アストレイ・オブ・アームズ
『武器スキル 【リインフォース】 を習得』
『【リインフォース】 消費MP2(継続) 体に魔力を纏い、身体能力、防御力、攻撃力が上昇する』
特に数値がある訳でも無く、説明もふわっとしている。とりあえず使ってみよう
「【リインフォース】……おぉ、これは確かにふわっとした説明にもなるか……」
ジャンプすると2、3mくらい垂直にジャンプ出来た。自分の身体能力が上がった事が凄く分かる
「ハチ、斬ってみろ!」
アトラさんの声が聞こえたと思ったら僕に向かって僕と同じくらいのサイズの丸太が飛んできていた
「アトラさん。いきなりは危ないですよ?」
いきなり丸太を投げつけられたみたいだけど半身で丸太を避け、僕の前で丸太を上から叩き、地面に落とすつもりだったのが、丸太がバラバラになった
「うっそ……叩き落とすだけのつもりだったのに」
「だから言っただろ?斬ってみろと。ほれ!」
またアトラさんから丸太を投げつけられる。今度は手刀を丸太に対して縦に打つ
「これ本当に僕がやったのか……よし」
綺麗な断面の丸太が僕の後ろに落ちる。これならもう一つ試したい
「ふっ!」
割れた丸太に貫き手を打ち込む。見事に手が丸太を貫通した。突き指がちょっと怖かったけど特に指が痛いという事は無いからこれは確実にリインフォースの力だと思う
「すっげーな?剣も無しにそんな事も出来るのか!」
「ハチよ。これは弾けるか?」
ワリアさんが褒めてくれたと思った直後にヴァイア様が今度は小さな水の球をかなりのスピードで飛ばしてきた。もしかして皆意外とスパルタ?
「もう少し優しくしてくれないですかね?」
飛んで来た水の球に対して腕を払いのける様に動かすと水の球が腕を滑る様に逸れた
「おい、ハチ?わざとか?」
「あ、ごめんアトラさん。やっぱ【受け流し】って受け流したからって攻撃の判定が無くなるって訳じゃ無いのね」
「くくくっ……まぁこれで今までの事を許してやるんだから良いじゃないか?なぁハチ?」
「わざとじゃ無いんだ。ただ向きが悪かっただけで……ごめんね?」
顔面に僕の受け流した水の球がぶち当たったアトラさんに謝る。さっき自分でアトラさんに謝らせたんだから自分も悪い事をしたなら謝るべきだよね
「まぁ良い。無事に成功したと分かったからな。見た所人間に紋章を付けようとすると狂気や狂暴化に陥る様だが……ハチは耐性というか無効化があったお陰で無事に紋章が装備出来たみたいだな?」
無効化……多分【豪胆無比】の事かな?精神系状態異常が無効化されるとか書いてた気がするけどそれのお陰で僕はこのアストレイ・オブ・アームズを装備出来たのか
「もしかしてさっきのって僕を試してた?」
「さて、何の事だかな?」
さっきの僕に対して明らかにいつものアトラさんでは考えられない過剰な怒り方だったと思ったから聞いてみたけどはぐらかされてしまった
「ハチ!」
こっちにやってきた姫様が僕に向かってダイブしてきた。受け止めようと思ったけどリインフォースしたままだと危ないかな?と思い、スローな世界でリインフォースを解除する
「良かった……本当に良かった」
「心配かけてゴメンね?でも皆と姫様のお陰で僕強くなれたよ?」
この力は僕だけの力じゃなく、ここに居る皆の力が集まって出来た力だ。ゲームだからと好き勝手に暴れるのも良いかもしれないけどここに居る皆と会話しているとゲームだからと言えないくらいリアリティがある。こんな皆から貰った力を人に迷惑を掛ける方向では使わない様にしようと僕の中で決めた
「今日は皆ありがとう。皆のお陰で僕はこれからも頑張れるよ。あと皆に伝えたい事があるんだ」
ごそごそとインベントリに入っている無垢なる人形のパーツを全て出す
「僕、この人形の修復が終わればこの村から出て冒険に行こうと思うんだ」
「「「「「……」」」」」
その言葉を告げると静寂に包まれる。色んな思いが籠っているこの静寂に僕は耐えきれず、村の僕がいつも使っている家に走って向かい、ログアウトした
「ゲームだとしても、ああいうのは慣れないな……」
沈黙が周囲を包む中、皆が僕に注目していた……あれは正直良い気分じゃないな……
「ちょっと勉強とかご飯とかしよう」
こんな気分のまままたあの場所には戻りたくない。でもアルターでは遊びたい……だから今は気分転換をしよう
「ふぅ、さっぱりした」
現実でも夜になっていたのでご飯やお風呂、勉強に体操に肌ケアなどやるべき事を済ませる。自然にヘッドギアを被ったけど、若干アルターに入る事に躊躇いが出た。が、僕には相談事が出来る存在がアルターに居る事を思い出した
プレイヤーに不評だったせいで直接会うのに一手間掛かる様になってしまったが、僕がアルターで初めて出来た友人(?)に会いに行こう
「リンクスタート。プラクティス」
「オーブさん」
「おや?ハチ様。いらっしゃいませ」
ふわふわ浮いていたオーブさんが僕を見つけると今度は僕の周りをふわふわし始めた
「何か練習をなさりたいんですか?」
「会話の練習というかなんというか……人生相談みたいな?」
「はぁ……まぁ、ゆっくりお話を聞きましょう」
オーブさんに人生相談に乗ってもらう事にした