ギリギリな作戦
「うーん、どうしようかなぁ……」
「何に悩んでるんだい?」
チェルシーさんから情報が来たので今後の計画を少し変える必要が出てきた
「明日は敵の主力がバリアを張る為に囮で来るらしいです。どうするかなぁ……」
「どうするとは?」
「ハスバさんにAGIの施設を防衛してもらうのは変わらないんですけど、敵が目的にしている地点以外でバリアを張らせる為にこっちから相手を攻撃するつもりだったんですけど、向こうが攻めてくるっていうならそれは無視出来ないんで待ち構える必要があるかなと……なんか敵の主力が来るらしいんで正直こっちもどうするべきか悩んでます」
一番簡単なのはこっちも主力を揃えて正面からぶつける事だが、そうすると他の破壊したい施設に向ける戦力が無くなる。そうなれば確実に阻止したかった施設もバリアによって防御され、こっちのスペックを上回った勇者軍が7日を待たずして城に攻め入り、敗北……まで何となく見えた。ならどうするべきか
「敵の主力というと……ジェイドとかか。確かに厳しい戦いになりそうだ」
「バリアを途中で張らせる作戦は一旦諦めて、僕が敵主力とやり合う……となると、少し僕も手札を切らないといけなくなりますね」
眷属と協力はもちろんの事、更なる力も無いと厳しいだろう。となると、パンドーラの使用も視野に入れるべきだ。本当は最後まで取っておきたいけど、ここで出し惜しみして負けるのは一番やったらダメな奴だ。レアな回復アイテムをもったいなくて使えないでゲームをクリアするのとは訳が違う。出し惜しみしたら負けるかもしれない重要な局面なのだから3人には来てもらおう
「おっと?ハチ君の隠し玉かな?」
「まぁそうですね。今はまだ出しませんが、明日になったら一緒に戦ってもらおうかと」
「ほうほう?仲間を呼び出す系の隠し玉か」
「どこまで通用するかは分かりませんがね……」
プレイヤーを相手に僕のMPを使ってどこまで強い3人に出来るかとかも重要になってくると思う。とりあえず主力に城まで抜かれないように立ちはだかる事が重要だから、ゲヘちゃんも完全に影から出て来てもらって戦ってもらうのも必要だろう。何処まで出来るかなぁ……
「随分弱気だね?今までは大暴れしていたのに」
「今までは攻めとしての役割でやっていたので気兼ねなくやれていましたけど、今回のはほぼ初と言っていい、僕達の本陣への攻撃ですからね。失敗したらここでイベント終了ですよ?かなり重要な戦闘だと思うのでちょっと緊張してます」
「皆に報告はしなくて良いのかい?」
「おっと、そうですね。隠し事しても仕方が無いんで報告しておきましょう」
『偵8から全体へ、明日は敵がバリアを張りに来るので絶対に張られてはいけない所の防衛をするのは確定事項なのですが、どうやら敵はバリアを張る為の囮で主力を城に差し向けるみたいなので、僕が城の防衛をします。もし、手が空いたら助けに来てくれると嬉しいです』
『マジ?それかなりヤバい事言ってない?』
『流石に指揮官一人じゃ守り切れないでしょ……』
『俺達も防衛回った方が良いんじゃないか?』
『今のステータスの上昇量であれば、眷属を含めた防衛線を形成して、防衛する事が出来るかもしれない状態ですが、皆さんがこっちの防衛に真っ先に来てしまうと相手の囮作戦が成功してバリアを展開され、大型施設による強力なステータスバフが入ってしまい、眷属が歯が立たずに突破されて魔王を倒されゲームオーバーになる可能性の方が高くなると思います。なので、自分でも出来るかどうかは分かりませんが、僕と眷属で城を防衛。他の皆さんは施設にバリアを張られないように立ち回り、余裕が出来たら助けに来てもらうという綱渡りをするのが一番チャンスがあると思います』
『偵1です。一応皆様に追加報告ですが、明日の内にバリアが張れないと月の満ち欠けの問題とやらで、それ以降バリアが張れないらしいです。そして、バリアが張れるのは2日間との事なので、明日バリアを張られると最終日には消失するみたいです。なので、どうでも良い小型施設等にバリアを持っている人を追いやったり、バリア発生装置を破壊出来れば、我々の勝利が近付きます』
『バリア発生装置ってインベントリに仕舞われたりしないのか?』
『発生装置はインベントリに仕舞う事は出来ないので、剥き出し状態で運ばれます。背負えるサイズなので背負って運ぶと予想されますので、何か背負っている人が居たらその人を狙うと良いかもしれません』
ほうほう、バリア発生装置はそこそこ大きいんだな?あとインベントリに仕舞えないのもデカい。急に取り出して設置なんて事が無いのは分かりやすくて良い
『それじゃあ俺達がさっさとバリア発生装置を破壊してしまえば指揮官の支援に向かえるって訳だ』
『バリアはいくつあるんだ?』
『えっとですね。全部で100個あるらしいです。10個で大型施設を覆える強力バリアになるそうなので、10か所大型施設に配置するか、小型施設にも回すかは相手次第なので、施設を守る時の参考までに』
『チェルシーさんも有能だったか』
『何気にチェルシーさんも敵陣の内部まで入ってるんだよなぁ……』
『偵察は倒して敵陣に入ったので指揮官みたいには行けてませんよ。あの人は特殊過ぎます』
『まぁチェルシーさんの潜入話はともかく、指揮官が一人で戦うのは分かったが……本当に出来るのか?絶対何人か居た方が良いと思うが……』
『絶対とは言い切れませんが、やれる事はやります。なので、皆さんの救援が来るまで耐えてみますよ。あと現在攻撃中の部隊へ、退路は確保しているので、引くならいつでもどうぞ』
『すげぇな指揮官……』
多分明日はとんでもなく大変な一日になりそうだ……