腹黒
フォーシアスに戻り、情報屋を探してみると丁度チェルシーさんが居たので情報を売る事にする
「またハチ君がらみかぁ……でもこれならしっかりとした情報とアイテムがあるから出来なくは無いし、何よりハチ君以外でも出来るっていうのがポイント高い!その疑似回復薬量産出来そう?」
「えっ、はっ、はい!作り方は覚えてるので量産は可能です」
ワザと失敗する必要のある疑似回復薬。それを作れるのは現在トーマ君だけだ
「流石に作り方とかは……」
「そ、それは教えるなって言われてるんで……」
トーマ君がハスバさんに言われた通り製造法は教えないように何とか頑張ってる
「ちっ、そこはしっかりしてるのね……」
「え?何か言いました?」
「いやいや、それじゃあ情報料とは別にその疑似回復薬は1つ3万でどう?」
チェルシーさんの小声で言った事は僕はしっかり聞き取れた。トーマ君はこういう情報を売るのは初めてなのか緊張していたみたいで聞き逃しちゃったみたいだ
「やっぱ腹黒なんじゃ?」
「作り方を教えたらこれ以上毟れないだろう?」
「うわぁ……こっちもだぁ」
どっちも腹黒だった。うん、でもお金のやり取りをするならこういう考えが出来ないと毟られる立場になるんだろうな……まぁお金に関しては持ってないから毟るも毟られるも僕には関係無いんだけどねっ!
「もう少し高くても良いんじゃないか?」
「おっと、他所から情報料に関して言うのはどうかと思うけど?」
ハスバさんが吹っ掛けるみたいだ。交渉テクを見せてもらおう
「一応私も関係者だから値段について交渉する権利はある。疑似回復薬に関しては現在製法を知っているのはこのトーマ君だけ。それに完成しているのはここに有る分だけだ。それに今はイベント前……イベント前はレベルを上げたい奴が沢山……それに手負いのフグメタを倒した時は通常の奴より多くの経験値を入手出来たぞ?今だけ高めに設定して、イベントが終わってから値段を徐々に下げれば良いじゃないか?どうだ?今だけ1つ8万で設定して売る時は10万。イベント終了後は4万で売るから5万で販売。ある程度時間が経ったら1つ1万で売るから3万で販売する……どうだ?悪い話じゃ無いだろう?」
「必要な時に高く売り、必要が無くなった時は安く……オッケー。こっちも儲けさせてもらうわ!」
ガシッと握手をするハスバさんとチェルシーさん。2人ともわっるい笑顔してるなぁ……
「それで、いくつ用意出来る?」
「ば、場所を用意してくれればとりあえず100個は作れるかと……」
「素材は良いの?」
「素材は何とか揃ってるんで大丈夫です!」
場所だけ借りて作るみたいだ。しっかりと情報が漏れないようにしているな……
「それじゃあその100個、この場で買い取るわ。良いかしら?」
「はい!今から作るんでお待ちください」
「ええ、それじゃあ交渉成立ね!」
「はい!」
今度はトーマ君と握手するチェルシーさん。あぁ、トーマ君は屈託の無い笑顔だけどチェルシーさんは若干悔しさを隠した様な含みのある笑顔っぽい
「これでエン君とヨウちゃんに美味しいご飯を食べさせられるし、2人にも最近出来たっていう美味しいパエリアをご馳走出来ます!あ、後は錬金用のアイテムとかも買えますね!」
「ぐっ!?」
うん、トーマ君良い子だなぁ……自分の事よりも先に召喚獣達や僕達にご馳走したいとか……チェルシーさんも心理的ダメージを受けているのか胸と頭を押さえている。見なさいこの穢れの無いトーマ君を
「どうかしましたか?とりあえずこれから作ってくるのであのテント借りますね?」
「え、えぇ……頼んだわ」
外に置かれた小さめのテントにトーマ君が入り、錬金を始める。勿論入口を閉じてハスバさんを門番として立たせる
「あんな子から搾取なんて私には無理だわ……」
「最初からそんな事考えなきゃ良かったのに、搾取するならハスバさんみたいな悪い大人からにすれば良いんですよ」
「ハチ君から飛んで来る悪口は心地が良いねぇ!もっと言っても良いんだぞぉ?」
悪口を言って喜ぶのやめてくれないかな?
「大体さっきの悪そうな会話しておいて何を今更って感じですけど、まぁ自業自得ですよね」
「ぐっ……」
こういう時はぐうの音も出ないって言うべきだろうけど「ぐっ……」って言われてしまった。まぁ言われたからどうだって事では無いんだけどね?
「ふぅ、終わりました!これどうぞ」
「うん、100個確かに……はい、これが情報と薬の代金ね」
「うわぁ凄い金貨の量!確かに頂きました!」
まぁプレイヤー同士のやり取りならお金をちょろまかす事は出来ないだろう。ここでトーマ君を騙してたらチェルシーさんはマジで軽蔑する
「さぁ、2人とも行きましょう!ご飯食べましょう!」
「あぁ、行こうか。やっと私も米が食えるんだな」
「パエリアかぁ……美味しそうだな」
パエリアとかまだ作った事無いから楽しみだな
「お金が入ったんでやっと頼む事が出来ます!ホフマンさんのお店に行きましょう!」
「ホフマンさんの所か、じゃあ美味いのは確定だな」
「もう連絡してあるんで行けばすぐに出来たてのパエリアを食べられますよ!」
「それ、私も行っちゃだめ?パエリア食べたい……もちろんお金は出すから」
なんだ?チェルシーさんもついて来るつもりか?
「一応場所を取る事は出来ると思いますけど……連絡してみます」
どうやらパエリアを食べに行くのにもう一人メンバーが増えそうだ……