引き際
「グォォ……」
体の半分まで口が開くと逆に開いた口の端から触手斬撃で切り開き、上下に真っ二つだ。正直真っ二つにしたのにまだ若干動いていたのでちょっと引いた。まぁ追加で1撃与えたら動かなくなったので何とかなった
「ってなんかサメいっぱい来たぞ!?」
サメが10匹程やってきた。仕返しか?
「だけど今の僕にはありがたい!全部片付けてやる!」
倒し方は分かってる。全部倒して経験値だ
「全部僕に向かって直線移動……連携を取るって言うより誰が一番に僕を喰うか競ってるだけみたいだな。こんな連携も出来ない奴らに負けたら黒武と白武に幻滅されちゃうな……」
ゴーストヴァルキリエさんはノーカンで……
「ま、こんな所で死ぬ気は無いね。はぁ!」
喰いに来るサメを撫でるように躱し、口の両サイドを切り裂いていく。おぉ鮫肌~
「素材は要らない。経験値だ!」
切り裂いたサメは海の底に沈んでいく。あれは取りに行かなくても良い。勝手に魚が食べてくれるだろう
「【解除】【イリュジオ】【ディジャヴ】【アビスフォーム】!」
魔法を使う為に一旦【アビスフォーム】を解除して【イリュジオ】で幻影を出し、【ディジャヴ】で自分の場所をずらす。サメ達は幻影の僕の方に殺到してるけどその隙にまた【アビスフォーム】を使用してサメを上下に真っ二つにする作業を再開する
「おっと……流石にそんな大物が来るなんて聞いて無いぞ?クラーケンさん」
襲ってきたサメを倒し、何とかなったって思ってたけどこっちに急速に接近してくるかなり大きい存在のオーラを感じ取った。っていうかもう見えてる。あまりにも大きい奴だとオーラの感知距離と目視の距離が変わらないな……
「そのサメあげるよ。じゃあね!」
サメの死体からは赤いポリゴンが出ているので血の匂いに引き寄せられた感じかな?多分獲物としてはそっちをターゲットにすると思うから今の内に逃げよう。まだクラーケン相手にまともに戦える気も勝てる気もしない。せめて陸か足が着く程度の浅瀬くらいじゃないとクラーケンの前に立つ事も厳しいと思うので今は逃げる。ここで死んだらレベル上げが出来ない
「三十六計逃げるに如かず~」
いつか、いつか絶対に倒してやるからなぁ?その為にも今は逃げる!
「いやぁ、追いかけてくる限界があるみたいで良かった……」
サメの死体を貪り喰らったら即座にこっちに来たからめちゃめちゃ焦った。追撃も途中で止まってくれたから逃げ切る事が出来たけど、かなり危険だったなぁ……でも危険だけど充分経験値を稼ぐ手段を見つけた。引き際を見極め、後少しと戦果を欲張らない気持ちを持てばレベルアップする事が出来そうだ
「引き際って重要だね」
クラーケンが来る限界までやってしまうとクラーケンが居なくなるまで待たなきゃいけないので効率が落ちる。一回の量が少なくても引き際を弁えて色んな所を回ってみる事である程度の効率をキープ出来た。そして……
『Lv43にレベルアップしました 魔法【ノイジック】を習得』
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ハチ 補助術士Lv43 天衣無縫の器Lv4
HP 570→580
MP 985→1000
STR 36
DEF 35→36
INT 62→63
MIND 146→148
AGI 114→116
DEX 134→136
成長ポイント 30
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『ノイジック 消費MP200 発動者の周囲30m内にノイズゾーン(魔法とスキルの発動を中確率で失敗させる)を5秒間展開する』
「いやぁ、遂にMPが1000に到達したなぁ……それにこの魔法、僕は大丈夫だろうけど周り全部に効果がありそうだから味方が居たらこれ発動しにくいな?」
「んー、【ノイジック】」
コーンッ!と少し甲高い潜水艦のソナーみたいな音と波動が僕を中心に水の中に広がった。丁度近くに居た魚が【ノイジック】に当たり、気絶したようでピクピクしながら浮き上がっていった。陸だと音も違いそうだな
「ほぉ、こうなるか」
失敗させるって効果は超音波的な音で耳を塞がせる事で失敗させるのか。そりゃ確定で失敗するハズだ。【ノイジック】を至近距離で発動した時に失敗した場合、魔法発動中の僕の隙を突かれる。これは弓とかを相手にする時が一番使えそうだ
「まぁでも後で確かめてみよう」
水中と陸上では効果が若干変わるかもしれない。オーブさんの所で確かめる事は必要だろう
「これは向こうじゃ試せないから今の内に練習しないとなぁ……【淵伝】」
あと【アビスフォーム】もちょっと強化された。これがまた便利と不便の中間くらいで面白いスキルだ
『【淵伝】 深淵を通し、触手を自身から離れた場所に出現させる事が出来る』
このスキルは【アビスフォーム】中に僕の背中から出ている触手を僕から離れた所に出す事が出来るスキルだ。但し、出現させるポイントには事前に深淵の穴が出てしまうので戦闘に使うにはちょっと工夫がいるスキルだよなぁ……
「うん、今日はもう時間的に無理かな。明日の1日でどこまで頑張れるかな?」
流石に旅行から帰ってきたその日で出来る事はたかが知れてる。明日明後日と頑張れるように今日は寝よう。そうだ、今日は崖に糸を張って寝るか