食べてしまった過去
「まぁ、あと1日持てば良いから食料調達もそこまで派手じゃ無いだろうけど、夜襲を仕掛ける事すら出来ないって相当追い込まれてるな……」
チェルシーさんも芋とか野草程度しかないと言っていたし、どれだけ食料が残っていないんだろう……
「まぁ流石に何千人もの相手に食料を振舞うなんて出来ないし、する気も無いからご愁傷様と言うしか無いか」
ちゃんと役割分担をしておけば食糧難なんて起きるはずがない。あれがやりたい、これがやりたくないと言っていればその内崩壊してしまうのは当たり前の事だ。人数の多過ぎは纏め切れなくて1つの纏まりでは無く、複数の集合体を無理矢理くっつけただけのハリボテの存在になってしまう。にもかかわらず、皆等しくお腹は減るから残っている食料を食べた所で補充が無ければ……うん、向こうじゃ無くて良かった
「今日の昼くらいまでは多分襲撃は無いかな?日数的にもバリアで守られている所の修復と最後に向けての食料調達で時間は取られるだろうけど……」
食料調達とこっちから手を出せない所の修復をするのが向こうが勝つ為に必要な事だろう。まぁ流石に皆を動員してそれを阻止しろというのはしなくても良いと思う
『そういえば今朝方、街に羽根が片方しかない天使?が帰って来たんですけど……これやったのはもちろん指揮官ですよね?』
『あぁ……可哀想な事をしました。泣き止まなければもう片方の羽根も引き千切るって脅しちゃったんですよね……』
流石にあれはやり過ぎだったかな?
『ひえぇ……』
『まさに鬼軍曹!』
『天使の羽根を引き千切るとかもうね?』
『天使も泣き出す恐ろしさがあるのに味方には天使の様な施しよ?』
『3枚引いて2枚捨てるレベルじゃねーぞ?』
『というかあの天使がほぼ無効化されてるから敵の空からの攻撃をほとんど考えなくて良くなったのがありがたい。あの天使は空から大剣で斬りかかってくるから相手にするの嫌だったんだよね』
『ほぼ地下で戦ったから飛ぶ事も無かったですね?』
こっちに向かって飛んで来るのは羽根を使ったと言うのかちょっと怪しい所なので飛んでないって事で良いだろう
『そういえば天使は何か言ってました?』
何か言っていたのかだけ知りたい
『「私が……信じるべきは」とかブツブツ言ってましたね』
『いったい何をしたんですかねぇ?』
『神の力を借りようとするよりもまずは自分を鍛えろと言っただけなんですけどね?』
強大な力なのは分かるけど、地力が伴ってないと借りた所で使いこなせないだろうし、アドバイスしただけなんだけど……
『天使相手にそんなアドバイスが出来るのが凄い……』
『普通に覚醒みたいな物を使う相手にお説教が出来る軍人とか完全に強キャラ感出てますわぁ』
強キャラ感出す為にやったところもあるから、見てない人でもそう言ってくれるって事はあの天使にも中々の精神ダメージを負わせる事が出来たと思う
『まだ敵が来ないなら指揮官は少し休んでください。徹夜で看病してたんですよね?』
『私達は交代で寝てるけど、指揮官は寝ずに色々やってたんでしょ?』
『もう休憩は終わったんで大丈夫ですよ。でも救援に行かなくても大丈夫そうならやりたい事をやらせてもらいますね?』
パフェを所望するチェルシーさんとフルコースを約束したバルミュラ様の為にも料理を作らねば……
『どうぞどうぞ!』
『どうぞどうぞ!』
『今日くらいは指揮官をお休みしてくれても良いぞ?』
『じゃあ今日は料理を作らせてもらいます。バルミュラ様に昼にフルコースを作る約束をしているので、それの下拵えとかをやらせてもらいます』
『昼飯がフルコースって……食べる方もヤバいけど、作れる指揮官もすげぇな?』
『食料の余裕が無いと絶対に言えない事だ……勇者軍じゃ絶対無理だな』
『芋と野草じゃなぁ……ホフマンさんでも辛いだろ?』
『ホフマンさんも何とか美味しい料理を作ろうとしてましたけど、流石に厳しそうでしたね。食材が少ないのに食べる人数が多いですから』
『その情報、ホフマンさんへの不満でした?それとも同情でした?』
一応フレンドであるホフマンさんに不当なやつ当たりとかされて無ければ良いんだけど……
『基本的には同情ですね。これだけしかない食材でなんとか色々作ってるんですから感謝されながら料理を作ってました』
『それなら良かった。僕も心置きなく敵主力に対して精神攻撃を仕掛けられます』
『え?』
『え?』
『え?何をするつもりで?』
『そんなカツカツな状況にも関わらず、敵の主力メンバー50人は僕が用意した料理を全員食べました。その50人だけ、他の人に内緒で』
『うわぁ……食べ物の恨みは大きいぞぉ?』
『食べた!?この(戦闘)中の中で?』
『やる事がえげつない。でも、ついて行きます』
他の人達は節制した食事をしている中、敵からご飯を貰って食べたという事実はもう消えない。この情報を沢山の人が見ている中でバラしたら、50人は背後にも気を付けなければならないだろう。あそこで断っていれば「俺の酒が飲めねぇのか!」レベルの逆切れで殲滅。食べたら食べたで「こいつ等皆に黙って敵に恵んでもらってましたよ?」ってバラされる。あの50人には常に背中から刺されるかもしれないというプレッシャーを感じてもらおう