属性コインの実験
「傷つーいた、あなたに癒しを~♪」
「「「「「フゥフゥ!」」」」」
「「「ブフッ」」」
ヤバいよ……味方も噴き出してる。この精神攻撃を耐えるのはかなり厳しいよぉ……
「喧しい!」
風と地のコインを同時に投げる。ただ目標は演奏している奴らでは無く、少し相手の手前でコイン同士がぶつかるように……感覚と身体強化されていないとこんな精密な芸当は出来ない。集中力もものすごく使うから同時に投げた属性コイン同士を空中でぶつけるこれはあんまり使いたくないな……失敗した時は結構恥ずかしい。でも効果は凄い
「痛った!?」
「うぉ!?」
「ちょ!?壊れる壊れる!」
小さな竜巻が発生し、沢山の石礫がその竜巻に乗って辺りにまき散らされる。鎧を着ているタイプの相手には効き目が薄くても、ローブとか軽装の相手には効果抜群。石礫を躱そうとしても竜巻の強風で軽いノックバックが発生。そしてそのノックバック中に石礫が飛んで来るので、回避は困難だろう。防ぎたかったら全身鎧を着ている人の後ろにでも隠れるんだな?なんにせよこれで歌は一旦止まった
「歌の力を使うのは良いだろう。だが、それを守る奴らがなってない」
同時に使うと両方の効果が混ざって発揮するのが分かったのは大きな収穫だ。流石に火に水か氷みたいな組み合わせだと効果が無くなる可能性が高いけど、組み合わせ次第でこういう事も出来るんだな。空中で当てるんじゃなくて、異なる属性コインを2枚同時に投げつけて、何か堅い物にぶつけた場合はどうだろう?
「防衛するべき対象を守る陣形が取れていない、支援を受ける為か知らんが、ふざけた事をしている暇があったらまずは体勢を立て直してからにしろ」
まぁ、守るも何も勝手に歌い始めたのはあっちだからそれに合わせて陣形を変えるのは難しいだろう。あの感じ……多分事前に何が出来るかは伝えていたけど実際にやるかどうかは決めていなかった可能性が高い。それにしてもあのコールは練習していたのか、それとも何かしらのこういうコールをしてください的サポートがあったのかは分からないけどあれはやりたくないなぁ……
「もちろん立て直すまでただ見ているつもりは無いぞ?」
バフが入ってもノックバックを無効に出来るバフとかは無いだろう。あとは火傷とかの状態異常が防げるバフがあれば良いだろうけど、多分あの歌はそういうバフでもないだろうし、属性コインの攻撃は防げないだろう
「ちょ!?危なっ、ぐばばばば!?」
「あびびび!?」
「ななななな!?」
水コインと雷コインを盾を持っている奴に向かって同時に投げてワザと防がせてみた。すると水と雷でどうやら近くに居た人にも感電したみたいで数人痺れている。同時にぶつかったら両方発動してくれるなら無理に空中でぶつけなくても良いのか。いや、でもこの組み合わせなら空中でぶつけたらもっと広範囲に広がりそうだな?直接標的にぶつければ確実にヒット、空中でコイン同士をぶつければ広範囲攻撃になると考えた方が良いか
「雷属性に強い奴!前に!」
今の1発でしっかり何が来たのか分かったのか雷属性に強いという事で何か全身岩っぽい鎧を装備した人が出てきた。家電のアース的な感じで雷属性の攻撃が地面に流れてしまうか……
「ほう?随分と動き難そうな格好だ。戦う気は有るのか?」
でも、そんな鎧じゃ絶対動き難いと思う。防御力は高そうだけど、明らかに動きは遅い。コイン当て放題だな?
「俺は!ジェイドさんの様に攻撃と防御を両立する事は出来ない!でも守る事は出来る!【ヘイトチャージ】!【リジェクトサークル】!」
どうやら敵のヘイトを集めるスキルと近寄られないようにするスキルを併用して僕を釘付けにして時間を稼ぐつもりのようだ。試しにここは魔硬貨で攻撃してみよう
「……ほう?少しは骨のある奴が居たようだ」
魔硬貨を投げつけてみたら相手に届く前にどんどん速度が遅くなり、最後には逆にこっちに向いて飛んで来た。この弾かれ方……バリアというよりはノックバックっぽい?えっとリジェクトの意味は……確か拒絶だっけ?
「それで、いつまでそうしているつもりだ?」
「お前が倒れて、俺達が勝つまでだ!」
おぉ、カッコイイなぁ?でもノックバックなら残念ながら僕には効かないんだよなぁ……
「そう簡単に俺を拒絶出来ると思うなよ?」
死神マフラーのお陰で歩けばノックバックは無効化される。完全な攻撃に対するバリアであればお手上げだったけど、そういう完全バリア的なのは大体発動時間が短い物だろう。そうでなきゃずっと発動しておけば絶対死なない存在になっちゃうし……ノックバックなら抜け道はありそうだから長い時間発動出来る可能性はある。今まさにその抜け道を使う所だし
「なっ!?バカな!?【リジェクトサークル】が効かない!?」
一歩、また一歩と、岩の様な鎧を纏う男に歩み寄っていく。歩きならばノックバックされないのでこれが一番早くあの男の元に辿り着く手段だ
「一つ策を潰された程度で狼狽え過ぎだ。策を潰されたならすぐに次の策を練れ。でなければ待つのは死だ」
「消えっ、ぐおっ!?」
「少し期待していたのだが……やはり全くなってない」
僕の射程距離まで歩いて近寄り、地面に倒れ込むように躰道の卍蹴りを放つ。相手にしてみれば視界から急に姿が消える様な感覚と同時に蹴りが襲ってくる。目の前に居るはずなのに、至近距離なのに不意打ちを喰らうのは頭が理解するのに時間が少し掛かってしまうだろう。でも理解をしている間に次の攻撃が始まるのだ。初撃を対処出来なかった時点でこの人は終わりだ