勝つ為の下準備
「あぁ、疲れたぁ……」
「やった事は砦を明け渡しただけだがな?」
「言っちゃえばそうですけど、演技するのも結構大変なんですよ?本当の自分とは全く違う人のフリ?をしなきゃいけないんですから。でも、しっかりやれば説得力も出てくるんで、やる価値は凄いあると思いますよ?」
攻撃部隊の人達と一緒に話をしながら撤退する。ロールプレイは中途半端に恥ずかしがらず、堂々とやった方が出来も良いし、逆に恥ずかしくない。ある意味世界により入り込めるから楽しい的な事を話し、遠回しに今度はちゃんと演技してほしいアピールをしてみるけど……多分遠回し過ぎて気付いてないな
「まぁ、一旦補給も兼ねて拠点に……」
「ん?どうした?」
数人のオーラが接近してきたので多分敵の偵察だろう。今は丁度森の中。ここでおかえり願おう
『敵偵察がついて来ているので始末してきます。そのまま会話しててください』
『了解』
さっきまで会話していた攻撃部隊の人達の目の前で【影移動】をする。森の木陰に潜み、部隊が進んで行くのを見送ろう
「おい、皆武器の損耗具合はどうだ?まだ戦えるか?」
『嘘で良いからちょい深刻に言っとけ!』
「あぁ、さっきの戦闘で結構損耗したなぁ」
「回復アイテムがちょっと心もとないかなぁ」
「剣折れちまったよ!」
流石に腰に刀身剥き出しで折れてない剣を見せた状態でそれを言うのはどうなんだ?でもこうやって気を引いてくれているので、敵の偵察が釘付けになっている最中にその首を貰いに行こう。攻撃部隊の方を見たら白い服を着て僕のフリをしてくれている人も居るみたいだし、あれなら多少は時間が稼げるだろう
「とりあえず敵陣まで行ってみるか?」
「流石にそこまでは無理でしょ?」
「敵の布陣だけ確認出来れば御の字」
敵は3人。よし、一番後ろの人から処理しよう
「にしてもアレは怖かったな?」
「正直この追跡だって正気の沙汰じゃない気がするけど?」
【影移動】で敵の背後に移動。一番後方に居る敵に【ハシャフ】を使って声を出せなくしてからネックツイストで首を折り、ポリゴンに
「まぁ、あの白ローブと直接やりあうなんて俺はゴメンだね」
「ひゅ……」
2人目は【ハシャフ】を使わずに首を折りに行ってみたけど、やっぱり一瞬口から空気が漏れるみたいな音が出てしまうようだ。完全無音で仕留めるのであれば【ハシャフ】が必須かな?それとも何か答えようとしていたから声が漏れてしまった可能性もあるな
「まぁ、これ以上進んでも危険だし一旦撤退するか……あ?」
「危機感を持つのは素晴らしい事ですが、判断が遅かったですねぇ?【ハシャフ】」
「……」
声の出せなくなった敵の偵察の目の前で、泥団子を握り潰す。【ミスティックミスト】を使ってから泥団子を握り潰せばそのせいで周囲に霧が出て、見えなくなると敵の偵察に思わせるのに丁度良い
「お仕事なのは分かりますが、それはこちらも同じです。悪く思わないで下さいね?」
「……」
声が出せずに、剣を振り回している敵の周りを走って回りながらどこから来るか分からない恐怖の演出をしているけど、これ姿を見られたらダサいなんてものじゃない。でも脅かす為には多少カッコ悪くても努力する必要があるのだ……
「大丈夫、死ぬときは、一瞬です」
「……」
今度は【影移動】を使って偵察の前や後ろに出て声を掛ける。どこから来るか分からないから剣をむやみやたらに振りまくっている。腰も入っていない剣であれば弾いてしまっても良いが……ラッキーパンチを喰らう可能性は避けたいし、後ろから一瞬で仕留めるのが一番か
「こんな風に」
剣を持つ右手とは反対側の左から声を掛け、左側に斬りかかるように仕向けて、素早く背後に移動して首を180度回転させる。最後に僕の姿を見る事が出来たね?
「さて、これで怖がってうまく情報錯綜してくれないかなぁ?」
恐怖でパニックな状態でリスポーンすれば正確性が無い情報に尾鰭がついてより警戒するか、それは違うだろと、無視されるかのどちらかだろう。警戒するならその分進軍が遅くなるだろうし、無視されれば僕はゲヘちゃんと一緒に暴れられる
「反応は……あれで終わりと、追手らしい追手ももう居ないな?」
森の中でこれ以上敵の偵察は見当たらない。これなら城まで戻っても問題無さそうだ
『終わりました。もう演技はしなくても良いですよ』
『いや、早えーな!?もう倒したのかよ!?』
『まぁちょちょいとやっておきました。でも、施設バフが盛られてくるとそこまで簡単に倒せなくなるかもしれませんね』
『指揮官だと相手がバフで盛られてても普通に渡り合えそうだな?』
『それが出来るかどうかは別として、最終日には攻撃と防衛の部隊をボスラッシュ組と施設破壊組に再編成するとかも良さそうですね。今は攻撃部隊だけど室内戦闘の方が得意な方とか、防衛部隊だけど前線を押し上げるのが得意な方とか、最後の時に必要になる適性が違う可能性があるので……でもこのままで最後まで戦えるとは思ってませんね。なにより相手の勇者の実力を見てませんから』
そう、今まではプレイヤーとしか戦っていないので強さもある程度想像出来る範囲だが、今回のイベントの肝ともいえる勇者の存在。それがどのくらい強いのかが判別つかないとこれからも勝てるかどうかは分からない
『ちゃんと先の事までしっかり考えてんだなぁ?指揮官様よ?』
『舐めて掛かって負けるのは一番避けたい事ですからね。せっかくのイベントなんですし、勝ちたいじゃないですか!』
『そりゃそうだな!絶対勝とうぜ!指揮官様よ!』
言われるまでも無い。今回の砦の明け渡しだって勝つ為の布石だ。これからも色々小賢しいことやっていかないとなぁ?




