とある偵察の男
「おぉ、元気いっぱ……ハチ君?なんか取り込まれそうになってるんだけど?」
「あぁおはようございます。こうした方が運びやすかったんで……今吐き出させますから。ポン君、ぺッしなさい」
「ペッ」
食べないようにローブに取り込まれかけていたハスバさんを吐き出させる
「寝てる間に恐ろしい事してたね……」
「ハスバさんを食べるより生かしていた方がもっと食べられるよって教えたらちゃんという事聞いてくれたんで効率よくする為にこうやって運んでたんですよ」
ここで今1人食べるよりも、生かして協力させればもっと沢山食べられると説得し、運んでいた。30秒あればベルトパワーのダッシュで結構な距離を進めるし、ベルトパワーを使っても次の施設で勇者軍の人を喰らえば、ポン君経由で空腹度を回復してもらえる。ポン君に食べさせれば食べさせるほど物理耐性とか、感覚強化とか、空腹度回復みたいな恩恵が得られるのでとにかく敵を倒して食べさせるを繰り返せばポン君は満足して、僕は強化される良いサイクルが生まれる……あれ?僕これやっぱり人間辞めてないか?
「効率を突き詰めた結果喰われてたのか」
「攻撃部隊の人達の為に急ぐんですからハスバさんに優しくなんてしてられませんよ」
「あぁ!イイっすねぇ!」
優しくしてられないに反応したみたいだ。無視だ無視
「で、施設を破壊すると言うよりは道中の相手かな?」
お、真面目モードになったな
「はい、撤退する為なんで施設破壊は今は重要にしなくても良いと思います。進路上なら破壊する感じで」
「わおっ、強者にしか許されない物言いだ」
「強者とか弱者以前に喰わせなきゃいけない子が居るんで……」
「ハチ君が子持ちかぁ……」
なんかその言い方やだなぁ……ポン君は別に僕の子供じゃないけど、大事な仲間だし……うーん、預かってるが一番表現として近いのかな?でもその辺をハスバさんに話したとしてもどうしようもないし、黙ってても良いか
「それを言ったらハスバさんだってそうじゃないですか?」
「おっと、確かに人を喰わせる必要は無いが、私にも大事な子達が居たよ」
よし、良い感じで話を反らせたぞ?
「じゃあまずは敵の偵察を潰しますか。この先の岩陰に隠れているんで、ハスバさん囮お願いします。仕留めて来るんで」
「勇者軍の偵察が可哀想に思えてくるな……」
感覚強化はやり過ぎると頭がパンクしそうになるので流石に常時発動はしていない。戦闘中と移動中にたまに発動してソナーみたいにしてるけど、【察気術】に反応があった。隠れて敵の進攻を監視してるみたいだけど……相手が悪かったね?
「ん?あれは……一人?」
全身黒ずくめだけど体に光るラインが入っている。そういえばさっき大型庭園が破壊された時にあんな感じの奴が居るって報告があった気がする。大暴れしていた黒い女の方は居ないみたいだな?
「一人ならなんとかなるかな?まぁ俺偵察ばっかで戦ってないから相手がどのくらい強いとか分かんないんだよなぁ……一応敵が来たって報告しておくか」
「んふふー誰に?」
「えっ……」
そんなバカな!?警戒していたハズなのにいつの間に俺の後ろに!?
「報告は後でしよっか?」
「うぐっ……」
首を掴まれて持ち上げられた?なんて怪力してやがるこの女……
「あ、そうだ。君達の本陣まで送ってあげるよ?」
「は、はぁ?」
精一杯強がってはみたものの、本陣まで送るって何を言ってるんだ?
「確か、旅人さんって死んでも生き返るんだよね?でも復活するところはその場じゃ無くて本陣って聞いたよ?」
「くっ……」
首を押さえる力が強すぎて抜け出す事が出来ない。だが、間違いなくこのままじゃ殺られる
「それじゃあ偵察さん。お疲れ様」
「うわぁぁぁ!」
袖から触手のような物が伸びてきたと思ったら、その一つ一つが口になっている。マジでなんなんだコイツは!?
「うっ……あれ?あぁ、死んだのか」
「あんたもやられたのか?」
「あぁ、偵察をやってたんだが、やられたよ。黒い女に喰われた」
周りにはドンドン新しい人が転移してくる。何処かで激しい戦闘が起こってるんだろう
「黒い女に喰われたって……じゃああの城の跡地で戦ってた訳じゃ無いのか」
「城の跡地?あの近くにある所か?」
「あぁ、敵の部隊が沢山来て中々厳しい事になってるんだ。あそこは攻撃力が上がるから絶対取らないとマズいから司令官殿が絶対守れってよ?」
防衛してる人達は大変そうだな?だけど、アイツが来たらお終いだ。あんなの相手に勝てるのか?
「そういや、勇者はどうしたんだ?勇者が居ればアイツにも勝てそうだが?」
「勇者は今回復中らしい。とりあえず明日になれば絶魔水晶が完成するから結界を張って施設の防衛は少しは楽になるさ」
「なるほど、それじゃあ俺も少し休ませてもらうかな?今戻っても弱体化が掛かってるし、大した戦力にはなれないしな?」
死んでしまったのでデスペナルティでステータスが弱くなっている。この状態で行くのは死にに行くのとほぼ同じ、ただの愚策だ。デスペナが解除されるまでこの拠点の城でゆっくりしていよう
「頼むから暴れるなら今の内に暴れて、俺が戦場に戻る頃には居なくなっていてくれよ……」
もう喰われるのは勘弁してほしいので今暴れて、さっさと居なくなって欲しいと勇者軍の本拠地の城で願う偵察の男であった




