マッチポンプ
「ウフフ、あらやだっ!可愛い子が沢山居るじゃな~い!」
「うわぁ……」
ハスバさんがくねくねしながらC4の村に居た勇者軍の人達に向かってゆっくりと近付いていく。迫真過ぎてちょっと素で引いてしまった。いけない、ハスバさんも頑張っているんだから僕もちゃんと引いてないで演技しないと
「ニンゲン、ウマソウ!クウ!」
「ちょっと~、男の子は残しておいてよ~?私が食べちゃうんだから!」
「……ワカッタ」
オカマっぽい演技上手過ぎて本当にその手の人なんじゃないかと勘繰ってしまう
「うわっ!なんだあの変態とバケモンみてーなクマは!?」
「おい、そこのお前。今何て言った?誰がバケモンだと!?」
「あ、アンタじゃねぇよ!?」
「許せねぇ!美の何たるかが分からない愚か者がァ!」
「うわっ、逆切れだ!」
キレるやり方が上手いというか何と言うか……見た目が完全に化け物の僕に言われた事を勝手に拾ってキレる。酷いマッチポンプだ
「ミナゴロシ!ゼンブタベル!」
「また何かヤベー奴らが出てきたのか!?」
「昨日もヤベー奴出てきたのに今日も出てくんのかよ!?」
おぉ、良い感じにアピール出来てたみたい。やっぱりインパクトがあったかな?
「美の分からない奴らを教育するわよっ!」
凶育?
「とりあえずやるぞ!」
「何もしないで村を取られる訳にはいかない!」
おぉ、いいねぇ?そのノリは嫌いじゃないよ?でも僕達も負けるつもりは無いんだよね
(どうします?ハスバさん主体で戦闘しますか?)
(そうだな、普通にやる分ならハチ君主体でも良いが、今の状態であれば私が主体で戦闘した方が良いだろう。ハチ君は後ろの方で私が囲まれないように立ち回ってくれると助かる)
(了解です)
この近距離ならメッセージじゃなく、ウィスパーを使って会話で良い。あとはハスバさんが前に出て戦うみたいだから僕は周りの、特に遠距離攻撃をするタイプを倒していこう
「君達には美とはどういう物か教えてあげちゃうわ!」
「イタダキマス!」
爪を伸ばし、威嚇。まぁ戦闘する時には邪魔になるから一旦引っ込めるけど……
「なんだこの熊!?」
「ただの魔物じゃ無いぞ!気を付けろ!」
「ぐあっ!?」
クラウチングスタートの構えからベルトパワーを使い、ぶっ飛んで弓持ちに突進してその腕を噛み千切る。実際は腕を食べるのは僕に憑りついている粘液生物がクロクマの口の形状を変形させて、ムシャァしているので僕には人の腕の味とかは伝わって来ない。これで味が伝わってきたら地獄だったなぁ……
「ソコソコノ、アジ。ツギノヤツ!」
腕を奪えば大半の相手は抵抗手段を失う。遠距離攻撃持ちの腕を喰らい、回復させないように立ち回ればハスバさんに対しての遠距離攻撃は阻害出来るだろう
「うわぁ!?」
悠長に弓を構えてる奴に急接近して、両腕を噛み千切る。口が二又に変形し、両腕を同時に喰らうとか自分でも怖いわ
「まずはあっちの熊を撃て!」
「この……はぁ!?」
【バレットキャッチャー】によって撃たれた銃弾を片手でキャッチして撃ってきた相手の腕を喰らう……何故か空腹度が若干回復してるんだけど、これはあの粘液生物君が僕におすそ分けして来てると考えて良いんだろうか?
「タリナイ、モットダ!」
演技してる最中だけどなんだろう、口から赤ポリゴンが垂れるのやめてもらって良いですか?
「よそ見はダメよ~」
「このっ!」
「くそっ!こっちも強ぇじゃんか!」
ハスバさんは大剣モードで戦っていて、中々に剣の振りが早いから敵も容易に接近出来ないみたいだ。敵が僕に注目したらハスバさんが戦いやすいし、ハスバさんに注目したら僕が戦いやすい。自分が戦うべき相手をしっかり見極めないとドンドン戦力が減少していくぞ?
「美!これが美!」
「タベタリナイ……タベタリナイゾ!」
「な、なんだこいつら……」
「俺達だってバフ入ってるハズだろ!?なんで勝てないんだ!」
いくらバフが入ろうが、戦い方が良くなかったら宝の持ち腐れだし、バフが入っても思考力とかまで強化される訳じゃない。あくまで体が強くなるだけだし……僕達も眷属によってスキルが追加されてたり、それこそバフが入ってたりもするので、向こうが強くなってもこっちも強くなってるから単純に差が埋まってないんじゃないかな?
「美意識が足りない」
「マダ、バフガタリナイ」
まぁ懇切丁寧に教える訳が無いので、他の施設を修復でもしたら良いんじゃないかな?
「意味分かんねぇ事を!」
ごもっともだ。でももう倒されるし、リスポーンしてからまた頑張ってね
「イタダキマス」
「こ、この……」
腕を喰い千切るより、頭を喰らった方が周囲へのインパクトもあるかな?
「あっ……」
空腹度は喰らう度に回復しているのでゴキブリダッシュもやり放題。急接近からの両腕を押さえて口を開けると顎がとんでもなく開き、頭を丸々呑みこんで首の辺りで噛み千切る。我ながらこんな事をスローでされたら怖くてたまんないだろう。でもその人への慈悲も込めて出来るだけ一瞬で終わらせる。そうする事で急に頭のあった部分から赤ポリゴンが溢れるシーンを周りの勇者軍に見せられる。ゆっくり食事シーンでも良いけど、邪魔されないようにして尚且つ印象付けるのにこれはかなり良いぞ?
「「「うわぁぁぁ!!」」」
(ハチ君、やり過ぎでは?)
(このくらいしないと印象が残らないんじゃ?)
(これはもう他の人じゃ印象に残らなくても仕方が無いかもしれないな……)
うーん、やり過ぎかな?