゃったらダメージは避けられないだろうな……
「動きが止まった奴はただの的だぜ!」
「容易い!容易いわぁ!あんた達はここで死ぬのよ!」
「抹殺!滅殺!虐殺だ!」
いつにも増してノリノリだ。これだと勇者軍を殲滅するのも時間の問題……とはいかないようだ
「早さが!」
「上がったぞ!素早さの施設が修復出来たんだ!」
「急いで助けられる奴を助けるんだ!」
どうやら素早さの施設が修復されてしまったらしい。だとしたら勇者が施設を修復したのだからこっちに向かってくるとしても不思議では無い。そろそろ行かせるべきかな?
『素早さの施設が勇者によって修復されたようなので、勇者がこっちに来る可能性が高くなりました。ワイバーン組はそろそろ出発する準備をしてください』
多分来る、きっと来る。季節は白く……じゃない。とりあえず勇者が来てしまった場合どう対処したら今日を乗り切れるか考えないと……
『了解だ。勇者への対応は大丈夫なのか?』
『やるだけやってみるって感じですね。皆さんが施設破壊に成功したら確実に勇者軍が全体的に弱体化するんでそうなれば勇者にも一応対応出来るかなって』
もちろんただのでまかせだ。敵のバフ施設を破壊したからと言って敵の性能が下がるだけで、こっちの性能が上がるとは言ってない。勇者に対応出来るかは分からないけど、相手がとんでも勇者ならこちらもそれ相応のやり方をしなきゃいけない
『どっちにしてもワイバーン隊が施設破壊する事がこのイベントの勝敗を決める一番重要なポジションです。今の僕が勇者にやられたとしてもそれは別に四天王敗北計画に組み込めるので負けたとしても何の問題もないんですよね。復活してステ10%アップ貰えますし』
でも出来ればまだここでデスするのは避けたい。どうしてもやっておきたい事があるからその時まで初デスは取っておきたい
『そろそろ僕も戦闘に参加します。ジェイドさんってそこに居ます?』
『おう、まだ門は越えてないけど居るぞ』
よし、それじゃあバリスタを再設置したら降りるか
『じゃあ1、2分くらい戦闘をお願いします。バリスタを再設置したら降りるんで』
『任された!』
バリスタをまた同じ位置に再設置して勇者が来た時に攻撃出来るようにしておく。これをしておかなかったら敵がまたやってきた時が大変だ。外の白武と黒武は格闘戦の指示を出したけど、敵を壁際から放して城壁上の味方と連携が出来るように動いているし、城の中に入ってきた人は近接組がお仕置きをしている。一回熱湯攻撃を見せられているから相手も中々入って来ようとしないし、良い膠着状態だ。人数差が有っても時間稼ぎが出来ている
『よし!再設置出来たんで降ります』
近接の人達が敷地内に入ってきた相手を倒しているので僕も安全に降りられる。何気に弓で城の2階から城門の向こうから攻撃しようとしてくる相手の喉を撃ち抜いたりしている人も居るし、近接組のカバーもちゃんとされている。こんな沢山の人に見られながら演技をしないといけない……いや、逆だな?演技をしているからこそ本当の自分を見せていないお陰でこれだけの人の前で立つ事が出来る。これなら現実の世界でもある程度理想の自分を演技する事でオドオドしなくなるかもしれない。それなら今は自分を変えるターニングポイントって奴かな?
「おや?もう迷える子羊では無く戦士となったようですね?」
城壁の上から飛び降りて(正確には見えない所まで壁を歩いて降りて、そこから飛び降りたけど)ジェイドさんを確認してからその言葉を言った
「お前は……あぁ、もう迷わない!アイツを守り、お前を倒して魔王も倒す!」
「欲張りですね?」
まぁ勝つ為に色々やってる僕が言えた事じゃ無いけど……
「では……」
『ジェイドさんと一騎打ちするんで一旦手を出さないでください。四天王最後のシスターはここで離脱します』
ここから先は全部魔王ロールでやった方が負担的にも助かる。悪いが皆が見ている所で負けるとしよう
『りょ!』
『四天王も最後かぁ……』
『どうするんだ?もう先が分からねぇ……』
『指揮官劇場の展開が目まぐるしく変わるから付いて行くのがやっとだぜぇ?』
色々反応はあるけど、僕が小さく左手を挙げると、周りに居た魔王軍のプレイヤー達はそれに合わせて武器を下げる。すごい一体感を感じる。今までにない何か熱い一体感を。風……なんだろう吹いてきてる確実に、着実に、僕達のほうに……的な?
「そこの貴方。私と一騎打ちをしませんか?」
「何?」
「周りの人に手を出させません。私もあの人の理念に反する事をしてしまいますが、私程度を一騎打ちで相手にする度胸が無いのであれば、魔王様の前に立つ事すら出来ませんよ?魔王様を倒すと言うのであれば、貴方達が魔王様の相手になるかテストさせていただきます。もちろんやらないと言うのであれば私の復讐対象は勇者軍全体になります。今は貴方を復讐対象として認めてあげましょう」
魔王軍とジェイドさんの間でのみ通じるだろう復讐対象の話。ここで断ったら味方を売って生き延びた事をバラすと暗に言っているような脅しに聞こえるだろう。だから当然返答は……
「その提案を受けよう。勝てば魔王の所まで行かせてもらうぞ!おーい!こっちも手を出さないでくれ!」
「私が死ねば最後の1つの鍵が破壊されて魔王様までの道が開けるでしょう。城に入った事がある人なら分かるでしょう?」
例のバナーを連想させる事を言ってみる。守る事が主体の相手とバリアを張った格闘戦をする僕の対決……これは時間掛かりそうだぞぉ?




