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301/2001

盛り上げる為に

『うぉぉっと!乙女の怒りに触れた第二ラウンドだぁ!ここからは武器アリだぞぉ!』


 聞こえてくる声の通り、ブチ切れのゴーストヴァルキリエさんが大剣を振り回す。最初に武器無しでの素手タイマンを所望したけど、僕がやった弓矢固めによって完全にプライドを傷つけられた事で僕を殺さなきゃ気が済まないって目が物語っている。それに観客達も完全にこの流れなら武器を持っても仕方が無いと思っているのかヤジが飛んで来ることは無い。むしろ「やれやれー!」と盛り上がっている。僕はこの状況にサジを投げたい


「このぉ!よくも!よくも!よくも!」

 霊体でありながら顔真っ赤で大剣を無茶苦茶に振り回してくるゴーストヴァルキリエさんは滅茶苦茶危ない。もう可愛らしいとかそんな事に意識を割り振るより、回避に意識を向けないと死ぬ


「……」

 回避を意識するが、それと一緒にこれからどういう展開にするべきかを考える。ここで更に煽るべきか、こっそり謝るべきか……観客にとっては煽った方が良いかもしれないけど、個人的にはもう悪役(ヒール)は精神的に辛い。でも、ここはやり切らないとやっぱり駄目な気がする。そうだ、ロールプレイだ。イベントの時はもっと悪役になる必要だってあるかもしれない。こんな所で中途半端に謝ったところで相手には余計怒られるし、観客達は白けてしまうだろう……そうだよ!何も僕が勝つだけが盛り上がる事じゃない。徹底した悪役が正義のヒーローによって倒されるのは盛り上がる事じゃないか


「その程度じゃまだ俺も負けられないなぁ!もっとやらないと……ちょっ、危なっ!」

「うるさい死ねぇ!」

 こっちが喋っている間もお構いなしだ。余程弓矢固めが効いたみたいだな……恥ずかし固めとかしたら失神するんじゃないか?


「絶対殺す!」

「少し落ち着いた方が良いと思うけど」

 怒りでそれこそスピードは凄いが、まさに力任せという感じだ。攻撃が全て大剣のみになったから受け流すべき攻撃が1つになったと思えばある意味楽になった。やっぱり武器を持つと攻撃方法が武器だけに頼りがちになってしまうんだろう


「おぉ、怖い怖い。そんなに怒らなくても良いだろうに」

「コケにしてぇぇぇ!!」

 大剣を振る速度は更に上がるが、太刀筋は単純になっていく。完全に怒り過ぎだな?これならいくら速くても僕なら対処出来る


「「「「「うぉぉぉ!すっげー!」」」」」

 迫りくる大剣を腕で受け流す光景は単純な殴り合いの様な熱い興奮では無く、自分には無い技術を見る事での興奮。これなら僕が一方的に攻撃されていても会場は盛り上がる


「俺に勝ちたいならそれこそキチンと武器は使わないとなぁ!大剣はただ振りかぶるだけの物じゃないぞ?」

「黙れぇ!」

 闇雲だなぁ?少し見本を見せるか


「あぁもうそうじゃない。こうするんだよ!【ディザーム】」

「な、何っ!?」

 大剣を【ディザーム】で奪い、何とか両手で持つ。重さギリギリだな……まずは一旦背に大剣を背負おう


『な、なんとぉ!武器を奪っちまったぁ!こりゃ形勢逆転かぁ!?』


「大剣の使い方って物を見せてやるよ!うぉぉぉ!死ぬ気でガードしやがれぇ!」

「くっ、このぉ!」

 ゴーストヴァルキリエさんは両手をクロスさせ、僕の上段からの袈裟斬りに対応する気だろう


「喰らえ!大剣キック!」

「なっ!?」

「おりゃ!」

「「「「「ええええぇ!!!」」」」」

 観客達も全て騙す必殺技。大剣キック


「大剣だけが武器じゃないぞ?」

 大剣の柄を両手で持ち、意識が大剣に向いている時に突如下から飛んで来るローキック。意識外からの攻撃で体勢が崩れた所に上から大剣の腹で叩きつける。流石にぶった斬ってしまうと殺しかねないから剣の腹で殴ったけどゴーストヴァルキリエさんはそのまま地面に倒れてしまった。ダウンだ


「「「ワン!ツー!スリー!」」」

 大剣を叩きつけたら手から弾かれてしまった。【ディザーム】の効果で奪った武器だからやっぱり一度使ったら手から弾かれるかぁ……


「「「フォー!ファイブ!シックス!」」」

 手から弾かれた大剣はゴーストヴァルキリエさんの目の前に落ちる。言うなら今しかないか


「そのまま負けたままで良いのか?立て!立って証明してみろ!」

「セブン!」

「「立てー!」」

「「立ってくれー!」」

 カウントに紛れて棘のある応援をしてみる。僕は言いたい事は言ったし、コーナーの方を見て待つか


「エイト!」

「「「頑張れー!立てー!」」」

 観客は皆向こうを応援している。良いぞ一体感がある


「ナイン!」

「「「お願い立ってー!」」」

 あれ?大丈夫かこれ?ちゃんと立てるよな?HPに余裕は無いけど【ライフシェア】しとくか。ここで立ってもらえないと盛り上がりに欠ける


「……テ」

「はぁ……はぁ……はぁ」

 レフェリーもそっちの肩を持つよなぁ……だけどそのお陰で何とか間に合った。立ち上がったぞ


「負けて……堪るかぁ!」

「……掛かってこい!」

 目には理性が戻り、怒りよりも闘志が勝っている。これなら大丈夫……


「ファイ!」

「ぐへぇ!?」

 再開と同時に大剣の腹を向けての突進。これは流石に避けられなかった。リングの外にまで吹き飛ばされ、死神さんにキャッチされる。死神さんにアイコンタクトをして僕はそのまま気絶したふりをする


「うむ、こりゃもうダメじゃな?ほれ」

 リングアウトが無いのか良く分からないけど死神さんがタオルをリングに投げ、勝敗が付いた


『なんと!一度きりのドリームマッチはスーパールーキー!ゴーストヴァルキリエの勝利だァ!観客の皆様は両者に惜しみない拍手を!』


「「「「わぁぁぁぁぁぁ!」」」」

 良かった。ちゃんと盛り上がって終わったみたいだ



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― 新着の感想 ―
[良い点] 元ネタはトンファーキック? [一言] やはりトンファー流は戦闘において有効なのか……
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