死神さんのお礼
「いやぁ結構結構!面白かったぞぉ!まぁ流石にワシだと分かってしまうがな?」
八百長。そう言われてしまえば冷めてしまうが、あれはリングの中での1つのストーリーだ。僕が大剣以外を使う戦い方を見せ、それを学習し、使われた事で負けたというストーリーで完結。勝者は祝福されてハッピーエンドだ
「かなり危なかったですよ。あの時ちゃんと自分から跳んでなかったら衝撃をモロに喰らって僕の切り札が発動しちゃうところでしたね」
最後のタックルは避けられないと思ったので全身で何とか衝撃を吸収し、自分から跳ぶ事でダメージを最大限吸収出来たと思う。HPもギリッギリで残っていたので【光子化】も発動せずに済んだ。【光子化】が発動してしまったらそこからはもう僕が勝つシナリオが一番盛り上がるんじゃないかな?いや、【光子化】が終わるまで耐えてそこから逆転なんてやり方でも……
「切り札とな?」
「まぁ、発動しちゃうと一定時間攻撃が当たらない状態になっちゃうからあの場で発動しなくて良かったですね。あの場で発動しちゃうと絶対面白くないですから……死神さんがキャッチしてくれたお陰で何とか盛り上がったまま終わらせる事が出来たかなと思います」
盛り上げる為の戦いに攻撃が当たらない状態なんて絶対白ける。最後に死神さんがキャッチしてくれたお陰で衝撃を受ける事も、僕のダウンが嘘である事もバレずに済んだ
「確かに盛り上がっておったな。大剣キックなんて言い始めた時は何を言っているんじゃと思ったが、大剣での攻撃が来ると思っている所にいきなり下から蹴りが来たら対処も難しいじゃろう。大剣を囮にした攻撃は面白かったぞぉ」
「あれやった時大剣重くてバランス取るのちょい大変でしたね」
よくあんな武器ブンブン振れるよなぁ……
「まぁ勝てば盛り上がると思っておったが、ああいうやり方で盛り上げるとは思っておらんかった」
「絶対どっちかは勝ちますからね。それなら悪役がやられる方が皆好きでしょう?」
「だが、わざわざ自分が悪役になる事もなかろう?」
わざわざ悪役になる必要も無かったと言われたらそうかもだけど、盛り上がる戦いって言ったらやっぱりプロレスかなぁと思ったので、あの悪役ロールをしてみた
「ここでこれからも戦うだろうゴーストヴァルキリエさんが悪役になったらこれから戦いにくいじゃないですか。それなら1回きりのドリームマッチとか言われたらストーリー仕立ての戦いの悪役でも良いかなって」
「今後の事も考えて……か、よく考えておるのぉ?」
褒められてちょっと嬉しい。骨の手で温度が無いかもしれないけど頭を撫でられるとちょっと暖かく感じる
「まぁ本来なら盛り上げたら何かやろうと思っとったが、最終的には負けてしまったしのう?」
そういえばそうだ。盛り上げたら何か褒美でくれる的な事を言っていたからやったけどやっぱり負けたからダメかな?
「大いに盛り上げてくれたから死神の礼装でも……と思ったが、流石にそこまでやってしまったら死神の仕事をせねばならなくなってしまうかもしれんしな。下手に仕事を押し付けずに済む程度の物にするかのう……これなんかどうじゃ?」
そう言って何か布の様な物を手渡してきた
『冥布の首巻き を入手しました』
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冥布の首巻き
レアリティ ユニーク
MP +50%
耐久値 破壊不可
特殊能力 幽玄なる歩み(歩行中、ノックバックされない)死神の一瞥(視界内の相手の攻撃が低確率で失敗する)
死神が纏っている黒い衣と同じ素材で出来ているマフラー。一見ボロ布に見えるが、引っ張っても千切れる事は無い。微かに死神の力が宿っており、装備者以外に触れる事が出来ない
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「これは……マフラー?」
「せっかくじゃ。着けてみてくれんか?」
死神さんにお願いされたので着けてみよう。これはアクセサリー枠か、どれか外さないとな……死亡保険は1つ減らしても大丈夫か。というか、これは壊す事の方が怖いから多少ステータスが下がったとしても構わない。小鬼姫のお守りと交換しよう
「おっ?これ結構カッコイイかも!」
首に巻いてみるとマフラーの両端がふよふよと浮いている。白ローブと組み合わせたらワンポイントな感じでカッコイイけど……シスター服とはちょっと、合わないかなぁ?いや、これ別に首に巻かなくても良いのか?
「おっ?おぉ!これなら」
試しにマフラーの浮いている端の部分を目にあてて、見てみる。やっぱりこういうアクセサリーとかは戦闘の邪魔にならない様にか透過して先が見えるみたいだ。これなら目の部分に鉢巻の様に巻いても良いな?いや、普通に鉢巻としても良いか
「気に入ってくれた様じゃな?」
「はい!ありがとうございます!とっても気に入りました!」
「そういえば名前を聞いておらんかったな?せっかく冥界まで来たんじゃ。名前を教えてくれ」
「そういえば言ってませんでしたね?僕はハチです。よろしくお願いします……で良いでしょうか?」
死神さんに挨拶するってそれこそ死んで連れて行かれる前だよな?と思って挨拶がぎこちなくなってしまった
「ほっほっほ、その名は覚えておこう。して、ハチよ?もう一つ頼まれてはくれないか?」
「はい、もちろんお手伝いしますよ!」
内容は聞かなくても良い。雑用だろうが、何だろうがやってやろうじゃないか