別の悩み
「あの……指揮官?今、遠距離で攻撃出来るって言うので手を挙げたんだけどさ?実は遠距離で攻撃出来るの戦闘中に1発だけで……」
「俺も実は3発しか使えないんだけど……」
「持ってる投げナイフの分しか遠距離攻撃出来ないけど手を挙げても良かったんだろうか?」
あぁ、そっか。とにかく離れた相手に攻撃出来る手段を持っているか聞いたから例え戦闘中に1度しか使えないとかでも攻撃手段を持っていると言えば持っている事になる。これに関しては僕の聞き方が悪かった
「そうですよね。さっきの聞き方ならそういう人でも持っているって手を挙げますよね。えーっとじゃあ、遠距離攻撃手段を持っているけど数発のみ、近接が主体だって人になると何人くらいになるんでしょうか?もう一度手を挙げてもらえます?」
聞き方をより詳しくしてもう一度聞き直す。すると、全体の3割程度が手を挙げていた
「それなら今、手を挙げている近接のエキスパート達には城門入ってすぐの位置で敵の進攻を食い止める役割をお願いしたいんですが、どうでしょうか?」
遠距離攻撃手段が極端に少ない人となると、パーティで仲間を守るタンクをしていたか、近接だけで進んできた猛者と言われる部類の人だと思う。そんな人達が城門入ってすぐの位置で防衛していれば敵もおいそれとは入ってこれないだろう。遠距離攻撃が出来る人を近接の人達の後ろに配置するのではなく、城の2階などに配置したら平面の戦闘では無くなり、上から撃ちおろす形にしたら近接の邪魔をしないし、近接もまた遠距離攻撃する人の邪魔にはならない。一般的に近接が盾となり、遠距離が攻撃するのは理に適っているけど、攻撃方法によってはその防いでくれている近接が遮蔽になってしまい、攻撃出来なくなる事も無い訳では無い。こちら側の盾となってくれているのならその逆も然り、敵に対しても盾になっているだろう。背後から味方に当てないように気を付けながら攻撃するのは結構気を遣うし、敵がバフで強化されている状況で味方に背後から攻撃されるなんて状況に事故でもならないようにするなら上下に配置するのが一番だろう
「エキスパート……まぁ?確かにそういう役目なら俺は遠距離戦より近接戦闘の方が得意だから?」
「足止めなら遠距離攻撃をしなくても問題無いな?」
「そういう事なら近接エキスパートに任せろ!」
褒めながらお願いする事で気分良く引き受けてくれるならいくらでも褒めよう。大事なのはその気にさせる事。いやいや引き受けた配置よりも自分からやると言ってくれた配置の方がより良い成果が挙げられるだろう。どんな人でも(自分の嫌いな相手でなければ)褒められて嫌と感じる事はそうそう無いだろう。その為にエキスパートっていう明確な誉め言葉を使ったんだ
「引き受けてくれます?」
「「「「「もちろん!」」」」」
近接部隊の快諾を得て、敵が正面から入って来た場合に備えた行動がこれである程度固まった
「これで敵を城門に入れてから足止めをする事で上から熱湯釜の攻撃モーションを敵に見られずに攻撃出来ます」
熱湯釜はグツグツに煮えた熱湯を上から掛ける攻撃方法だが、その熱湯が入っている釜をひっくり返す攻撃手段の為、外に向けて使うと攻撃モーションが丸見えでそれこそ城壁を登っていたりしない限り直撃は難しいだろう。だけど、門を越えて入ってきた敵に向かって使用するならば話は別。モーションが見えていたとしても、釜を見れば他の遠距離攻撃をする人がその隙を突くし、無理に突破しようとしても近接が迎え撃つ。撤退は味方が後ろから詰めて来たら出来ない。まさに攻めに来た人にとって地獄の様な空間になるだろう
「「「「「うわぁ……」」」」」
「戦術えげつねぇ……」
「俺にバフが入ってたとしてもそんな空間行きたくねぇ……」
「行きたくないって思わせたらこっちが更に有利になりますからね。進軍速度が下がればこっちの敵を倒すのも楽になりますし」
気持ちの面で先に進みたくないとなれば、敵の進むスピードは下がり、スピードが下がれば城門に入ってくる人数が減る。そうなれば倒すペースの方がその内上回ってくるだろう
「うーん、あのロールプレイなら仇が来たら一刻も早く倒したいって感じだよな……城の中で待機はして無さそう……僕も近接の人達の後ろで回復させながら仇が来たら仇討ちするのが自然か?」
あの時決めたロールプレイの感じから最上階で待機するキャラかどうかと聞かれたらあんまりそんなイメージは湧かない。むしろ最優先で仇を潰して、満足した時に倒されるのが王道(?)展開かな?
「だけどそうするとやられる演技がめちゃめちゃ難しいんだよなぁ……」
最上階の部屋で戦うのならドクターの時のように窓から落ちて倒されましたって出来るけど、今回は見ている人数が凄い数になると思う。そんな中、本当に死なずに死んだフリをするのはかなり難しい。【身代わり】を使った入れ替わりも、今度は流石にバレてしまうかもしれない。どうやって死のうかな?




