二つ目の役
「後衛!撃て撃て!味方に多少当たったって関係無い!敵を倒せ!」
「テメェらふざけんなよ!」
「おめぇらしっかり敵を狙えよ!」
うわぁ……勇者軍酷いなこれ?このままだと凄い険悪な状況で負けて敵陣に戻っちゃうよな?折角のイベントなのにこんな険悪なのは敵でも嫌だ。仕方が無い……ここはバックアタックの権利を捨ててでも楽しんでイベントをやって欲しいからやるか
「果たしてそんな喧嘩をして勝てる相手なのかな?」
「なんだ?」
「誰だ?」
今回はローブは黒、仮面は変形させて鉢金とポニーテール擬きを作り、ぱっと見女性っぽい感じにしてみた。これでさっきまで暴れていた白ローブとは違う奴だと思ってもらえるだろう。さっきMPをあげたんだし、戦闘でもちゃんと手伝ってくれよ?
「こんな協力も出来ない人達が相手じゃ全く相手になりませんね?退却したければ止めはしませんよ?」
「舐めやがって!」
あからさまな挑発をする事でプッツンした人が僕に剣を振り下ろしてくる。受け流そうと腕を前に出したところで異変が起こる
「なっ!?」
「ん?」
剣は確かに受け流した。だが、事はこれで終わらずに袖が鋭く伸びて、剣を振り下ろしてきた相手の首に突き刺さる
「カハッ……」
僕の勘違いじゃ無ければ、明らかに何かを吸い取っている。命と魔力を欲しがってたし、まさかHPとMPのドレイン?うへぇ……怖いなぁ?でもこれはキャラ付けに丁度良い特徴かも
「うーん、あんまり美味しくないなぁ?」
「う、うぐっ……がはっ!」
ローブが強化されている(?)せいか、片手で相手の男を持ち上げる事が出来る。何となくパワードスーツ的な感じになったな?視覚聴覚強化と筋力強化。僕には回ってこないけどHPとMPのドレイン効果もありそうだし……いや、これ敵をドレインしたら能力強化される感じか?さっきは僕のMPを吸い取ったから感覚強化が恩恵として僕に付与されて、今回は敵のHPとMPを吸い取ったから筋力が上がっているというか、ローブが補助してくれているんだろう。これある程度吸ったらどうなるかもみてみたいし、僕の仕事もこなせるからやってみよう
「こんなものかな?はい、次の人は?」
完全に吸い尽くしたのか、僕の手の中で男はポリゴンになった。急な出来事だったから今回は1人をじっくりドレインする事が出来たけど、これ以降はじっくりドレインは無理だろう。部位破壊とかしても吸い取れるなら足1本を奪ってそこから吸い取るとかも考えられるな
「おい、なんだよコイツ!」
「意味分かんねぇ……」
「とりあえずこっちの方が向こうより危ないんじゃ……」
「ここは撤退した方が!」
「前に出ろよ!」
戦々恐々。誰が指揮しているのかは知らないけど、完全に誰の言う事を聞いて良いのか分からずに、前に行くべき、撤退すべきとパニックになっている。そのパニックに乗じてこっちの部隊は魔法や眷属の遠距離攻撃でちょっとずつ削り、防衛部隊の皆が盾を構えたりして後ろへの攻撃を防いでいる。練度が違うね?それに眷属達はしっかり命令を聞いてくれるから連携が取れていない相手だと恐ろしいくらい強い。これだと正直張り合いも無いんじゃ無いだろうか?
「勝ちたい、あるいは負けたくないんだったらしっかり連携しないと。じゃないと食べちゃうよ?」
僕の言葉に答えるようにローブの背中側に大きな口が現れた。空中をガブガブして威嚇してる……怖っわ
「撤退か、連携か、早めに選んでね?まだお腹空いてるんだよねー」
若干左右に揺れながらゆっくりと敵集団に近付いていく。後ろからは防衛部隊が隊列を組んで止めどない攻撃でジリジリと寄ってくるのでさっさと判断しないと防衛部隊に削られる。幸い、僕の方は1人しか居ないので横を抜けるのは簡単だ
「俺は逃げるぞ!」
「私も撤退させてもらうわ!」
「殺さないで……」
「歯向かって来なかったらしないよー。施設を直して、皆で協力して、強くなったらまたおいでー。そうしたら今度会った時に食べてあげる」
背中の口がガブガブしながら右へ左へと若干引っ張られる。ダメだよ?歯向かってきた相手は良いけど、無抵抗の相手は食べたら約束を破る事になっちゃう
「「「ひえっ……」」」
散り散りとまでは行かないけど、ドンドン撤退していく勇者軍。ここで退いてくれるのは助かるな
「お、俺は戦うぞ!」
「じゃあいただきます」
「嘘っ!?」
空腹度も回復してるし、一瞬くらいならベルトのゴキブリパワーを使った超加速も大丈夫だ。虚を突いた急接近から相手の足を踏み、下から顎に掌底。衝撃を吹っ飛ぶ事で逃がすなんて甘い事はさせない
「あれ?飛んじゃった!まあいいや。いただきます」
衝撃を逃がさないように足を抑えた結果。掌底の勢いで頭が吹っ飛んでしまった。完全にポリゴンになる前ならまだドレイン出来るよね?
「なんだよ……こんなの勝てる訳が無いだろ!」
「今のままじゃ無理だろうね?ふぅ、ご馳走様でした。さっきも言った通り、勝ちたかったら喧嘩なんてしてないで皆で協力しなよ?君達は強い敵とは絶対に1対1で戦わないといけない訳じゃ無いでしょ?まぁ今は大人しく下がって皆でお話でもすると良いよ」
頭が吹っ飛んだ直後に肩を掴んで上に持ち上げると赤いポリゴンが降ってきたけど、それをローブが受け止めて吸収していく。さっさとちゃんと協力出来る敵になってもらわないとこっちも張り合いが無いんでね?
「で、どうする?まだお腹減ってるけど、帰るならまだ見逃してあげるよ?」
防衛部隊もかなり近い。選択する時間はもう無いぞ?
「に、逃げろ!」
「逃げるんだ……勝てる訳が無い……」
「撤退だー!」
「それもまた、勇気だね?」
逃げる事を選択するのだって勇気が要る。良くその選択をしたと褒められても良いと思う。拍手をしてヘイトだけ稼いでおこう。こうしておけばまた戦場で会った時に僕を倒そうと一致団結……してくれるかなぁ?




