急用
「いやいや悪いね?米が一部出回ってきたって情報は入ってたけど時間が無くてまだ食べてなかったんだよ」
ここはホフマンさんのお店(フォーシアス店)だ。テーブルに着いて料理が来るのを待っているが、チェルシーさんはまだ米を食べてないらしい
「まぁ4人1席だから席数変わらねぇし、こっちは構わねぇが……トーマも食材提供者の1人だからな。これが食えるのもトーマが貝を取ってきたからだぞ?お前らも感謝して喰えよ?」
ホフマンさんがパエリアを4つ持ってきた。なるほど、この魚介のパエリアの貝はトーマ君が取ってきたのか。海で集めたのかな?
「本来ならもっと安く喰わせてやりたかったんだが、米が思いの外高くてな……生産量は増えるからこれからは少しずつ安くなるとは言ってたが……まぁ今の価格で喰いたい奴はそうそう居なくてな……食材を持ってきてもらったのにすまねぇ」
「そんな事言わないでください!自分だって貝を拾って来ただけですからタダで食べられる方がお門違いです!」
「うっ……」
やめてくれ、その言葉は僕に効く
「まぁゆっくりしてくれよ。はい、らっしゃい!」
新しいお客さんが入って来たのでホフマンさんは厨房に戻って行った。忙しそうだなぁ……
「お金を払って食べるのが普通だよね……ハハハこのパエリア美味しいなぁ」
「「「あっ」」」
このパエリアは確かに美味い。僕はここまで手の凝った料理は作れないし、お金を払って食べる料理はやっぱ凄いなぁ……
「なんか、すまん」
「なんか、ごめんなさい」
「あわわ、ハチさん落ち込まないでください。ハチさんの料理だって美味しいですから」
「あ、フォローはしなくて良いよ。ただの冗談だから。でもこのパエリア本当に美味しいよ?皆も冷めないうちに食べた方が良いよ」
ちょっと冗談としては良くなかったかも。もう少し軽めの冗談にするべきだったか……加減ミスったな
「そういう冗談か冗談じゃないのか見極め難いのはやめてくれ……ツッコんで良いのかダメなのかも分からないぞ」
「お金を使わない人のそういうお金ジョークはね……」
「ダメですよハチさん。流石にそれは分からないです」
「ごめんなさい……」
怒られちゃった
「美味しかった!急なお願いだったのにありがとうね。トーマ君!」
「美味かった!トーマ君ありがとうな!やっと米料理が喰えた……」
「ご馳走様でした。今度何か美味しい物をご馳走出来る様に頑張るよ」
パエリアのサフランライスは結構しっかりしたものだと思うけど、サフランは何処で入手したのかな?野菜と魚介の旨味もあったのでとても美味かったし、真似出来る物なら真似してみたい。でも僕の環境で真似出来るかな?
「ん?これは……メール?」
どうやら前にスマホを連携した時の副産物というか現実で連絡先を交換した人からのメールをお知らせしてくれる機能があったのでそれ経由で誰かからメールが来ている
「ゴメン!急用が出来ちゃった。トーマ君、本当に美味しかったよありがとう!」
メールを確認し、急いで皆と別れてアストライトに向かう。あの家くらいじゃないと長期で休めない
「ん?どうしたんだろう?あんなに急いで……」
「何か通知が来てたみたいだし、現実で来客とかあったんじゃない?」
「電話が来たとかだろうな。どうしてもこっちと現実では体感時間とかの問題で現実とゲームを越えた通話は難しいからな」
ゲーム内と現実では約3倍程度時間が違う。その差を考慮すると電話はとても難しい。そうなればゲーム内で話すか、現実で話すかのどちらかに行くのが一番手っ取り早い
「なるほどー、でもどうしましょう?ハチさん居なくなっちゃいましたし、あの狩り方はちょっと続けられないかと……」
「まぁ別にあのくらいで良いだろう。そもそもここに居る誰かさんが情報を拡散したらその瞬間からこの辺りは人だかりで大変になるぞ?レベル上げよりも何かスキルや魔法を探してみるって言うのはどうだい?」
「そうそう見つかるとは思えませんがやってみましょう!」
「なんか情報出たら頼むねー。さて、纏めますか」
ハチと別れてから新能力探し、情報を売る為に纏める作業と今後の事決めて、ホフマンさんのお店を出た
「まさか父さんと母さんがまた帰って来れるなんて」
経過観察と言うべきか、心配だろうしもう一度帰って様子を見てきてあげな?と会社からのはからいでまた帰って来ることが出来るらしい。で、サプライズでその事を黙って日本まで既に帰って来てるんだけど、父さんが片付けたり、何か準備する事もあるかと母さんに黙ってこっそり連絡してくれたみたいだ。今の内に家の掃除を済ませておこう
「影人ただいまー!」
「うおっ!母さん?帰って来るなら一言言ってよー」
抱き着いてきた母さんには見えないように後ろからゆっくり入ってきた父さんにウィンクする。父さんもウィンクで返事をし、男同士の無言のやり取りでバッチリ綺麗に掃除した家で母さん達を出迎える事が出来た。最近若干掃除をサボっていたのもあったから父さんからのメールは警告としては丁度良かったかも
「影人、温泉行きましょ!」
「えっ?」