トラフォトータス
「来たぞ、あいつだァ……」
「陸亀?」
4本の足で坑道を歩く全身岩だらけの陸亀みたいな魔物が出てきた。2mくらいの大きさだから避けて通るのも難しい
「攻撃が来るぞ!気を付けろ!」
「えっ!遠距離タイプ!?」
亀と僕達の距離があるが、甲羅の一部が開き、こっちに砲身の様な器官が出てきた。撃ってくるのか?
「ヌァァ」
不思議な鳴き声と共に砲身から一発。何かが発射された
「これは……?」
撃たれたので回避しようと思ったけど、発射された物をよく見るとただの石では無く、少しキラキラした物だったので【受け流し】を使用しつつ、体を回転させて発射物の勢いを殺してキャッチする
「ダイコーンさん!これが例の鉱石ですか?」
「そいつは……あぁそうだ!それが求めてた鉱石だ!」
なるほど、素材を取る手段ってこういうのもあるんだ。よし、ならもっと撃ってこい!
「ヌァ……ヌァ……ヌァァ!」
「ベアベア?(もうちょい撃ってよ?)ベアーベアベアベーア!(鉱石はあればある分だけ嬉しいんだから!)」
「おいおい、見ない間にまたすげぇ事になってんな?」
僕の足元には結構な量の鉱石が積み上がっている。そして亀は鉱石発射の疲労からか、息が荒い。もうそろそろで終わりそうだけど……油断はしないようにしよう
「ヌガァァァ!」
「でかっ!?」
最後の一発とでも言わんばかりの直径50cmは有りそうな赤い弾が発射された。これは一番価値が高そうだけど、威力もヤバそうだ……
「伏せて!」
ダイコーンさんとはんぺん、しらたきに地面に伏せさせて、撃ち出された赤い弾を両手で掴み、バク宙を繰り返して弾の勢いを殺していく。これヤバいな……全然勢いを抑えきれない!
「しらたき!行け!」
「ーーー(はい!)」
壁にぶつかりそうになる前に、女性っぽい形をしたスライムのしらたきちゃんが僕と坑道の壁の間に入る
「ありがとう!助かったよ。ダイコーンさん行けますか!」
何とかしらたきちゃんに衝撃を吸収してもらい、赤い弾を止める事に成功したのでダイコーンさんに最後のトドメを頼んだが……
「悪い!それは出来ない!しらたき!ハチを飛ばせ!」
「ーーー(行きます!)」
何故か僕がやるように言われて、しらたきちゃんに飛ばされたので陸亀にキックで突っ込むしかない。頭から行ったら絶対僕の頭の方が割れる。ここに来るまでの間はダイコーンさん達が戦ってたのにな……
「はあっ!」
シロクマキャノンキックで亀の頭に突撃する
「ヌグッ!?」
「まだだ!」
頭にキックが入って落下してからしっかりと両足を地面に着き、甲羅の下からアッパー掌底を叩き込む。様々なバフが入っている状態、しかも体勢がしっかりした状態からの攻撃であればかなりの一撃が放てる
「はぁ!」
「ブゴォッ!?」
掌底の衝撃が突き抜け、背中の甲羅が弾ける。時間が経っているからかバフとデバフですげぇ……
「すげぇな、本当にやっちまったよ……」
「なんか案外脆いですね?お?」
『スキル 【バレットキャッチャー】を入手』
『【バレットキャッチャー】 パッシブスキル 弾や矢などの攻撃の勢いを殺し、手で止める事が出来る』
これはさっきの鉱石弾を止めてたお陰か。逸らさないで止める事が出来るのは嬉しい
「そういえばさっきなんで僕が攻撃頼んだのに拒否したんです?」
「そりゃあ、こういうダンジョンで俺達が攻撃に参加しちまうと乱入になるから経験値もアイテムもペナルティが入っちまうからな……お互いにそれは良くねぇだろう?フレンド間なら乱入して悪いで済むが、他人とならそれは喧嘩の火種になっちまう……今の俺達だとハチは経験値が欲しい、俺はアイテムが欲しい。ならハチとパーティじゃねぇ俺達は攻撃に参加しないのがお互いの利益になるってこったぁ!」
あぁ、それなら確かにバッドマナーとか抜きにして攻撃に参加しない方がお得なのか。パーティに途中で加入するとかしたら回避出来そうだけど戦闘中にやるのは面倒だしな……ハスバさんと四剣を倒した時は離脱だったけど、加入は面倒そうだな……
「で、これが必要な鉱石であってます?」
「あぁ、これだよこれ!やっぱりハチ君に頼んで正解だった!一度にこんなに入手出来るなんてな……あのトラフォトータスもレアな奴で、しかもこのトラフォタイトもそんなに取れないから困ってたんだ。なるほどな、弾丸に使われていたから素材として取れる率が少なかったのか……」
「この赤いの大きいし、なんか特別っぽいからこれもバイク改造に使えないですかね?」
トラフォタイトと呼ばれる鉱石とは違うみたいだけど赤いし何か別の物には使えそう。そもそも素材は全部あげるつもりだし、要らないって言われる方が困るけど
「そういや、これは見た事がないな……はぁ?濃縮トラフォニウム?」
トラフォタイトとは別なのかな?
「とりあえず先に進みましょう。あの亀を倒していけば先に進める様になるから調査って体で倒してこいって事だったんですよね?」
「あ、あぁ……だが、あれほど簡単にトラフォトータスって倒せたか?まさかこの濃縮トラフォニウムが何か関係している可能性が?ハチ君、次にトラフォトータスが出て来たら弾は躱しても良いからとにかく早く倒してみてくれないか?」
「何か調べたいんですね?分かりました。次は出来るだけ頑張って早く倒してみます」
効率良く倒せるかは分からないけど出来るだけ早く倒してみよう