開戦
『なぁ?偵8がアホみたいに突出してるんだが、大丈夫なのか?』
『その人、指揮官です……』
『うちの指揮官が鉄砲玉過ぎる件について』
『まぁその指揮官は殺そうとしても中々死なないから安心しても良いんじゃない?』
『そうなんすねぇ……とりあえず何か情報あったらお願いします』
散々な言われようだな……まぁもう他人からの評価なんて関係無いか。どうせ危機が迫ったらアレを使うんだ。あの姿をみられたら人からの評価なんてどうでも良くなる。それに人の目を気にしてたらシスター服なんて着られないし
「まぁせっかく一番前まで来たんだし、敵が何処まで来てるか確認しないと」
こんな事なら望遠鏡も作っておくべきだったか……いや、そういえばレンズが無いから無理かな?
「まぁ望遠鏡はまた今度にして、まだここまでは来てないか。もっと進んでみるかな?まぁマップで見る限りは川があったり、塹壕?みたいなのもあるから進みにくいのかも」
勇者軍側は各所に街とか砦の施設以外にも塹壕みたいな溝が所々にあった。こっちが突っ込む時にそれを使われて防衛されると結構厄介かも……
「いや待てよ?塹壕なら影があるだろうし、僕なら早く移動出来るかな?」
そう考えれば意外と対塹壕戦とか僕にとっては得意かもしれない
「近場にある施設を確認してみるか」
僕の近くにある大きな施設はF6の修復されると防御ステータスがアップする砦。まずはここに入ってみよう
『偵察部隊へ、F6の砦を偵察しに行きます。敵が居た場合は撤退します』
1人で威力偵察をする気は無い。例え敵を見つけたとしても近くに攻撃部隊が居ないので部隊が来るまで手を出さずに情報収集だけするのが良いだろう
「さて、もう居るかな?」
砦に近寄って様子を確認する。壁が壊れていたり、門が破壊されていたり、これは砦だったって言った方が良いな……おっ、この壊れた木製の扉の木材とか失敬しとこう。焚き火とかに使えそうだ
「生木を燃やすと煙が凄い出るしなぁ……こういう乾燥してる木材はありがたい」
調理する時に煙だらけではやりたくない。薪を探すのだって大変だし、こういう所で乾燥した木材を入手出来たのはラッキーだ。これ炎魔法とか火の魔石があればこういうのは楽なんだろうね。まぁ扉は片っ端から貰っていこう。薪用の扉狩りじゃー!
「む?」
扉を集めて結構な量の木材を入手出来たので、砦の上に登り、辺りを見回してみると20人程度の一団がこの砦にやって来ているのが見えた。マップを確認してみると僕が扉狩りをしていた間に攻撃部隊が結構進んできている。これなら一戦交えても良いんじゃないかな?
『偵8から攻5へ、F6の砦に接近する20人程度の一団を発見。7割が近接武装、2割が銃、1割が魔法と推測。行けますか?』
『もちろん、すぐに行くわ』
ヒュー、かっこいい。とりあえずこれが魔王軍と勇者軍の初戦闘か。とりあえず支援のしやすさを考えると砦の中で戦闘したいところだ
『砦内で戦闘して頂けると支援しやすいです。間に合わない場合は砦前で戦闘を始めてくれれば内部から攻撃出来ます』
『りょうかーい、とりあえず20匹ね』
匹って……マップ的には結構近くまで来ているな?あぁ、居た居た。これなら……とりあえず移動スピード的にはキリエさん達の攻撃部隊の方が先に砦に辿り着くな。あっちはダラダラ動いてるからこっちは先に準備出来るな
『砦の上に居ます』
『あ、見えたぁ。敵は?』
『ダラダラしながらこっちに来ているので練度も低いと思います。多分このイベント最初の戦闘になると思うので、また動画で纏められるかもしれないんでどうせなら派手にやっちゃいましょう』
『良いねぇ!殺っちゃう?』
『思いっきりやっちゃって良いと思います』
どうせ魔王軍の活躍を纏めるとかになった時に初戦は間違いなく使われるだろう。ならキリエさん達にしっかり決めてもらった方が良いだろう
「全くよぉ?なんだってあんな奴の言う事聞かなきゃいけんねーんだよ。指図される意味が分かんねーよな?」
「自由にやらせろってな?」
「こんなんボスの所まで真っ直ぐ行けば良いだけだろ?」
「まぁ俺達にかかれば速攻で潰せるべ?」
「とりあえずあの砦に居れば修復されんだろ?自陣に引っ込んでるよりとっとと先に進んだ方が良いっつの」
「俺達は指示されるより少数精鋭で動いた方が強いんだっての!」
「何が司令官だバカじゃねーの?」
「「「ハハハッ」」」
勇者軍も指揮系統は作っていた。だが1人の言う事を全員が聞く訳も無く……司令官となった者の指示が聞けない者達が集まり、集団となってこの砦までやってきたのだ
「あらあら、いらっしゃい。勇者さん達」
「「「「「あぁ?」」」」」
「やっちゃって良いの?良いの?」
壊れた砦の敷地内に入るとそこには綺麗に整列していた15人とその前に2人の女子
「だいたい人数は一緒か。まぁ負けねぇだろ?」
「女子に負ける訳ねぇだろ!」
明らかに舐めた態度。そしてそんな態度を取られたキリエとキリアは……
「何かがっかり」
「全然強く無さそう……」
「私達がやりましょうか?」
後ろに控えていた一人がそう言い出した事で今度は勇者軍側の奴らがキレた
「テメェらみたいな奴に負けっかよ!行くぞお前ら!」
「「「「おう!」」」」
臨戦態勢を取り、いよいよ『七日戦争』初の戦闘が始まる