配属
「まぁ形だけなら良いんじゃね?」
「別にやり方を指図するつもりが無いなら別に良いかも?」
「あぁ?実力も分からねぇ奴が指揮官とか嫌じゃねぇか?」
実力を示せって、え?ここでいきなり味方と戦わないとダメ?
「ハチさん、少々あの約束を破ってもよろしいでしょうか?」
「あの……ってどの?」
なんの事かと思っていたらチェルシーさんからウィスパーが飛んで来た
(蝿の王攻略情報の件です。情報提供者が誰かをここで公表する事を許していただけたらと)
(ここで皆を纏めるのに役に立つなら良いですよ)
「ここで皆様にお知らせがあります」
チェルシーさんが手を振りながら注目を集める
「ここに居るハチさん。実はここに居る皆様が全員がお世話になった事がある方なんですよ?」
「「「は?」」」
そりゃそういう反応をするだろう。だって僕はこの人達と会話した事すらない。いや、今初めて会話したか
「あの蝿の王の攻略法。発見者はこちらのハチさんです」
「「「えぇぇぇ!!」」」
「あ、どうも」
僕が指揮官になる事に懐疑的だった人達が急に僕の周りを囲みだした
「あんたがあの攻略法を見つけたのか!」
「あれのお陰で俺達も何とかフォーシアスに行けたんだよ!」
「俺達も俺達も!」
「魔王軍サイドが気になってやってた時にあの攻略法のお陰で2人パーティでも突破出来たんだ!あの情報が無かったらこっちに着く事すら出来なかったよ!ありがとう!」
圧倒的な感謝の声。あれってそんなに感謝される事なのか?
「オッケー!俺はこの人が指揮官で構わねぇ!」
「俺もだ!」
「私も!」
「私が覚えている限り、ここに居る方々の99%はあの情報を購入しています。感謝してない人の方が少ないですよ?」
凄い購入率……まぁでもこれで指揮官として認めてもらえるならありがたい
「それじゃあまず指揮官としての初めての仕事を果たしたいのですが、まずは指揮系統を構築したいと思います。旅人全体を攻撃、防衛、偵察、陽動、妨害、食料調達の6つに分けたいと思うのですが……」
「それなら食料調達じゃなくて後方支援で他の事も纏めた方が良いんじゃないか?」
「へ、兵站は大事!」
そういえばそうだ。食料が調達出来ても食べる人の所まで持っていけなかったら意味が無い。後方支援が一番大事とかなんとか……
「素晴らしい。皆が纏まっていく……これならば我らの数の不利も覆せるやもしれん。我が七日後も生きていたら、前線でも後方でも戦ってくれた皆に必ず褒美を準備しよう」
「「「「「おぉ!!」」」」」
バルミュラ様からのダメ押しとも言える一言。目の前に吊るされた人参よろしく報酬が約束されるとやる気も出る
「とりあえずある程度報告を纏める部隊長も必要なんじゃないか?」
「そうですね。皆さんの適性とかは分からないんですけど、まずは攻撃部隊の動きを報告する部隊長。防衛と後方支援部隊の動きを報告する部隊長。陽動、妨害、偵察部隊の報告をする部隊長とかどうかなって……」
人数を分割するなら攻撃に4割、後方に5か4割、偵察系に1か2割を。これなら無理に前線を広げ過ぎて後方支援が届かなくなる事が無くなると思う。最初は防衛する場所も無いし、食料調達に注力出来るかな?
「部隊長か。つってもただのメッセージでの報告係って感じか?」
「はい、メッセージ機能が使える人数が限られているので報告する人数を減らしたいのと、僕は連携に置いて陽動と偵察が重要だと考えているので、そちらの人員にメッセージが使える人を多めに割り振りたいと考えています」
約300人の内、メッセージが使えるのが30人。部隊長として3人で纏められたらかなりの人数を偵察系の人にメッセージが使えるように割り振れるが……
「流石にそれはちょっと厳しいんじゃないか?防衛、兵站をする者にもメッセージは必要だし、攻撃だって何班かに分けて包囲戦をする場合だってメッセージが使えた方が良い」
「そう言われると確かに……じゃあ配分をもう少し考えましょうか。出来れば皆さんも力を貸してください。どうすれば30人を上手く使って人数の大差をひっくり返せるかを」
「よーし!そんじゃ皆で考えるべ!」
「まぁただの連絡手段だろ?パーティを纏めてレイドみたいにすればその中に連絡する奴が1人居れば充分だろ?」
「攻、防、偵に10人ずつで良いんじゃないか?」
「個人的には防衛は兵站も込みで考えるとメッセージ人員は多めが良いと思う」
「偵察、妨害、陽動はパーティって言うよりソロが個々で動くからメッセージの重要性はある意味他の所の比じゃない気がするんだけど……どうなんだ?」
色んな人が意見を言い、それらを纏める。協力的な人が多くて助かる。まぁ人数が人数だからまだ纏まれるのかもしれない。これが500人、1000人ならもう僕にはお手上げだ
「では、攻撃に142名でメッセージは8人、防衛系は170名にメッセージが10人、偵察系に12名で全員がメッセージを。これで皆さんよろしいでしょうか?」
「「「「「異議無し!」」」」」
やったぜ
「それじゃあまず攻撃をやりたい方は挙手願います。出来るだけ皆さんの意見を尊重したいのでさっきのは目安程度にしましょう」
キッチリ分けた人数の通りに行くとは思っていない。ある程度は誤差だ
「皆様の協力に感謝します!おかげさまである程度纏まりました。後は各班でメッセージを使う方を選んでいただけますか?」
とりあえず攻撃が148名、防衛が167名、偵察系9名になり、偵察に割り振っていた3名分を攻撃に2、防衛に1を割り振り、攻撃10、防衛11、偵察9にして割り振りが終わったのであとはその班の中で決めてもらおう。僕?僕は当然偵察系に立候補したから煩わしさとはオサラバだ。メッセージ役を決めちゃえば後はもう各自頑張ってもらうしかないし、とりあえず僕は指揮官として自分が得た情報と他の人から得た情報をマップに纏めて他の人が戦いやすくするように頑張るか。名ばかり指揮官だぁ……