次のお手伝いへ
「とりあえず助かったぜ」
「いえ、頼まれたからやってましたけど……流石に最初のはちょっとやり過ぎたかなって」
「何?どうやったんだ?」
「それは……」
一応チビと言われてキレてやった事を白状した
「ぶはっ!おまっ、チビって言われてキレるって!うははははっ!」
「笑い過ぎでは?」
「それを言ったら、チビって言われてブチギレて半殺しにする方がやり過ぎだろ?うはははっ!」
お腹を抱えて笑う死神さん(イケメン)冷静になれば確かにやり過ぎたとは思っている。でもそこまで笑わなくてもいいじゃん……
「わりぃわりぃ、わざわざ手伝ってくれたのに暴言を吐かれてもちゃんと仕事を全うしてくれたんだから笑っちゃ失礼だったな。すまねぇ」
「いやまぁ……そうなんですけど……なんか、なんかなぁ?」
出来ればそのまま笑ってくれた方が流せたけどキチンと謝られるとそれはそれでもにゃる。話題を変えよう
「他に何か手伝ったりした方が良い事とかありますか?」
「んー?手伝ってほしい事か……」
手伝える事があればそっちに行けるし、無いとしても今考えさせる事で話を逸らす事が出来る
「おぉそうだ!じゃあ施設の修復を手伝ってくれるか?あっちも手が足りてなくてよ?」
「分かりました。というか死神って結構ハードな仕事なんですね……そりゃあ1人じゃ回せる訳が無いか」
現世で彷徨ってる幽霊回収に冥界の維持とかその他諸々は中々にハードだ。そりゃキツイに決まってる
「とりあえず修復して欲しい所にも1体死神は居るからそっちに説明は任せる。んじゃ行くぞ?」
「……何で背中を掴んでるんです?」
僕の背中を掴み爽やかな笑みで行くぞと言う。どうせ飛んでいくのなら腕を掴んでほしい所だけど
「喋らない方が良いぜ?舌噛むぞ?」
「え?」
「おーらよ!」
「ちょ!?」
僕をちょっとだけ上に投げたかと思ったら大鎌を使ってトスバッティングするように飛ばされた。何とか体勢を整えて大鎌の側面を足裏で捉えてぶっ飛ばされる
「向こうの死神にもよろしくなー!」
「もう少しちゃんと送ってくださいよぉ!」
「うははははっ!」
さては僕で遊んでるな?空気抵抗とか人が飛ばされても大したことないだろうと思っていたけど、ここは冥界。それに死神さんによって飛ばされたからか、ただ真っ直ぐ飛ぶのではなく、空中で軌道修正され、徐々に僕が次に手伝うだろう場所が見えてきた。結構壁がボロボロになってるなぁ
「おっ、君がお手伝いさんかにゃ?待ってたにゃ。じゃあこっちを頼むにゃ」
「本当に色んな死神さんが居るんですね……」
僕が飛ばされた先。ボロボロの壁や、壊れた看板がある元はお店を何かやっていただろう場所の修復。そこに居た死神さんは黒猫が黒い衣を纏って、首の部分の留め具が鎌の形をしていた。とりあえず死神さんは黒い衣と鎌がトレードマークなんだな
「この店舗もすぐ使える様にボロッちい所を直さにゃきゃいけないにゃ。内装はこっちでやるから外側を任せても良いかにゃ?このペンキを塗れば壁の傷は直るにゃ」
傷をペンキで隠してるだけじゃないか?と思ったけど、魔法のペンキとか言われたら何となくモルガ師匠の所での修行を思い出す。あの感じでやれば良いのかな?
「これは魔力を流すとかそういうの要ります?」
「ん?それを知ってるのかにゃ?」
「前に魔力を使ってペンキ塗りする修行をしまして……」
あれは結構しんどかったなぁ……
「修行……面白い事するにゃ?そのペンキはそこまで濃くはにゃいから込める魔力はずっと少にゃくて良いにゃ。だから外壁をよろしく頼むにゃ~」
頼まれたし、やるしかないな。よーし、ペンキ塗りやるぞぉ!
「おぉ、しっかり傷が修復されるんだな。MP消費も少ないからこれなら充分、着替えなくてもいけるな?」
この分なら祈りを使って急速MPチャージをしなくても充分だろう
「おぉ、綺麗になったにゃ。これにゃら看板を変えればすぐに新しいお店が始められるにゃ」
正直思ったのはこんな事も死神の仕事なんだなぁと思った。これは正直ここで働く人の領分だと思うんだけど……
「どうにか間に合いそうだにゃ」
「どうしてこういう事が死神さんの仕事なんです?」
とりあえず聞いてみる。分からない時は聞いてみるに限る
「これは謂わばご褒美にゃ。冥界で良い子にしてた子が天国じゃにゃくてここで私達のお手伝いがしたいって言うからその為にお店を用意してあげてるのにゃ。今苦労して、後の楽を得るのにゃ」
なるほど、その為に死神さんが店舗を用意してあげてるんだ
「やっぱり幽霊の中にも死神さん達の仕事が辛そうって思って手伝おうとする人も出てくるんですね」
「お店やら冥界ファイトクラブやら作るのは大変だったにゃ……でもそのお陰である程度を幽霊達にも任せられるから助かってる所も有るにゃ」
なるほど、確かにファイトクラブは沢山の幽霊達が盛り上がっていた。自分達の仕事を楽にする為に苦労して娯楽施設を作るって言うのも最終的には自身の楽に繋がるのか。こういう店舗もその内盛り上がってくれるのかな?
「まぁ、良いお店になってくれると良いなぁ」
せっかく準備をお手伝いしたお店だ。繁盛して死神さん達の役に立てば嬉しいな