死神の使徒
「うわぁ、こんな良い店舗を使って良いんですか?」
「そうにゃ、頑張って盛り上げてくれにゃ」
どうやらこのお店を使う予定の幽霊がやってきたみたいだ。僕が壁をペンキで修復しておいたから外からの見た目は綺麗だし、黒猫の死神さんが内装を終わらせていたので新しい看板に変えれば今すぐにでも開店出来そうだな?まぁ何を売ったりするのかは分からないけど
「はい!頑張ります!」
「それじゃあもう行くにゃ。必要な物とかがあったらまた呼ぶのにゃ」
「はい!」
黒猫の死神さんと幽霊が会話している所に割り込むのもどうかと思ったのでとりあえず何も言わずに黒猫の死神さんについて行った
「あのお店って何をやるんです?」
「にゃんか喫茶店をやりたいとか言ってたにゃ。一度に収容できる客は少なくても落ち着いた雰囲気が好きって子も居るだろうからにゃ。それよりも手伝ってくれてありがとうにゃ。ペンキ塗りは時間が掛かるからやってもらえて助かったにゃ」
その猫の体だと確かにペンキを塗るのは大変だろうな。まぁ内装をどうやったのかは見てないから分からないんだけど……
「ふむふむ、色々手伝ってもらったみたいだにゃ……うん、推薦するかにゃ」
「推薦?」
「君に死神の仕事をさせるのは可哀想だからその首巻きにしたみたいだけど、ここまで優秀だと流石にタダで現世に還すのは惜しいにゃ。死神の使徒に推薦するにゃ」
何か怖い事言い出したよ?死神さん。現世に還さないは流石に怖すぎる
「……それは具体的に僕は何をするんです?」
「君が違う私と最初に会った時の様に現世の幽霊を導いてくれればそれで良いにゃ。要するに今までは非公認だったけど推薦が通ればこれからは死神公認って事にゃ。そうなれば向こうの迷子をこっちに送る時も抵抗が少なくなるかもにゃ」
なるほど、幽霊は結構抵抗が無く簡単に送れたけどゾンビの時は縛り付けたりしないといけなかったし、その手の敵が抵抗しなくなるのは単純に嬉しい。それに今までと一緒なら別に推薦されても問題無いか?
「それって何か会議とかあるんですか?お仕事の邪魔になるなら推薦はしなくて良いんですけど……」
「忘れたかにゃ?後の楽の為に先に苦労するにゃ。それに死神3体から推薦があれば死神の使徒にゃ」
あれ?死神3体からの推薦?最初の骨のお爺さん死神に、イケメンの死神さん、そしてこの黒猫死神から推薦を受ければもう……
「……うん、今死神念話で全死神と会議してみたら君の死神の使徒推薦に3票以上入ってオッケーが出たにゃ。おめでとうにゃ君も今から死神の使徒にゃ!」
『称号 【死神の使徒】 を入手』
『【死神の使徒】 冥界で死神の仕事を複数手伝い、認められて推薦されると入手 死神(のお仕事)代行? 幽霊等を冥界に送る際、抵抗される事が少なくなる。敵が攻撃時に低確率で怯む』
使徒は敵が攻撃する時に怯む。首巻きは見ている相手が攻撃をミスする可能性が出てくる……要するに死神が死の象徴だから死を連想させて僕に対する攻撃を失敗させる事が出来る称号と装備な訳だ。確実な1回の死亡回避と確率の攻撃不発効果……ちょっとギャンブル性はあるけど連続で発動する可能性も考えるとお守りよりもやっぱりマフラーの方が良いかもな……僕の防御性能は下がるけど、MPがガッツリ伸びてくれたお陰で総合的に考えれば強くなってる気がする
「これからも現世の迷子を見つけたら頼むにゃ~」
「はい、見かけたら送ります」
【霊の恩返し】の事もあるけど、死神さん達の負担を減らすって思うなら見かけたら率先してやっていこう
「じゃあこれから頑張ってにゃ~」
「あ、はい……え?」
黒猫死神さんはそのまま何処かに飛んで行ったが、僕は連れて行ってくれなかった。え?これどうやって冥界から出るの?
「どうしよう……」
黒猫死神さんに置いて行かれて僕は何処から冥界を出られるんだろう?
「何処かに死神さんが居ないかな?」
飛んで行ってしまった死神さん以外の別の死神さんが居れば何とか現世に連れて言ってもらえたりしないかな?
「あ、あの……」
「その恰好……死神さんですか?」
オドオドした声が後ろからしたのでふりかえって見ると、長い前髪で顔は見えないものの、声色や体型的に女性っぽい……それに黒い衣に大きな鎌を持っていたのでこれは死神さんだろう
「は、はいぃ……」
「良かったぁ、黒猫死神さんに置いて行かれちゃってどうやったら現世に還れるのかと……」
「すみません……こちらのミスで」
「いえいえ、思い出して派遣されて来たんですよね?」
「えぇ、まぁ……良かったらコレをお納めください。今までのお礼と今回のお詫びも兼ねての物です……現世に戻りたいのなら今からでもお連れします……」
『開花の秘玉 を入手』
『開花の秘玉 使用すると1Lv上がる(第一職のLv50まで使用可能)』
レベルアップアイテムを貰ってしまった。Lv50までって事は高レベルになるまで使わずに取っておいても腐らせる事になるだろうから現世に戻ってから使うか。このアイテムは特定のレベル帯の人なら喉から手が出るほど欲しいアイテムだろう。黙って使っちゃうのが一番平和だな