久々の人
「やっぱこれは一長一短だな……僕は良いけど他に仲間が居る場合は打撃主体に移行されたら対処出来なくなるかも……」
今は白い空間で叢を数か所出してもらって、マネキンさんがその叢を隠れて僕を攻撃したら別の所に隠れてもらうっていうのを繰り返している。叢に突っ込んでいるのに音がしない。飛び出してきても音がしない。どうやら掛けた相手が出そうとする音全てが消されるみたいだ。【察気術】を取る前の音で接近を察知していた僕だったら間違いなくやられてたなぁ……
「使う相手には気を付けないとだな」
ロザリーさんみたいな近接も魔法も出来る人、キリエさんみたいな銃で遠距離攻撃出来る人であればこれは掛けた所で意味がないかもしれない。というか魔法が使えない以外は音を消せるからむしろ強化か?
「普通の沈黙効果と違ってこれは会話が出来ないとわざわざ記載されているので、旅人同士でのやり取りも制限出来ると思われます」
「それってメッセージ機能とか?」
「そうですね。そういった機能での意思疎通を止められるハズです」
「はぇ~」
となると、何かの発覚する時間を誤魔化したい時とかに使えそう。どっかに潜入とかした時に見張りに対して無力化する時に使って、事が終わった後に解除すれば無事に事後報告。見張りは怒られるだろう。
「それは結構良いかも。今度のイベントで使えそう」
「ハチ様は確か魔王軍に加入されるんでしたね?」
「うん」
「では、ちょっとした情報を……今回のイベント、施設を修復するにはその施設の場に勇者軍の旅人が居る事で一応修復は進みますが、早く修復する為には資材が必要です。施設を修復されないように防衛するのも良いですが、そもそもの資材を入手されないようにするのも1つの手段でしょう」
ほうほう、資材か……木とか石とか、直接的じゃ無いのだと食料とかもそうかな?
「もしかしてその修復する場所に旅人が多い方が修復早くなったりする?」
「一概には言えませんが、基本的に手伝う人間が増えれば、その分修復は早くなります。そして旅人の中に大工などが居れば修復速度が更に上がるでしょう。あとは修復する施設の規模も小さい所であれば早く修復が出来る分、効果は小さく、大きい所であれば時間は掛かりますが、修復出来た場合は大きな効果を発揮するでしょうね」
「小さい所は旅人を派遣するだけで、大きい所は資材と旅人をガッツリ使って修復か……人海戦術でデカい施設を集中して修復される。でも資材が無いとすぐには修復出来ないから資材調達をする奴らを襲えば時間を稼げるかな?」
7日間で魔王を倒すとなれば大きな施設の修復は最重要課題だろう。森とか鉱山を防衛するのもこっちの少ない人員を有効に使う手段かも
「マネキンさんも検証手伝ってくれてありがとう」
MPをまた払ってマネキンさんに掛けていたハシャフを解除する
「これが役目なのでまたご利用の際はお気軽にお呼びください。出来れば攻撃する側で」
「やっぱり今までの分全部覚えてましたよね?ごめんなさい」
やばいよ、絶対今まで僕がやってきた分の事恨んでるよ……
「……今後はお手柔らかに」
「以後気を付けます……」
マネキンさんに今まで結構な事をやっていた覚えはある。物言わぬマネキンだからと割と雑な扱いをしていたかも……今後はもっと優しくしようそうしよう
「また何か試したい事があったら来ます。今度はそこまでマネキンさんに負担にならないようなものにしたいとは思ってますが、負担になる物だったらごめんなさい」
「お気になさらずに、先程のは冗談です」
これが本当に冗談だったのか違うのかは分からない。でも今まで通りで良いと捉えても良いのかな?
「イベントまでの日数は残り少ないですが、頑張ってください」
「ありがとう。頑張るよ!」
オーブさんに見送られてプラクティスゾーンから退場する
「設計段階では勇者軍が有利な設計ですが……そんな設定もハチ様ならひっくり返してしまうかもしれませんね。机上の空論と想定外の存在。どちらが勝つか楽しみです」
「さて、サーディライに戻ろう」
あの場所は苦手だけど何処かに行くにしても泉を使わなければ一気に遠くには行けない。まだ喧嘩祭りやってるのかな?
紫電ボードで沼地を越え、サーディライへと向かう。風で靡いている黒マフラーがカッコイイな?装備者以外に触れないみたいな説明文の通りに枝とかにマフラーが引っかかったりしないから見た目と実用性を兼ね備えた良いアイテムだ。これを掴んで僕の動きを止めようとする相手とかには掴めなくて隙を作るチャンスにもなるかな?
「まだ喧嘩祭りをしてるかな?」
サーディライに戻り、泉に行くまでにまだ喧嘩祭りをしていたらどうしよう?
「おっ?終わってるみたい」
「良かった、喧嘩祭りとか長く続いたらマジで死人が出てもおかしくないしなぁ……」
プレイヤーならまだしも、住人が巻き込まれてたら死んでしまう可能性だってある。個人的にはついさっきまで死後の世界に行っていたからあんまり喧嘩祭りの様な危ない祭りはしないで欲しいなぁ……
「たまにはあの人に連絡してみるか」
自分で探すのが良いだろうけど最近会話らしい会話もしてなかったし、ハスバさんにメッセージを送るか
『今お時間ありますか?』
『おやおや?私の事は既に忘れていたかと思ったよ』
『忘れていても良かったですが、一応数少ないフレンドですからね』
『トゥンク……もしかしてそっちのケがあるのかい?まぁハチ君ならやぶさかでもない』
『どこに居ますか?今すぐ会いたいです』
『その文だけ見れば勘違いしそうだけど、絶対それ最後に見えない(殺意)が付いてるよね?』
『そんな事無いですよ(抹殺)』
『うん、済まなかった。だから命だけは……』
『冗談は置いておいて、今サーディライに居るんですけど、今から何処か行きませんか?』
「そりゃ良いや。何処に行く?」
背後から急に声がする。まぁオーラで近寄って来ていたのは分かっていたので驚きはしない
「じゃあフォーシアス辺りでも行きますか」
「えぇ……リアクション無し?」
振り向きざまに鳩尾に一発入れた方が良かったかな?




