恋バナ?
「ただいま戻りましたぁ、引き上げるの手伝ってください」
「お帰りなさい。それじゃあいきますよ?しっかり掴まってください」
城の裏手に垂らしておいた魔糸の所にチェルシーさんがやってきた。今ならポン君のパワーも相まって一気に引き上げる事が出来るだろう
「ほっ!」
「わおっ!」
「おっと」
糸を引っ張ってチェルシーさんを引き上げたが、流石ポン君パワー。逆にチェルシーさんが城壁よりも飛び上がるくらいまで一気に引き上げてしまった。なのでチェルシーさんをキャッチして空中で【ダブルジャンプ】を使って落下速度を軽減して城の敷地内に着地した
「指揮官?そうやって私を落とす魂胆ですか?」
「落とす?落とさないようにキャッチしたんですが?」
「……ダメだこりゃ」
「ん?」
カツオみたいに一本釣り方式で城の中に入れた方が良かったのだろうか?
「とりあえずこれで全員城に戻ったから魔王軍プレイヤーが全員集合しましたね」
「そうですね……ところで指揮官って恋愛とかした事あります?」
「何故今恋愛の話……?恋愛が誰かと付き合ったとかならした事は無いですね」
下手に隠す事でも無いだろうし、正直に言う
「普通そういうのってもう少し躊躇いとかありません?」
「無いものは無いですからね……とりあえず皆の所に行って残り時間をどう防衛するか話し合いとかしましょう」
「……はーい」
露骨にテンション下がってるけど……やっぱり恋バナ的な物の1つくらい用意しておかないと女性との会話って難しいんだろうか?うーん、でもこればっかりはなぁ……付き合ったらその人と結婚まで行く物だろうと思ってるからあんまりおいそれとそういう踏み込んだ関係になるのはどうかと思う。気に入らないから別れるとか簡単に決めちゃうのはちょっと……恋愛に関しての考え方が古いとは言われるけど、そう簡単に変えられる物では無い
「そうだ!指揮官?このイベント勝ったら私とデートでもしません?」
何言ってるんだこの人……
「遠慮しておきます」
経験が無いと言ったから揶揄ってるんだろう。もしくは何か裏がある
「即答……私そんなに魅力無いですか?」
「魅力云々じゃなくてこのイベントが終わったら色々見せちゃったし、間違いなく誰かしら僕の事探しに来ますよね?デートとか多分やったとしても面白くない結果になると思いますよ?」
「あぁ……それを言われたら確かに、私もそれ目的でデートに誘おうと思ってましたから」
「わぁ、やっぱり裏があったぁ……」
チェルシーさんの事だから絶対冗談か何かだと思ってたけど、やっぱり情報収集目的だったか
「まぁ勝つ負けるはまだ分からないので気は抜けませんが、デートのお誘いはまた別の方でも誘ってあげてください。ハスバさんとかダイコーンさんとか」
「とんでもない所をピックアップしないでください……」
見た目が凄いだけで中身は普通に良い人達なんだけどなぁ?
「とりあえず皆の所に行きましょうか」
ここでふざけているのも良いけど、チェルシーさんが帰ってきたので敵の位置情報はもう分からない。防衛の警戒度を上げなくては
「了解でーす」
チェルシーさんの配置はどうしようかな?
『ハチ君?上から見ていたが、チェルシーと何を話していたんだい?』
「えっ?ひえっ……」
メッセージが来たので上を見てみるとロザリーさんとアイリスさんがハイライトの死んだ瞳でこっちを見ていた。怖っ!
『誰かと付き合った事があるのか、とか情報収集したいからデートのお誘いとかでしたが……』
『これはチェルシーとお話しなければならないかもしれない案件……』
『誰とも付き合った事は無いし、デートのお誘いは断りましたよ?』
なんでこんな事を伝えなければならないのか……
『なんだ、それならそうと先に言ってくれ。全く……』
これもし言わなかったらどうしてたんだろう?
『皆そんなに他人の恋愛事情が気になるんですかね?とにかく、上から見てどうです?敵は接近してます?』
『それに関しては寄って来てはいると思うが、まだ遠いな』
『何か動きがあったら報告お願いしますね?』
城の上から見てもらう事で広い視野を確保出来るし、不意打ち関連はそうそう出来ないと思う。施設爆破に行く前の大切な仕事だ
『冗談はこの程度にしておいて……監視任務は任された。下の方は頼む』
『強固な守りにする為に頑張りますよ』
バリスタとかカタパルトに割く人員の調整。魔法や遠距離攻撃が出来る人がどのくらい居るのかの確認も急務だろう。急いでどのくらい出来るかを聞いて回らないと……悪いが、今すぐに恋バナのネタを作れる余裕は無い
「すいませーん!魔法攻撃出来るとか射撃系の遠距離攻撃、とにかく離れた相手に攻撃可能な人ってどのくらい居ます?配置を考える為の参考にしたいので持っているかどうかで良いので教えてください。持ってたら手を挙げるとかで良いので」
自分のスキルとか魔法を隠したい人も居るだろうから、持っているのかどうかだけ聞く
「ほぼ全員何かしらの物は持ってるんですね?これなら城に敵が取り付いたとしても全員対応出来そうですね」
見える範囲に居た人の9割は手を挙げる。遠距離攻撃手段を自前で持っていれば、城に取り付いた敵に対してバリスタとかが使えなくても敵を倒す手段を全員が持っている事になる。こうなれば誰が何処に配置されても全員がフルスペックで戦えるな?いやぁ、特化しているのも良いけど汎用性がある人いっぱいで助かるなぁ?