胃袋グラスパー
「ドクターが作ってた栄養ドリンクみたいなエナジーポーションのお陰で前線で戦ってる人達の疲労回復手段が出来たのはありがたい」
無理矢理やらせる訳じゃ無いけど、夜襲された時に急いで飲めば何とか戦える状態には持っていけるはずだ。生きていれば連絡だって出来るし、救援にも向かえる……あっ城から出てないとダメか?バルミュラ様に頼めばそろそろ夜襲バリア発動中でも出るだけなら出来るようにならないかあとで聞いてみよう
「「……」」
「ふぃ~、このくらいでどうよ?」
どこから出したか米俵。黒武と白武がパンドーラで呼び出した魔法体の小さい体ながらも両肩に米俵を積み上げて米を運搬してきた
「凄い量だ……これは2人にも米を炊く手伝いをしてもらっても良いかな?多分僕一人じゃ間に合わないから……」
米を運んでもらった後で悪いけどそのまま米を炊く方に移ってもらおう。じゃないととてもじゃ無いがリクエストされた米料理を全て作るのは難しい
「「……」」
すぐに米を炊く準備を始める2人。やっぱり御稲の国に居たお陰か、テキパキと準備してそのまま米を炊き始めた。すげぇ……どこから見つけたのか分からないけど俵のお米が全部入るレベルの鍋とか出してやってる……
「ウカタマもありがとう。とりあえずこれである程度の目途が立ったよ」
「全く、ハチはお人好しが過ぎるんじゃないか?」
「そんなんじゃ無いよ。ただ皆で勝ちたいからその為にやってるだけ」
確かにお人好しと言われたらそうかもしれないけど、最終日は無茶苦茶な命令を出す事になるかもしれない。そうなった時に拒否されないようにする為に、今の内から色々と準備をしているだけだ。胃袋は掴んでおいて損はない
「うひゃー、勝つ為に何でもするの怖い怖い」
「そうでもしないとあの時だって守れませんでしたよ?」
「まぁそうだなぁ……あの時はハチのお陰で助かった。後で皆に話を聞いてみたが、色々やっていたそうだな?解剖したとか聞いた時は正気を疑ったぞ?」
正気を疑うって……相手の弱点を探るにはあれが一番だった気がしたんだけどな?まぁそこは人次第か
「まぁ正気かどうかは置いておいて……よし、あとはご飯が炊けたら大体何とかなる」
ウカタマと話をしながらも料理する手は止めない。なんたって約300人分だ。ただ話をするなんて暇がない
「そして話をしながら飯の準備をする手際の良さも家庭的と言うべきか……嫁に来ない?」
「ウカタマは飯綱さんが稲荷寿司を作ってくれるでしょ?そもそも嫁じゃ無くて婿じゃない?」
もちろん行かないけど……
「ほれほれ~こんな可愛いのが嫁なら良いじゃろ~?」
いつの間にかウカタマがミニサイズの花魁姿になっている。その姿になろうが、ウカタマに恋愛感情は1mmも湧かないので悪いが、その少し下品な花魁姿より狐の姿の方が良い
「良くてペット止まりかなぁ?」
「ペット!?」
「悪いけど恋愛感情は湧かないよ。友情は感じるけど」
「……まぁそれは悪い気はしないな?」
やっぱりウカタマとは友達という関係が一番しっくりくる気がする
「何か手伝うか?」
「じゃあカレーが焦げないようにお玉でかき混ぜてくれる?」
色んな料理を同時に作るんだ。当然火を使う物を放置する訳にもいかないし、誰かに見てもらえればその分、他の物を調理出来る
「それなら簡単だな。やろう」
「よーし、じゃあドンドン作るから2人も頼むよー」
「「……」」
二人がフーフーと竹みたいな物を使って火を吹いている。赤子泣いても蓋取るなじゃないけど、俵1つ分をやるのは凄すぎる
「おぉ、お米が炊けたぞ。んー良い匂いだ」
炊きたてのお米の匂いは良い。食欲をそそられる
「えっと、カレーとカツ丼とおにぎりはこのままで、オムライスはケチャップライスにして……うどんはもう麺は出来てるし、カルボナーラも準備は出来てる。パスタ系は他にもソースを作ってあるから急な注文にもギリギリ答えられるかな?ご飯物も炊き込みご飯とかじゃ無ければ材料があれば対処出来るし、これで大丈夫!」
いつの間にか白ローブに黒いエプロンが付いている。ポン君が気を利かしてくれたのだろう。あとは出来上がった料理を運んでもらえば任務完了だ
「すいませーん!誰か料理運んでくださーい!」
「「「「「はーい!」」」」」
大声で人を呼んだら結構な人数がやってきた。とりあえずこの人達に運んでもらおう
「ワイバーン君も運ぶの手伝って!戦場まで人を運んでもらえる?」
「ガオ!(へい!)」
気難しさとは何だったんだ……あ、でもワイバーン君に運んでもらうとしたらそのまま落ちるのは危険か……パラシュートってあったっけ?
「誰かパラシュートあります?もしくはパラシュートの代わりをしてくれそうな眷属は……」
「あっ!それならこのエアクラゲとかどうです?一緒に居ると落下速度が低下するみたいなんで多分パラシュートの代わりになるかと」
料理を運ぶ為に呼んだ人の中にそのエアクラゲという空中に浮くクラゲが近くに浮いている人が説明してきた。確かにこれなら何とかなるかも
「じゃあそのクラゲと一緒にスカイダイブで料理届けて貰えますか?ワイバーン片道切符はあなたの物です」
「ワイバーンお急ぎ便って事ですね!分かりました!」
地形無視で行けるなら夜になるかギリギリ夜になる前に届けられるはずだ。あとは運ぶ人に任せて一旦休憩しても良いかな?
「じゃあ皆さんに運ぶのを任せるので一旦休憩させてもらいます」
「「「どうぞどうぞ!」」」
「ゆっくり休んでください!」
「この料理は私達が運びますから!指揮官はゆっくり休んでください」
そんなに心配しなくても良いと思うんだけどな?まぁ、2分くらい休ませてもらうか