リーダーとして
「捕らえられている所がどうしても見られたくないなら自殺して捕らえられている事実を消してしまえば良いよなぁ?」
「ジェイドさんが捕まっているなんて所見たらそれこそ士気に関わるよなぁ?」
「敵にやられたって言えば何も問題無いよなぁ?」
言い訳を用意して自殺への抵抗感を減らす。3人とも口調を合わせて、少しムカつく様に言うが、言っている事は間違いでは無いから反抗するのも少しおかしいとジェイドさんも感じているだろう
「まぁどっちにしろここにはもう居られないから行きますよ」
「これ以上ここに居たらお祈りから帰ってきたあの人に俺達も折檻されちまう」
「死ぬ死なない問題より、まずは捕まったんだからこっちの言うとおりに動いてもらいますよ?」
「ああ……」
ほとんど捕虜状態になったジェイドさんは特に抵抗無く運ばれる。これならとりあえず牢屋まではすんなり行けそうだ
「魔王様に外に出るなと申しつけられたので復讐する為には迎え撃つしかありませんね……あら?お話は済みましたか?」
勇者軍の確かジェイドさんを連れた3人が出てきたのでタイミングを見計らって偶然遭遇した風を装う。ついでに城からは出ないよと情報も流しておく
「今から牢屋にぶち込むところです」
「捕まるのが嫌ならと自決をオススメしていた所です」
「恥も外聞も無いのなら捕虜でどうぞと」
「み、身も蓋も無い……」
言われたい放題でジェイドさんもちょっと困り顔だ
「そうですか。自死の恐怖が判断を鈍らせているのでしょう。そうですね……死ぬ事が全く怖くないとは言いません。ですが、貴方達は死んでも蘇るのでしょう?私の復讐したい相手を例え肉塊にしようが、消し炭にしようが、溶解しようが、塵にしたとしても直ぐに五体満足で復活する。そんな存在が何故、死を恐れているのですか?」
もちろん現実じゃないから死んでも良いとは言わない。だが、仲間を想うのであれば今ここで捕らわれているよりも死んででも戻って部隊を再編して攻め直すのが一番だろう。今ならトラップだってほとんど再設置し直す時間も無いので城の守りはスカスカ。今ここに残っている勇者軍はジェイドさんただ一人であるのなら人質として使われないようにさっさと自決するべきだろう。逃げ出せるのなら話は別だけどね?あとついでに復讐にご執心だと思わせる為にどんな倒し方でも良いと言わんばかりのラインナップを上げる。僕が言っている最中にジェイドさんとジェイドさんの移送していた3人の顔が引き攣っていた。やり過ぎかな?
「あなたに逆に聞きたい。どうして復活する相手に復讐をしようとするんだ?」
復讐をしたとしても復讐した相手は復活するのなら復讐は意味が無いんじゃないか?という話だろう
「私の大事な人が倒されて、倒した人物がそのまま生きているという事が許せないのです。彼が万全であれば倒される訳が無い。怪我か病にでも侵されてなければやられてしまう訳が無いんです。そんな状況でトドメを刺してきた人物にはお返しが必要でしょう?そのせいで復讐の連鎖が始まってしまおうとも、彼の名誉を守る為に私は復讐しなければならないのです」
戦死者の名誉の為に戦う。そんな理由があれば例え復活する相手だとしても倒しに行くというのは筋が通っていると思う
「その相手が何度も復活するのであれば私は何度も復讐する事が出来ます。むしろ何度でも、何度でも、何度でも復活して向かって来てくれる心意気を持っている人だと良いんですけどね?」
あの人、とりあえず出来たチャンスに剣を持って突っ込んできたって感じだったからそこまで何回も向かってくる気力を持ち合わせている人物か?と言われたら違う気がする
「そこまで何度も立ち向かえる奴は正真正銘の勇者って奴だろう。俺は……勇者じゃない」
要するにジェイドさんは何回も死にたくはないって事なんだろう。まぁ僕も何度も死ぬのは嫌だけど……
「勇気が無いのであれば余計に早く戻る事をオススメします。時間が掛かれば掛かる程、決心は揺らいで死ねなくなり、最終的には牢屋の中のみじめな貴方が勇者軍に見つけられるだけです」
脅しとしてはこのくらいだろうか?
「……俺を解放して勇者軍に帰らせてもらえたりはしないか?」
おっと、思いっきり弱音出て来ちゃったよ?
「何か差し出せる物でもあるのでしょうか?」
まぁ交渉するなら何かあるのか聞いてみよう
「……ない。だが、君が探している奴は絶対に戦場に連れてくる事は出来ると思う」
「絶対に来させないでは無く?」
ジェイドさんの両サイドに居た2人はジェイドさんの首筋にナイフを突きつける。嘘を言ったら切るぞ?みたいな雰囲気だ
「その復讐心が分からない程、俺も馬鹿では無い。1度だけなら連れて来る事は出来るだろう」
勇者軍のリーダー格だからこそ、そのくらいなら出来たとしても不思議ではない。まぁ全軍で攻めに来て連れてきたっていうのも間違いじゃないから、連れて来るのが出来なくないというのは嘘ではないだろう
「だが約束してくれ。その男を1度倒したらそれ以上執拗に狙わないでやってくれ。復讐として倒すのは1度だけ。それ以降は侵略してくる脅威を排除する為として……」
「1度だけのチャンスに復讐の全てを込めて。それ以降はただの有象無象と同じ扱いにしろ。という事ですね?」
まぁ怪しまれずにやるならそのくらいが落としどころになるんだろうか?
「情けない事を言っているのは分かっている。自分を犠牲に出来ないリーダーに人がついて来ない事も分かっている。だが、今四天王を倒してある程度纏まっている勇者軍をこれ以上バラバラにしない為には今ここで捕虜になる訳にはいかない」
リーダーとして、苦しい決断をしているのだろう。こっちと違って何千人と纏めているんだから完全に損害を抑える事はほぼ不可能。なら、どれだけ被害を最小にするか。それを決めるのがリーダーだろう。そしてリーダーが敵に捕らえられた場合。残った集団はすぐにバラバラになってしまうのは明白……
「良いでしょう。貴方を解放して仇がやってくる可能性が高くなるのなら私の権限で貴方を解放しましょう」
今洩らしたジェイドさんの本音を使って勇者軍に揺さぶりを掛けても良いが、それは同じ纏め役として僕より苦労しているだろうし、情けを掛けるとしよう。まぁ本音は勇者軍の所まで帰る時間を城のトラップ再設置の時間に充てようかなといった所だけど