焼き討ちの効き目
「美味いスープだった。感謝するぞハチ」
「いえいえ、お口にあったようで良かったです。それでは私も朝食を頂きますのでこれで」
オニオンスープの方がパンよりも先に無くなっていたから口にあったのは本当だと思う。これで心置きなく僕も朝食を食べる事が出来る……
「今日の昼も頼めるか?」
「……約束は出来ませんが、努力はします。まずは看病していた間に戦況がどうなったか確認しなければなりませんので……危険な状態であれば救援に行きますが、皆がしっかり防衛していれば私も昼食を作る余裕も出来ますからその時は昼食を作ります。何かリクエストはありますか?」
まだ確認して無いけど、皆を信じて昼食のリクエストを聞こう。何となくだけどこういう約束があれば僕ももっと頑張れるかもしれない。約束は時に身を縛る鎖になるけど、自分を励まして生き残る為の命綱にだってなる
「そうだな、うどんは美味かったが出来ればもっと食べ応えのある物が良い」
「食欲が出てきたのは素晴らしい事です。素材があればフルコースでも作りましょうか?」
「ほう?それは楽しみだな?」
「では行ってきますので、ゆっくりお休みください」
不敵に笑うバルミュラ様。えーっとちょっと待てよ?フルコースの順番ってどうだっけ?前に父さんと母さんに連れて行ってもらったフランス料理のフルコースを食べた順番を思い出せ……前菜、スープ、サラダ、肉料理、魚料理……逆か。魚から肉だっけ?いやいや、確かその間になんかアイスみたいな物があったな?ソ……ソ何とか……あっ!ソルベだ。口直しで出てくる奴があって、そこから肉料理、デザート、コーヒーの順番だ!言ったは良いけど全部作り切る事が出来るんだろうか?
「あぁ、ゆっくり待たせてもらおう」
一応昼食を作る約束をしてバルミュラ様の所から離れてメッセージを飛ばす
『偵8から全体へ、魔王様の容態が安定したので今から戦線復帰出来ます。現状を教えてください』
どのくらいやられたのだろうか?夜の間は人数差がかなり開いているだろうから結構やられたとしても不思議では無い。若干憂鬱だが、被害状況を聞こう
『今の所激しい攻撃などは来ていない。夜襲は無かったぞ?』
『こっちも来てない』
『来てませんね』
『おっ魔王様の帰還や!夜襲は来てないぞ』
『どうやらそれどころではないみたいですね。食料が尽きて残り2日をご飯無しで行くのは無理と判断して素直に食料調達してますね。私も食料が心許無くて失敬してるので食料事情が壊滅的なのは分かりますが……最初のアレが効いたみたいですね?』
最初のアレ……僕の焼き討ちの事を言っているんだろうか?まぁ懐の基地に食料を備蓄して、そこから配っていくとかもあるだろうから鉱石資源だけじゃなく、初期の備蓄食料も吹っ飛ばした可能性がある。それなら確実に補充する必要は出てくるから最低限バリアが張れたから今食料を補給するのは必須なのかもしれない。最初にドバっと、その後もコツコツ食料を集めてくれたお陰でこっちは余裕がある。やっぱり大人数だと食料調達が大変そうだな……
『敵本陣にあった小麦畑も時限制だったのか突然しなびてしまってこれ以上パンが作れないとかなので本格的にこっちと戦うよりも飢えとの戦いになりそうです。それよりももう私は帰りますよ!?何ですか!ピザって!カレーって!そんなの私だって食べたいに決まってるじゃないですか!』
どうやらチェルシーさんも勇者軍の内部を探っていたは良いが、食料も切れた所で皆が色々注文していたメッセージを見て帰りたいとなったらしい。流石に一人で敵の情報収集している中で、この情報が来たら可哀想な事この上ないか
『情報収集お疲れ様です。これ以上はそっちに滞在するのは厳しいと思うので、帰ってきてください。何か食べたい物があれば作りますか?』
『それならパフェでも食べたいですね?』
パフェ?滅茶滅茶難しいんですが……でもしっかり作れればバルミュラ様に出す分にも使えそうだな?
『努力します』
とりあえずミルクとかあったし、生クリームは厳しいかもしれないけど冷やしてアイスにしてそれっぽくしたら許してくれないかなぁ……
『マジですか!こっちは芋とか野草とかばっかりだったのですぐに帰ります!』
うわぁ、それは嫌だな……まさに戦時中って感じだ。むしろこっちが優雅過ぎると言っても過言じゃ無い
『とりあえず危なくないという事ならチェルシーさんの労いの為にも料理しても良いですか?』
『チェルシーが敵の情報を収集してくれたお陰で人数配分などで色々助かったからそのくらいの報酬はあって良いと思うんだが……私達も色々食べたのにチェルシーだけ何も無しは可哀想じゃないか?』
『異議無し!』
『勇者軍ってそんな逼迫してるんだなぁ……』
『それに比べてこっちは米が喰えてるんだぜ?ありがてぇ……ありがてぇ』
『初めての米。美味しゅうございました』
『指揮官に感謝を』
『俺、イベントが終わったら指揮官ロスでヤバい事になるかも……』
『あ』
『あ』
『あ』
『そっか、イベントが終わったら指揮官ともお別れか……』
『あの、僕もプレイヤーなんで普通にプレイしていたら何処かで会いますよ』
『君はいつも普通の所に居ないじゃないか……』
やめてくれ、その言葉は僕に効く