即席コンビ結成
「やっぱり眷属の所に戻って来て正解だった。ハチ君のお陰でまた強くなれそうだ」
「それは良かったです。それじゃあ僕はもう行きま……」
「ちょっと待ってくれハチ君。今日は一緒に行っても良いか?」
「ん?そういえばハスバさんってどこの部隊でしたっけ?」
ハスバさんがリーダーでは無かったのは覚えてるけど、どこの部隊だっけ……?
「一応ダイコーンの部隊に居るが、好きにさせてもらっている。私の場合は一緒に行動する事を口にはしていないがあまり好まない人が多数だからな」
まぁ、見た目で判断するならそれも致し方ない事だと思う。普通の人がスク水の男と肩を並べて戦闘するのはちょっとなぁ……それに戦闘を録画されてるとか考えるとどうしてもね?
「まぁそれなら僕と行動しても問題は無いかな?」
部隊メンバーとしてちょっと疎外されてるなら僕と一緒に活動しても問題無い気がする。統一感が無いハスバさんの眷属達に紛れるというか、ハスバさんを僕の演技に組み込んでみるか
「ハスバさん。ロールプレイに自信は?」
「どのようなロールをご所望で?」
「何かをきっかけにブチ切れて暴れる様な変態キャラをお願いします」
「とんでもない物をやらせようとするねぇ……」
姿が既にとんでもないんだ。それくらいやった方が丁度良いんじゃないかな?
「まぁ出来なくはないな。それで?そのロールプレイをして何をするつもりなんだ?」
「現状、僕が戦場で暴れた姿って何か分かります?」
「一応聞いているのは白いローブ姿で、塔みたいな建物を出したと思ったらそれで村を叩き潰したとか、黒いローブでポニーテールの女性が敵の頭を吹き飛ばし、食べたとか……」
「うわぁ……やっぱりそんな感じになってるかぁ」
言葉にされるとろくでもないな?でもこれに並ぶにはクロクマだけでは少しインパクトに欠ける。人タイプじゃないからただの眷属として判断されると困る。ハスバさんと一緒にやる事でその足りないインパクトを補い、変態とクマのセットがヤバいと相手に思わせる事が出来れば成功だ。ハスバさんの恰好はある意味インパクトの塊なので、あとはロールプレイで更にインパクトを上乗せして、ヤベー奴感を大盛りにしてもらう
「まぁあれですよ。四天王的なポジション?そんな感じで頑張ってください」
「多分その四天王の半分以上は君が占めてると思うんだが?1人で四天王とかそれはギャグだよ?」
目立ってる人は他にも居ると思うけどな?まぁやれと言われたら頑張って演じるけど……
「じゃあ四天王の一人として頑張ってください。今日は敵の施設を破壊して回るつもりなんで、何か速い移動手段はありますか?」
「走るだけならこの靴のお陰でかなり速く移動が出来るぞ?戦闘中はそうもいかないが」
なるほど、あの悪魔っぽい羽根の生えた靴は走る時は相当なスピードが出せるんだな?あ、それならハスバさんの影に入れば僕も【影移動】で動けるんじゃないか?それなら奇襲力もあって良いな?
「じゃあ移動方向はハスバさんに任せます。修復された施設を一緒に破壊しまくりましょう!」
「あぁ、だがその前に一度寝ても良いか?少し疲労がな?」
「じゃあ30秒だけ寝て良いですよ【レスト】」
ブラック企業もビックリな休憩時間。だけどこれで充分なのだ
「マジか……これのお陰でハチ君は休憩ほぼ無しで動けるという理由が分かった気がするよ。このイベントでこの能力は間違いなくヤバい。戦闘中は使えないかもしれないが、これならば無理していないというのもあながち間違いでは無いな……」
「まぁ回復を目的とするならば、戦闘中では使えませんね。さて、いつまでも油を売ってる訳にもいきませんし、行きますか」
あくまで回復を目的とするならば、ね?
『偵8はこれから防1の部隊員1名を借りて施設破壊に行ってきます。偵察任務が雑になってしまうかもしれませんが、敵陣奥の施設を重点的に破壊しようと思います』
メッセージだけ残しておいて、城から出る。途中僕とハスバさんのコンビを見て、ギョッとした人とかも居たが、まぁ見慣れてしまえばハスバさんは戦力としてかなり優秀なので、心配は無い。囲まれたらその時はベルトパワーで逃げても良いし、最悪泥団子を取り出して破壊するモーションをしてから【ミスティックミスト】で逃げても良いし、何なら最終手段で【身代わり】とかも全然ありだ
「では行こうか。ハチ君」
「いつでもどうぞ」
そう言ってハスバさんの影に入る
「うわぁ……これは酷い」
「朝になったら移動しにくいんですよねこれ」
「何も居なかったハズの所から殺戮者のエントリーは相手からしたら酷い事この上ないと思うぞ?」
殺戮者のエントリーって……酷くない?と思ってたけど間違ってないな?
「じゃあハスバさんがピンチになるまで出ない方が良いですか?」
「いやいや、流石に最初から戦ってくれよ。じゃないとキレる為のスイッチの行動が出来ない」
「あぁ、そういえば何をスイッチにするんです?」
よくアニメとかにも出てくる、その人の逆鱗に触れてブチ切れるシーンをやる為にも切れるスイッチを何にするか決めておきたい。じゃないとただの変な恰好している人で終わってしまう
「ん?ハチ君が攻撃を喰らったらにしようかと思ったが?」
「……普通に何か癇に障る言葉を言われたとかにしません?僕がダメージを負うの前提じゃないですかそれ」
僕がダメージを負ってキレるのはやめてほしい。出来れば戦闘前でもキレる可能性があった方が、ロールに自由度が出るだろうし
「じゃあ、『化け物』とか言われたらキレるにしようか。なぜこの美が分からない!とかそんな感じで」
「あぁ、良いですね。それで行きましょう」
こうしてスク水とその他ごちゃまぜ装備と真っ黒な凶悪クマのコンビは敵陣奥を目指した