活動規制
『とりあえずすぐに戻ります。他に何か変化があった場合はすぐに連絡してください』
バルミュラ様に何かあったみたいだ。コソコソしていたら間に合わないかもしれないし、早く戻らないと……
『了解です』
「この状況なら白ローブで移動しても大丈夫かな?」
見つかっても出て行った部下を追いかけて来たけど、やられてしまった事を知って帰還中くらいに思ってくれるだろうか?
「とりあえず早く帰らなきゃ……」
隠れやすい地形とか選んでいる場合じゃない。とにかく一直線に、紫電ボードとベルトパワーのどっちが現状速いかな……まぁ地形に合わせて移動法を変えれば良いか。走りやすい平地はゴキブリダッシュ、樹上や岩場はバッタジャンプ。悪路は紫電ボードで移動すれば一番最速で移動出来るかな?城に辿り着いた時にはお腹もMPも大変な事になってそうだけど……
「これ、まさかとは思うけど、僕を出来るだけ動けないようにしてる……?」
運営が僕の行動を制限する為に城から離れるとバルミュラ様の体調が悪くなる可能性もあるな……まぁそれならそれで多分僕が城に戻ればバルミュラ様の体調は良くなると思うし、何とかなると思うけど、流石にバルミュラ様が死んだりはしないよね?
「イベントが終わったらオーブさん辺りにコッソリ聞いてみようかな?」
答えてくれるかは別として、一回聞いてみたい。終わったイベントだったらネタバラシとかしてくれないかな?
「あの軍人は倒せたし、とりあえず敵の城に向かってみるか!」
「よーし!このまま四天王最後の一人と魔王を倒すぞ!」
「あぁ!やってやろうぜ!」
前方に敵集団が居るけど迂回する時間も惜しい。突っ切ろう
「邪魔です。あなた達には勿体無いくらいですが、今は時間が無いので」
「なっ!?」
「後ろからっ!?」
一日一回だけだと意識させる為にも急いでいるから仕方なく使っていると思わせるように僕の影からゲヘちゃんパンチを繰り出す。敵集団のど真ん中で割るようにゲヘちゃんの右ストレートを叩き込み、ゲヘちゃんの腕の上を走って城の方に向かって進む。これで敵を倒しながら足を止めずに城に向かえる
「では」
走り去る前に一言だけ声を掛ける
「な、なんだよいったい……」
「さっきの……魔王じゃないか?」
「じゃああれが例の限定技か?ヤバ過ぎんだろ……」
おぉ、限定技だって!ちゃんと騙せてるみたいだな?
強化された聴力で走っている最中でも聞き取れた。まぁ聴力を常時強化していたらあの歌の奴らとか来た時に楽器で耳がやられるかもしれないし、あんまり強化はしたくないけどこういう一瞬での情報収集には向いてるかもしれない。でもやっぱりそうそう使う事も無いな?
「バルミュラ様!ご無事ですか!」
「あぁ、ハチか……なに、ちょっとした事だ」
ちょっとした事で体が紫色に光ったりはしない。一応玉座には座ってはいるものの、いつ前のめりに倒れるかも分からない。ご飯を食べていた時はあんなに元気だったのに急に何が起こったのだろう?
「進化が始まっただけだ」
「進化……ですか?」
「あぁ、魔王から世界の管理者にな……だから心配するな」
魔王から進化するって、現状から見るに進化中ほとんど動けないって状況かな?だとしたら魔王様は完全に場内戦闘時に頭数に入れない方が良いか
「バルミュラ様、失礼します」
「な、何を?」
背中と膝の裏に腕を通し、持ち上げる
「このままここに居るのはあまりよろしくないかと、お食事の時に決めた今後の作戦にも影響が出てしまうので一度横になってお休みください」
「そうか、そうだな。それではここは頼んだぞ?魔王よ」
軽く笑っているけどそれよりもナチュラルにバルミュラ様まで僕の事を魔王って呼ぶのか?
「あまりその呼ばれ方に馴れていないので何と答えるべきか分かりませんが、任されました。進化が完了するまで敵にはバルミュラ様に指一本触れさせません。なので安心して進化してください」
そもそも認識すらされていない。仮に運営の想定しているシナリオが有ったとしてもそこからは大きく外れている気はするし、このまま最後まで行けたら結末がどうなるか凄く気になる。一応想定されているだろう勇者軍が勝てば、バルミュラ様は倒されて世界は平和に……とか何とか言うんだろうけど、バルミュラ様は争いその物を無くす為に世界の管理者になるつもりなのだからどっちの結末が見たいかと言えば断然バルミュラ様の方だ
「あぁ、ハチが居るととても安心出来る。しっかり進化して世界を、生命を導いてみせようとも」
勇者軍は人類のグッドエンドを、魔王軍は生命全体のグッドエンドを目指してる。完全に規模が違うね?
「明日はバルミュラ様にゲヘナマキアの居た部屋に居ていただけると私も安心して戦闘が出来ます。最初は味方を守る為に玉座の間から離れますが、やられたフリが終わればすぐに玉座の間に戻ってきますので、バルミュラ様の近くには居ます」
僕が居ると安心出来ると言われたらつまり僕が離れると安心出来ないって言っている様な物だ。なら今からは城の中で出来る事をやろう




