徹夜明けスープ
「んん……朝か?」
「あぁ、バルミュラ様……おはようございます。お加減いかがでしょうか……ふわぁ、あっ申し訳ありません」
朝まで付きっ切りで【ライフシェア】をしていたお陰かバルミュラ様の顔色もかなり良い。油断してちょっと欠伸が出てしまった
「ハチ、いったい何をしたのだ?体調はとても良いが……」
「それならば良かったです……今から朝食をご用意します……」
HPが【ライフシェア】で減ったら、【コンバートマジック】でMPをHPに変換して、また【ライフシェア】でバルミュラ様を回復。HPとMPの両方が少なくなったら【聖女の祈り】で回復して、また【ライフシェア】のループ。これを徹夜で繰り返したからMPが少なくなった時の頭痛とかダルさが何回も起きて正直かなりキツイ。今すぐにでも寝たいけど、先に朝ごはんを用意してバルミュラ様が完全な状態にした方が良いだろう
「待て、ハチ。我に何をしたか言っていないが、ハチが寝ずに看病してくれた事は分かる。先に休め」
「……ではバルミュラ様が朝食を食べてくれたらお休みさせてもらいます」
「分かった。ならば簡単な物を早く用意してくれ。そしてハチは休め」
僕を休ませるために言っていると思うけど……食材何かあったかな?
「ハチ、大丈夫か?フラフラじゃないか」
「「……」」
黒武と白武が僕の両肩を持ってくれたので倒れる事は無いけど、これからバルミュラ様の朝食を作らなければならない。簡単な物と言っても流石にサンドイッチとかは簡単過ぎて良くないと思うからせめて暖かい物は作りたい
「ご飯作らないといけないからね。そうだ、鍋に火に掛けたら焦げないように混ぜるとかしてもらえる?それなら僕その間休めるから」
スープとかを調理するなら火に掛けている間は黒武でも白武でもウカタマでも任せる事が出来る。その間に自分に【レスト】をかければ多少は体調も良くなるはずだ
「そのくらいならば任せろ!やってやる!」
やる気があるウカタマに混ぜるのはやってもらおう
「じゃあウカタマにスープの完成は任せたよ?じゃあタマネギを……」
タマネギを切ろうと包丁を取り出そうとしたら、まな板の上に置かれたタマネギが横からシュッと目にも止まらぬ速さで伸びた槍がタマネギをバラバラにした。僕の代わりに具材を切ってくれたのか
「マジか。じゃあこのベーコンとかも……わおっ」
ベーコンもまな板に置いたらバラバラになった。どんな槍捌きをしたらこんなバラバラに出来るのだろうか?
「これだけ切ってくれればすぐにスープが作れるよ。ちょっと待ってて」
タマネギとベーコンがあればオニオンスープが作れる。これとパンを合わせるのであれば朝食としても充分出して問題無いと思う。サンドイッチよりは手が込んでいるはずだ
「よし!これで……おとと、じゃあウカタマ。焦げないように頼むよ」
「任された!」
徹夜明けの疲労にMP減少の頭痛が重なって足元が若干おぼつかなかった。左右から支えてくれるからコケる事は無かったけど、あとは火に掛けるだけの所まで進めた。残りはウカタマに任せて自分の回復をしよう
「じゃあおやすみ【レスト】」
自分に【レスト】を掛けて眠る。せめて頭痛だけでも良くなれば良いけど……
「おはようございます!お腹減ったぁ……」
徹夜で色々やったからか、空腹度がかなり減っていた。結構【ライフシェア】で集中していたからお腹が減っていた事に気が付かなかった。これが良くなかったか……一応少し多めに作ったからバルミュラ様に朝食を出したら僕も食べよう。そうだよなぁ……寝なくても良いって事は寝て空腹度の減少を温存する事が出来ないから通常の人よりもお腹が減りやすいと考えるべきだろう。それなのに特に食べないでずっと回復させていたのだから消耗が激しいのも納得だ
「全く、自分の体を一番大事にするべきだぞ?」
「まぁそうなんだけど、あの人が死んじゃうと僕達全員が負けるから今だけは僕の命より、あの人の命の方が大事なんだよ。とりあえずウカタマ達はここで待っててくれる?」
「早く帰って来ないと美味そうだから食べてしまうぞ?」
「「……」」
「おう、待て待て?ただの冗談だ。だから槍をこっちに向けるな?」
ウカタマが冗談を言ったら黒武と白武が槍を向けた。言って良い冗談と悪い冗談の線引きは人それぞれだから黒武と白武には今言ったらダメな部類の冗談だったんだろう
「二人とも?ウカタマがつまみ食いしたらおしおきして良いから僕の分のご飯を守ってね?」
「「……」」
片膝を突いて、御意と言わんばかりの態度。これならしっかり守ってくれるだろう
「バルミュラ様、ただいま朝食をお持ちしました」
「ハチよ、少し顔色が良くなったのではないか?」
「仲間のお陰で少し休めました。バルミュラ様が朝食を食べていただけたら私も後で食べますので、ごゆっくりどうぞ」
バルミュラ様がしっかり食べる所まで見ておかないと心配だったからとりあえず近くに立って待つ
「もう休んでも良いぞ?」
「そう言って朝食を食べないなんて事になったら困りますので、食べるまで見ています。もしかしてまた冷ます必要がありますか?」
こっちもニコニコ笑顔は崩さずに「さぁ喰え」と圧を掛ける
「……意外とハチも強引だな。では頂くとしよう」
「どうぞ、お召し上がりください」
まるで執事……いや、今僕の恰好シスター服だったわ……