封印されし者
「さて、何が出るかな?」
他の眷属達に挨拶をしながら一番奥まで進んでみる
「うん、間違いなくこれだよな……」
多分、この前入った時には無かっただろう大きな鎖と僕より大きい錠前で巨大な扉が封印されていた。え?この奥にその例の奴とやらが居るの?絶対出したらダメな奴だよねこれ?
「というかこれそもそもどうやって開けるんだ?」
僕よりデカい錠前って鍵はそれこそ人サイズだろこれ……テレビの企画とかで車プレゼントとかされた時に渡されるデッカイ鍵よりもっと大きいの必要だろうこれ?
「とりあえず鍵穴をよく見てみるか」
扉を登り、鍵穴を見てみる。もしかして扉の奥が見えたりしないかな?
「ぬおっ!?吸い込まれる!?」
入口は鍵穴だったかぁ……
「ドナタ?」
「へ?あっ、ハチと申します」
「アッ、コレハドウモ。ワタシハ、ゲヘナ・マキア。ト、モウシマス」
鍵穴に吸い込まれてほぼ何も見えない暗い部屋の中に入ったけど……なんだろうこの声?なんか可愛らしい声だけど機械っぽいな?
「ナニカゴヨウデ?」
グポーンと音がしてかなり高い所に赤い2つの光が光る。あれは目かな?
「用というか、バルミュラ様が僕なら君を任せても良いかもしれないって言うんでどんな方が居るのかを確認しに来た感じ……平たく言えば挨拶をしに来た。ですね」
用事がどうあれ、どんな存在なのか分からないのでまずは挨拶。こういう時の第一印象は大事にしたい
「ソレハ、ワザワザドウモ。ジュンビガナク、ナニモオダシデキマセンガ、ユックリシテクダサイ」
「いえいえ、こっちこそ急に押しかけてしまい申し訳ありません。えっと、ゲヘナ・マキアさん?は何故このような場所に?」
封印されているのだとしたらそれ相応の理由があるだろうし、何故あんな厳重に封印(普通に入れちゃったけど)されていたのかとかも知りたい
「ハズカシナガラ、ソトハニガテナノデ……」
「何故苦手なんです?」
「ヒトリダト、ココロボソクテデスネ……」
「なるほど」
外が怖いんじゃ無くて1人だと心細いから出られないって感じなのか。封印ってより引きこもりかな?なら僕がついて行けばその問題は解決しそうだな?
「ソレニ、ワタシノスガタハ、ソトノミンナニ、コワガラレルノデ……」
あらま、コンプレックス持ちかぁ。それは外に出られないのも仕方が無いかもしれない。僕もまだゲヘナ・マキアさんの姿が良く見えてないし、一度しっかりその姿を確認してみるか
「あの、良かったら姿を見せてくれませんか?姿を見せてもらわないと僕が怖いかどうか、判断する事も出来ないんで……ダメですかね?」
どんな姿であろうと拒絶する気は無いけど、こればっかりは相手の気持ち次第だ
「ロコツニ、コワガラレルト、サスガニヘコムノデ……」
「あぁ、多分君が思ってる程僕は怖がったりしないよ?色々出会ってるし、海底都市やら冥界やら深淵やら行ってるし……」
寧ろクラーケンより恐ろしいのであればそれはそれで頼もしいとすら言える
「ワカリマシタ」
ズシンズシンと腹に響くような音。そして暗闇の中から遂にその姿が現れる
「おぉ、凄い大きいね?それにこれは装甲?それとも甲殻みたいな感じ?」
煤けた金属の様な物が体全体を覆って、歪なロボットみたいな見た目をしている。僕の目の前に置かれたゲヘナ・マキアさんの指の先をコンコンとノックしてみたらハリボテでは無く、しっかり中まで金属が詰まってるみたいだ
「ホントウニ、コワクナイノデスカ?」
「何が?大きいだけじゃ怖くないし、僕の事潰しちゃうとか言うならこういう事が出来るから全く問題無いよ?」
暗い部屋なので目の前で【影移動】をしてみせる。その巨体故に出来る影はとても大きいだろう。僕の事を足で踏み潰そうとしても、手で叩き潰そうとしても、直撃前に影に入って移動してしまえば良いだけだ
「正直それなら僕の方が怖がられないか心配だなぁ……」
「トイウト?」
「まぁ君なら見せても良いか。【アビスフォーム】」
真っ黒な靄が僕の体を包み、異形の存在に変わる
「ヒエッ……」
「ほらぁ!君の方が怖がった!僕は君の事信用したのになぁ?」
体の大きさは蟻と象位の差があるのに、ビビっているのはゲヘナ・マキアさんの方だ。でもこれはラッキーかも?
「僕が怖い?」
「ハイ、スコシ……」
正直だな?まぁその方が良いか
「じゃあ【解除】」
【アビスフォーム】を解除し、怖さを和らげる
「怖い怖くないって所詮ソレを知っているか知らないかの違いだよ。知らない物は怖いけど知っているか、知ろうとするものは恐怖よりも好奇心とかが案外勝っちゃうものだよ。僕はゲヘナ・マキアさんの事もっと知りたいな?何が得意なの?何が好きなの?教えてよ」
「ハチサン。アナタハ、カワリモノデスネ?」
「良く言われるよ……」
変わり者って言われるのはもう慣れてる
「どう?一緒に外に出てみない?バルミュラ様の話だと影の中に君も入る事が出来るみたいな事を言われたんだよね」
「バルミュラサマガ?ヤハリアナタハ、マルデホカノカタトチガイマスネ?ゼヒ、オトモサセテクダサイ」
「じゃあ君も一緒に頑張ってくれるかな?」
「イイトモ!」
おっ、ノリ良いな?