第四の四天王
「指揮官って石仮面でも着けて吸血鬼にでもなってんの?」
「遺伝子操作された蜘蛛に噛まれて蜘蛛人間になってんじゃね?」
壁を歩いた事で驚かれるのはほぼいつもの事なのでもう慣れっこだ。でも石仮面を着けて吸血鬼になってるって、それ壁に足食い込ませて歩く奴だよね?流石にそんな事は出来ないな……STRどのくらいあればそんな芸当出来るんだろう?
「で、どっちですか?」
「えっあっ、もう少し右、あ、俺から見てだから指揮官から見て左に……はいオッケー!」
僕は逆さまの状態でバナーを調整していたので、指示が左右逆になってた。荷物運びとかでお互いに向き合ってる時に右に行くとかの指示が出た時に自分から見てなのか、相手から見てなのかみたいなアレだ
「オーライ、オーライ、はいオッケー!」
「トラックの誘導じゃないんですけど……でもこれで終わりかな?」
結局真っ直ぐにする為にどっちに傾けたら良いのかを手招きで誘導してもらった結果、トラックのバック誘導みたいになっていた
「何だか学園祭とかイベントの準備してるみたいだなぁ……懐かしい」
指示してくれている人ではないもう一人の人が学園祭の準備みたいと言って懐かしんでいた。まぁ中学の時の文化祭の準備とか結構大変だったなぁ……高校のはどうなるんだろう?
「学園祭……学園祭?驚愕!怨嗟!災難!って感じで愕怨災とか?」
「「うわぁ……」」
中々良い感じだと思ったけど、言ってる事がほとんど夜露死苦と変わりないかもしれない
「おや?このバナーは……」
「あっ、ドクター!どうですこのバナー?地下への入り口を隠すというか、敵を誘導するのにこの印なんですけど……贔屓目無しでの感想お願いします」
他の所でトラップを仕掛けていたのかそれとも何か別の作業をしていたのか、ドクターが通りかかった。せっかくだし評価してもらおう。バナーの4つの内、3つに×印。トラップだらけの城内。そしてまだ姿を晒していない四天王と一応隠している地下への入り口。この要素を見た時に思う感想は……
「これは最後の四天王を倒せば先に進めると内情を知らなければそう思いますね?これは指揮官のアイデアで?」
「はい、扉をガチガチに固めても良いかなとは思ったんですけど、敵がその場合封鎖された所を破壊して直接流れ込んでしまう可能性を考えて、入口をこのバナーで隠して、後1体倒せば先に進めると思わせる事が出来るかなって」
「良いですねぇ?ゲーマーの心理を突いた良いトラップです。ところで!その壁を歩いているのはスキルですか?魔法ですか?それとも薬系アイテムの効果ですか!?」
バナーはドクター的にもオッケーみたいだ。それよりも僕が壁を歩いているのが気になったらしい。なんだかすごい期待されているのか眼鏡をクイッとしてバナーの近くまで来ているけど……多分期待している答えは出せないなぁ
「これはスキルの効果です。残念ながら薬の効果じゃないですね……」
明らかに最後の薬系アイテムって聞いた時に声も大きくなっていたし、目も輝かせていた。まぁ薬で壁歩きが出来るようになったらそりゃあそんな薬は欲しいよね
「そうですかぁ……」
残念がっているドクターだが、ドクターが来たことで1つ計画が思い浮かんだ
「あのドクター?」
「はい、なんでしょう?」
「ドクター、四天王役やってみません?」
「えぇっ!?」
白衣のドクターは四天王として映えると思う。まぁ戦闘が出来なくてもやり方はある
「戦闘に自信はあんまりない感じですか?」
「流石に城に攻め込んでくるレベルの人達相手だと戦えるとは思えませんね……」
まぁ毒とか酸とか投げて戦うらしいし、苦手かなとは思っていた。もしかしたらなにか奥の手はあるかもしれないけど……
「じゃあ僕がドクターに洗脳された風で演技しますからドクターは後ろで高笑いするくらいで良いですよ?」
「……面白い。それはとても面白そうです!それなら是非やらせてください」
「「おぉ……」」
まだ4人目を見せていないからこそ出来るメンバーチェンジ。まぁ、やろうと思えばそこからチェンジし直す事も出来るかな?
「それならこういう感じで……」
「なるほど、じゃあ……私は」
小声でドクターと打ち合わせをする。どういう立ち回りをするか、どう演技するかを今の内に決めておけばそれなりに形にはなると思う
「あのトラップで……」
「……じゃあこのタイミングで……解除」
「それなら僕は……しますから」
「後ろで高笑い……」
「そのタイミングで……倒します」
指揮官とドクターの会話が少しだけ聞こえてくる
「なぁ?今すっげぇ恐ろしい事聞こえたんだけど?」
「すげぇ、まだ騙す気だよ俺らの指揮官様……」
「騙す計画もすげぇけど、それを成立させる指揮官の演技力がヤバいよな?」
「あの演技力……どっかの劇団員かな?」
「それありそうだなぁ……」
ハチ君が何処かの劇団員かと勘違いされている間もドクターとの会話は続いていた
「「へへっ……」」
「「ひえっ」」
そして会話を聞いていた人達は会話が終わった後に指揮官とドクターが二人そろって悪い顔で笑っている所を見て、味方で良かったぁと思っていた