落とし子
『こちら攻1から全体へ、敵がかなり来たぞ』
『攻10、こっちも来たぞぉ!防衛部隊も援護頼む!』
『アパーム!飯持ってこいアパーム!』
お腹空いてるのかな?そうだ。一度城に戻ったら皆の為にご飯を作ろう。食料も貯まっているみたいだし、調理して防衛部隊の人と一緒に配達するか
「バルミュラ様、敵を欺く為に今着ているこの服と違う服かマントが欲しいのですが……」
「欺く為に違う服が欲しいとはどういう事だ?」
「この姿で注目を集める行為をしたので、別の姿に出来れば注目されずに行動が出来ます。その為にこの白いローブを隠すマントや、別の服があると良いのでお願いした次第にございます」
シスター服に関してはボスラッシュの時に使いたいのでまだ使う訳にはいかない。シロクマコスチュームは普通に白ローブじゃなくても目立つので、ダイコーンさんの下じゃないと使いにくい。こうなってくるとメインで使っている白ローブ以外に何か目立ちにくい服装でもあると助かる
「うむ……すまないが直ぐに用意出来る物だとサキュバスのレオタード位だが……」
「何!?」
「指揮官様のレオタード!?」
「マジ!?全体に連絡しなきゃ……」
「それは流石に謹んでお断りさせていただきます!」
シスター服はまだ良い。あれは慣れもあるけどほとんど全身を布で覆われているから女装とも言い切れない恰好だし……でもレオタードはアカン。完全にハスバさんルートに行ってしまう。それは避けなきゃいけない
「そうか……似合うと思うのだが?」
「いえ、流石にそれは本心からであっても頷く訳にはいきません。無理な相談をしてしまい申し訳ありませんでした。前線で戦っている者達の為に料理を作りますのでこれで」
「まぁ待つのだ。それも立派だが、ハチよこちらに寄れ」
「はっ」
立ち去ろうとしたところで呼び止められ、近くに来いと言われたので行くけど……大丈夫だよね?問答無用でレオタード着せられたりしないよね?
「ハチ、動きやすい恰好は好きか?」
「…………はい」
正直メッチャなんて答えるか悩んだけど動きにくい鎧なんか着た所で動きが悪くなるだけだし、僕は防御力を上げるより回避力を上げた方が合うから動きやすい恰好は好きかと聞かれたら好きと答えるしかない。例えレオタードにリーチが掛かったとしてもそう答えるしかないのだ
「こやつを持ってみよ」
そう言ってバルミュラ様は黒くてヌメヌメした物を僕に渡してきた
「ん?ひょっとして眷属ですか?」
オーラを感じるから生きている。だとするとこのスライムに似た粘液みたいなのも眷属かな?
「こやつは少し違う。とあるお方が置いて行ったのだが……ふむ、任せても問題無さそうだな?」
「えっ、何か危険性があるのですか?」
「正式な我の眷属では無いからな?だが、しっかり役に立ってくれるはずだぞ?」
「うわっ!?」
バルミュラ様と会話していたら粘液が僕の体に引っ付いてきた!?
「ん?何ともない?」
体に張り付いた粘液はオーブ・ローブ全体に広がっていき、黒くテカテカしたローブになってしまった。これどうなるの?
「体に異常は有るか?」
「いえ、特に異常はないで……」
何故か袖が伸びて鋭利に尖り、地面に突き刺さった。え?何?何が起きたの?
「本当に問題無いか?」
バルミュラ様が本当に問題無いか確認をしてくる
「……異常はないです!」
ゆっくりと伸びていた袖が縮み、元のローブの形に戻ったので一応異常なし!そういう事にしておこう
「「「えぇ……」」」
「そうか、異常は無いんだな?ならばそやつはハチに任せた」
黒くなったローブがグニョグニョと蠢いている……これ元のローブと同じ色になってくれるのだろうか?戻らないとそれはそれで困るんだけど……
「任されました。では前線で働いている仲間の為に料理を作るのでこれで」
「うむ、頼んだぞ?」
とりあえずローブは色が変わってちょっと蠢いてるけど、僕に危害を加える感じは無さそうなので調理作業を始めよう。ローブを脱いだらこの謎の粘液生物も一緒に離れるのか、それとも僕の体に移るのか……僕の体に移ったら流石に怖いな?
「それじゃあ3分でクッキングとまでは行かないけど出来るだけ早く調理しよう。普通にステーキとかで良いかな?」
運んで即食べるか一仕事終えてから食べるだろうし、出来るだけ食べやすい物の方が良いか……それだとただのステーキはちょっと食べにくいな?そうだ!パンとかあるかな?サンドイッチにしたら食べやすいかも。えっと……おぉ、パンがある。それと野菜もあるな?それじゃあこれを使ってサンドイッチを作ろう。今日の分の戦闘が終わったら小麦粉を捏ねて、パンを焼かないとなぁ……防衛部隊の人達が取ってきたのか既に製粉済みの小麦粉があるし……もしかしてそういうスキルとかもあるのかな?
「まぁ皆の分を頑張って作りますか!」
ステーキサンドを皆の分作る事にする。でっかい鉄板もあるし、まな板もある。これなら一気に沢山作れそうだな?やってみようかと思った【アビスフォーム】料理術をこんな所で使うのは良くない。触手は使えなくてもこの両手で300人オーバー分の料理を作ってやろうじゃないか