破壊の黒
「ん?」
ハスバさんの所に戻ってきたけど……何かおかしい。ハスバさんがサイバー忍者から変態スタイルに戻っている
「恐竜達が……いない?」
それにあの大暴れしていた恐竜達が居なくなっている
「はぁぁぁ!」
「やるねぇ!」
誰かと戦っている?あれは……一応着替えておこう
「どうやら、君は中々の手練れのようだ。ボクも全力を出さないといけない様だね!」
「私もここを守るように命令されているから負ける訳にはいかないんだよ!」
「ウガァ!」
「なっ!?」
ハスバさんがただでやられるのは非常にマズい。戦っている相手の後ろからクロクマ状態で攻撃を仕掛けて注意を引く。この見覚えのあるツンツン頭……勇者か?
「ボクは勇者だ!人類の為にも負ける訳にはいかないんだー!」
「チッ」
完全にパワー負けしてる。素直に弾かれて勢いを殺そう
「ユーシャ……マオウサマノ、テキ!ウガァ!」
「ここで勇者には死んでもらおうか!」
ハスバさんと僕の2人対勇者1人の勝負。人数は有利だけどこれは多分厳しい勝負になるかな……
(ハスバさん大丈夫ですか?)
(正直かなり押されているよ……恐竜達が絶滅した)
(まさか恐竜が絶滅した理由は隕石や氷河期じゃなくて勇者が原因だったとは……)
(冗談言ってる場合かい?あれは完全にステータスが段違いだ。多分まだ戦っていないボスよりも上の可能性がある)
そんなにかぁ……まぁオーラもかなり迸ってるから明らかに強いと感じる
「来ないならこっちから行くぞ!」
「「こい!」」
強敵との戦闘においてはまず観察が重要だ。何も分からずに先手を打つよりも一旦様子見をするべきだろう。相手が割合攻撃を持っているという情報も既に持っているし、他にもどういう攻撃方法を持っているかの確認も必要だろう
「はぁぁぁぁ!」
ドカンと地面を叩き割るような強烈な剣の一撃。天使よりヤバいじゃないか?
「魔王の手によって人間が滅ぼされないようにボクがやってやるんだ!こんな所では負けられない!」
バルミュラ様がどのくらい強いか分からないけど、これは勇者が入城したらアウトな気がしてならない。まぁでも某ヴァンパイアハンターみたいな変態軌道で来たり、壁抜けして数分で世界を救うような存在じゃ無いだろうからまだ対処は出来る方なのかな?
「コイツ、ツヨイ」
「全く、私一人でも何とかなるかと思ったが、流石にこれは来てもらうしか無かった」
(ハチ君?これどうしたら良い?多分このままだと2人共やられる可能性高いよ?)
(まだ残しておくつもりでしたが、ここは最終兵器を使うしかないかなと……勇者を巻き込めたら御の字。ダメでもこの施設は確実に破壊出来ると思うんで、申し訳ないんですがハスバさんアレ使って貰えますか?)
(そうだな、ハチ君にアレを使わせたら確実にこっちのマイナスがデカすぎるから私が使おう。倒されそうな寸前で良いかい?)
(自爆するならやっぱり死ぬ直前ですよねぇ)
(あぁ、良い感じの散り際を演出してみせよう)
ブラックホールボムを使用しての自爆。勇者に負けて施設をあけ渡す位なら自爆して全て破壊しつくした方が良い。とりあえず悪役の最後としてはやっておきたいロールプレイの1つだと思う
「どうやらお前らは他の魔物と違うようだな?」
「何だとぉ!私の様な上位存在がその辺に居る魔族と一緒だと思うなよぉ!?」
眷属とプレイヤー、どっちが上位存在とかあるんだろうか?どっちも同じくらい大事な存在だと思うんだけど……
「オモウナヨォ!」
とりあえず合わせておこう
「まさか!お前達は仲間が言っていた四天王だとでも言うのか!」
勇者は味方から情報を得て行動しているのか。という事はNPCだからといって戦っているプレイヤーが誰なのかをシステム的に理解している訳じゃなさそうだな。良かった、面白くない事にはならなさそうだ
「あぁそうだ!私達はお前達の言う四天王の一角を担っている存在だ」
別に自分達では言ってない。相手が勝手に言ってるだけだ
「黒の乙女とかいう奴は仲間の手によって既に倒されているぞ!ならばお前達を倒せばあとは半分だ!」
それ、僕なんですよ。今目の前にいるクロクマが倒しているとか言われている黒の乙女と一緒の存在なんですよねぇ……
「やれるものならやってみろ!」
「ヤッテミロォ!クラッテヤル!」
とりあえず死なないように立ち回って適当なタイミングで僕が先に落ちて残ったハスバさんが自爆する感じで行こう
「【ブレイブスラッシュ】!」
「グワァ……ヤラレタァ」
剣圧がもの凄いから当たってなくてもかなり危ない攻撃が沢山飛んで来てこれ当たったフリも難しいなと思っていたけど、勇者が遠距離攻撃をしてきたお陰で斬られたように見せて何とか敗北を演出出来た。影に沈みながら親指だけ立ててあとはハスバさんに任せよう
「よくも……よくもよくもよくもぉ!!貴様ァ!」
「はぁ!」
ハスバさんが煙幕とかを使ってくれたお陰で僕が勇者から離れる時間が出来た。僕も離れないと巻き込まれてしまうからどうなるか結果は見られない
「は、ハハハハハ!もうおしまいだァ!だったら最後まで美しく行こうじゃないか!」
「なっ!貴様まさか!」
「さらばだ!勇者よ!私の最後の仕事だァ!ハハハh……」
ハスバカゲロウを中心に黒い球体がみるみるうちに大きくなる。当たっただけで消滅するような破壊その物がもの凄いスピードで広がっていく。当然爆心地に居たハスバカゲロウは逃げられる訳も無い。そして……
「自爆……」
勇者もブラックホールボムに呑み込まれていった