神時代
「そりゃありがたい。コイツも神時代に作られたものだが、パーツはバラバラに散ってしまってるからな……もう一度動ける様に頑張って集めてくれ」
「気になってたんですけど神時代?ってどんな時代なんです?」
さっきからちょくちょく出て気になってたけど神時代ってなんだろう?
「神時代は、旅人達が来るよりもずっと昔に神々が争ってたそりゃ危ない時代よ」
「神様の戦い……流石にそんな時代に居たら僕はあっという間に死んじゃいそうだな……」
「まぁ今の儂にも勝てん旅人連中なら、何千人居ようがあの時代では神の1柱さえ倒せんだろうな!カッカッカ!」
危ないとかのレベルじゃなかった。その時代だったら木の実を集めようとか魚釣ろうなんて軽い考えで外に出たら即座にお陀仏だ
「まぁその時代で神々が戦って色々産まれたんだがな?あの時代に比べたら今は平和なもんよ」
そりゃそうでしょうよ……ゲームだとしてもその神時代でプレイしてね?ってなったらバランスなんてあったもんじゃない
「この人形はその時代に出来たもの……それって修復しても大丈夫なんでしょうか?」
今更だけどそんな危なっかしい時代にあったものを直して大暴れとかされちゃったら僕じゃどうしようもなくなっちゃうと思う
「おん?もしかして暴走したらーとか考えてんのか?」
「はい」
「その人形は使う奴の魔力を吸って動くから使う奴の魔力が空になれば人形も動けなくなるんだよ。だから暴走したところで魔力を吸い取り過ぎて直ぐに動けなくなるさ」
「はぇー」
アトラさんめっちゃ詳しいけどもしかして……
「アトラさんってもしかして神時代からの生き残りとかだったりして……なーんちゃって」
「そうだぞ?」
アトラさんの軽い返事で流されかけたけどそんな危ない時代を生き延びた凄い人だったのか……人じゃ無いけど
「アトラさんってやっぱり凄い方だったんだなぁ……まぁそれは置いておいて。アトラさん?ちょっと糸を貰いたいんですけど」
「置いておいてって……さっきの話を聞いてよくそんな切り替えが出来るな……?」
だって事実は変わらないし、僕の用件も終わらせたいし……
「もう今更かなって。とりあえずワリアさんとぶつかっちゃってバラバラにしちゃったのを直した時に小さい骨が出てきて……これなんですけど」
「ほう?こんなものがアイツに……」
封力の魔骨をアトラさんに見せる。骨だけだとローブに付いてるポケットに入れるくらいしかないからすぐに取り出せる
「これだけだと落としちゃいそうなんでアトラさんに糸を貰って結んで首飾りにでもしようかなって……あっさっきちのりんに貰った小瓶も一緒に出来れば首飾りにしたいかも」
ついでにブラッドアミュレットも出す
「ほう?それも首飾りにしたいのか?」
「アトラさんに連れて来てもらったこの村で出会ったワリアさんとちのりんがくれた感謝の印ですから……ポケットに入れるより首からさげたいかなって」
特に2人は気にしていなかった可能性もあるけど僕としては嬉しい物だったからそんな物をポケットに突っ込んでおくだけなんて忍びないのだ
「一応糸はやっても良いが……まだやれんな?」
「今はまだ渡せない?それならこの2つはアトラさんが預かっててくれませんか?」
「む?」
「今の僕には過ぎた物だと思うし、何よりアトラさんなら安心して渡せるから」
どう見ても性能が今の僕に強すぎる気がしてたからアトラさんに預かってもらった方が良い気がする。姫様のお守りは……まぁ腰のベルトに縛り付けられる紐が付いてたから……ね?
「よかろう。儂が預かっといてやる。一つ言うとするならドナークとハチが言っているあやつにも優しくしてやれ。仲間外れは可哀想だからな」
「それは言われなくてもそのつもりですけど……兎肉のローストをあげたら何処か行っちゃったんですよね」
ホーンラビットか……って呟いて村の何処かに行ったのは見たけどそれ以降は姫様の所行ったりで見ていないから今どこに居るのかは分からない……
「おーい!ハチー!」
噂をすればドナークさんが帰ってき……ってなんだ!?
「おいおい、何匹倒してきたんだ?」
「多分20匹くらいだ!ハチ。兎肉のローストが美味かったからもっと作ってくれ!」
肉をどっさりと持って現れたドナークさん。生肉を棒に沢山吊るしてに持ってるし、返り血?みたいなのが頬に付いてる……
「20って……流石に焚き火だけじゃちょっとキツイかも……」
流石に20匹分も肉を焼くのは木材が足りない。今作れと言われても少し困るな……
「そんじゃ家貸してやるから料理してくれ」
「ん?ドナークさんの家って調理場でもあるんですか?」
「ここの住人で料理出来そうなの、他に誰が居る?」
「あぁ……まぁ出来そうで言えば姫様もでしょうけどドナークさんなら料理出来ても何の不思議も無いですね」
住人として住んでいるならドナークさんの家に調理設備があっても不思議では無い
「じゃあドナークさんの所で料理させてもらいますね?」
設備があるなら棒に刺して焼くだけの今より良い物が作れるかもしれない。調味料とかもあれば使わせてもらえるかなぁ?
「待ってました!それじゃあアトラ様!私達はこれで!」
「うおっ!アトラさんまたねー!」
ドナークさんの尻尾の先で捕らえられ、連行される。どうしてヴァイア様といい、ドナークさんといい、人の事を尻尾で捕まえるんですかねぇ?
「お、おう……またなー」
困惑しながらも見送るアトラさんを見ながら僕はドナークさんの家に運ばれた