撤退!
見るからにヌルヌルしている舌を避け、対策を考える。近寄るにしてもこのヌルヌルベロを回避しながら近寄らなければいけないから苦戦しちゃうだろうな
「流石にこのベロに掴まって打撃を加えるって言うのは嫌だなぁ……」
そもそも舌に掴まる……捕まる時点でアウトだ。舌が口に戻るスピードが合わさればそこそこ良い一撃を加える事が出来るかもしれないけど……単純な打撃があのウシガエルに効くとも思えないんだよなぁ
「グェッゴ!」
僕を押しつぶす様に跳躍からの踏み潰しを狙ってくるウシガエル。正直避けるのは楽だけど、どう攻めるべきか……
「まずは一発やってみようか!」
着地して直ぐに動けないのはさっきの追いかけられていた時に確認しているから踏み潰しに潰されないギリギリの位置を計算し、着地と同時に双掌打をカエルに撃ち込む
「グェゴ?」
おっと……これは効いてないかな?
「撤退!」
判断は迅速に。紫電ボードを即座に取り出し、距離を取る。途中で舌の攻撃が飛んで来たけど急ターンで躱す。あのウシガエルに打撃が効かないとなると攻撃を通すのも中々大変だ
「打撃がダメなら斬撃か刺突なんだろうけど……手刀や貫き手じゃちょっと頼りないよなぁ」
ウシガエルから逃げて岩場まで辿り着くと流石に追いかけてこなかった。やっぱり沼地から引っ張り出して戦うのは無理みたいだ
「多分あのウシガエルは剣とか弓矢とか魔法とかで倒すんだろうなぁ……さて、これはどうしたら良いかな?」
どう考えても現状じゃ有効打を与える事が出来ないなぁ……
「今回は失敗したけど絶対リベンジするからな!」
ウシガエルと戦う為には色々足りない。人形のパーツ集めの前に装備を集めなきゃダメそうだな
「本当はあのウシガエルを手土産にもって行きたいけど……今の僕にはまだ早かったみたいだし、この前倒した豚をまた狙ってみようか」
ヴァイア様の所に行くにしても手ぶらで行くつもりは無い。せめてこの前崖の上で見た豚を獲ってヴァイア様に渡して喜んで欲しい
「そうと決まれば一旦村に帰ろう!全速力だ!」
紫電ボードにMPを流し、村に全速力で戻る。あっ、ドナークさんに岩塩も渡しておかないと
レストで回復するのに必要なMPだけ確保して森を滑走する。今回はちゃんと村にも、ワリアさんにも突っ込まないぞ?
「よし!着いた!レスト」
途中で必要MP分まで使いそうな勢いだったのでボードから降りて走る。村が見えている距離だったから襲われる心配も無い。安心感から村の敷地に入った瞬間にレストを自分に掛けてMPの回復をする。というか走ってレストを使って地面に倒れてもその衝撃でダメージ……なんて事が無くて助かった。地面でスヤスヤである
「おはよーございます」
「なーんで道端で寝てたんだ?」
寝てると言っても体が触られてるとかが分かるので運ばれた事も分かった。持ち方が体を巻かれた様な感じだったのでドナークさんに運ばれたんだなぁと寝ながら理解していた
「ちょっと早く回復したかったんで自分にレストを掛けてました。あっ、これ取って来たんでどうぞ」
起きた時にはドナークさんの家の中。岩塩を渡すなら丁度良いだろう
「おっ、岩塩10個もくれるのかサンキュー!」
岩塩を仕舞いながらお礼を言うドナークさん。ついでにあの謎の石についても聞いてみるか
「岩塩取っている時にこの石も取れたんですけど……これ何だかわかります?」
石を取り出し、ドナークさんに見せる
「おまっ!?それ取れたのか?」
「3つ取れましたけど……」
謎の石を3つ全部出す
「オイオイ……それ結構貴重な宝石の原石だぞ?」
「え?これ宝石なの?」
どう見ても黒い石……石炭くらいにしか見えないぞ?
「じゃあそれあげます。あのデカいカエルを倒す為に宝石があった所で、なんで……」
「待て待て、じゃあせめて1つ加工したのやるからそれを持ってヴァイア様の所に持って行ってくれ」
「分かりました」
正直宝石とかに興味が無いのでドナークさんにあげちゃおうと思ったのに持っていけと言うなら持っていくか
「ヴァイア様ってカエル肉より宝石の方が好きかな?」
「あぁ、絶対そっちの方が喜ぶから。ちょっと待ってな?速攻で仕上げるから!」
ヴァイア様も女性っぽかったし、食べ物より宝石の方が嬉しいのかな?
「よし出来た!これを持っていけばヴァイア様も喜んでくれるはずだぞ?」
『アウイナイト を入手』
『アウイナイト 瑠璃色をした透明感のある宝石。かなり希少』
ほうほう?これは確かに綺麗な宝石だ
「あの黒い石がこうなるの?」
気になったので聞いてみる
「大体の宝石の原石は掘り出せると灰色の塊だったり、黒っぽかったりするんだが、かなりそれは黒いだろ?原石は黒ければ黒い程中身は綺麗な物の確率が高いんだ。眼を持っていれば加工する前に中身も分かるんだぞ?」
なるほど……つまり原石はガチャ的システムなのか。じゃあ岩塩掘ってたらダイヤモンドが出てくる可能性もあったの?
「はぇーとりあえずコレありがとう。ドナークさん」
「私だってあと2つ原石を貰ってるし、それに岩塩も貰ってるからそのくらいなんて事は無いよ。むしろ貰い過ぎなくらいだ」
カエルは倒せなかったけどヴァイア様に良い手土産が出来た。これなら胸を張ってヴァイア様に会いに行ける