逃げの一手
「それじゃあまたアルターで……で良いのかな?多分普通に会うよりアルターの方が早く会えますよね?」
「残念ですけど……そうですね。そっちの方が普通に会うより早く会えると思います」
お昼ご飯を食べてから何処か見ますか?と聞いたけど、迷惑を掛ける訳にもいかないのと、買いたい物も買ってしまったので今日はもう帰るとの事なので菖蒲さんと別れる事にした。まぁ迷惑を掛けない様にと遠慮している所を強引に押したとしても楽しめないだろうし、買いたい物も買えたのなら僕もどうこう言わない方が良いだろう
「それじゃあまた!」
「えぇ、また今度!」
うーん、良かったのか良くなかったのかイマイチ分からないな……
「私のバカ!なんであそこで……」
褒められて舞い上がってしまった結果、一緒に居られる時間を自分で削ってしまうミス。影人君が気を利かせてくれたけどそれに甘えるのはまた少し違うと思って引いてしまった。あの時服を買い過ぎなければ……と後悔する菖蒲であった
「まぁ勝手にデートって思った僕が悪いなこれは。菖蒲さんだと友達と一緒に遊ぶとか普通にありそうだし」
男女2人で買い物に行く=デートでは?と考えてたけど普通に友達と買い物に行くくらいは誰でもあるか
さて、これからどうするかなぁ。レベルアップは何処でしよう?冥界への門を他の所で見つけるか、進める所まで進んでみるか……まぁ最初の所でアレなら先に進めばもっとデカい門はあるだろう。でも、もし冥界に行けたらってなったら行ってみた方が良いのかな?
「まぁやるだけやってみようか。いつも通りだ」
考えるよりも行動だ……って思ったけどちょっと待てよ?少し考えたい事が出てきた。サーディライって祭りの街の以前に常夜の街だっけ?常に夜だから常夜の街……昔読んだ本で常世や幽世は死後の世界。常夜も常に夜だから同じような意味合いがあるって見たんだよな……もしかしたらサーディライの街の近くって案外僕でも通れそうな冥界への門があったりするんじゃないか?
「今日はサーディライの街に行ってみるか」
見つかればラッキー、見つからなかったら……また魔蟲の森で蜂蜜とか取りに行っても良いかな?
「さて、それじゃあログインだ!」
アルターにログインする。今回はサーディライに向かおう
「そういえば森の中だった。まずはファステリアスに行かないとな」
森の中、木の上に張った糸のベッドでログアウトしていたのでファステリアスに行って泉を使わないとな……
『タナカムがぁ!捕まえてぇ!タナカムがぁ!フィールド端ィ!大技読んでぇ!まだ入るぅ!タナカムがぁ!……つっ、近付いてぇ!タナカムがぁ決めたぁ!』
ファステリアスに戻ってきたら何処からともなくそんな声が聞こえてきた。そういえばあのコロシアムでは今は普通に大会とかやってるんだっけ?歩いていたら所々に空中に映像が浮かんでいたので少し見る
今回はエリアアウトで負けが無い設定なのか、確かあの時はレイカさんに銃でやられていたタナカムさんだったかな?敵を掴んで投げ、敵が壁に当たって弾かれた所を更に攻撃をし、反撃の大技みたいなのを躱して更に連撃。空中に浮かされた相手を更に斬ってHPを削り切ったのか相手はポリゴンと化し、タナカムさんが勝利を決めていた。そういえば最初のイベントだったプレオープンの時しか行ってないな。まぁ別に今コロシアムで戦う必要も無いしなぁ……
「こうやって映像でカッコイイ勝ち方を見れるのは良いけど、手の内晒しちゃうからなぁ……」
僕の場合は結構一発ネタな部分もあるからどうせ晒すならイベントでだよなぁ
『皆さんも私のクラン【剣戟衆】へ見に来ませんか?お手合わせ待っています』
映像の中で最後に勝者へインタビュー的な事があってタナカムさんが喋っていた
「あ、そっか。人集めとかこういう方法もあるんだ?」
僕は興味無いけどファステリアスの街中でこういった宣伝活動がクランを大きくするのにも役に立つって感じか。これなら勝てば勝手に宣伝してくれるって考えればコロシアムで戦うっていうのはクランを運営する人にとってはコロシアムで対人の腕前を上げながら賞金とか景品(あるか分からないけど)も使ってクランを大きくするなんて事も出来るなら一石二鳥だったりするかな?
「久々にファステリアスに来たけど、こういうのもあるんだなぁ……」
しみじみしながらも僕には関係無い話かとサーディライに向かう事にする
「うぉぉぉ!」
「オラオラァ!」
「ヒャッハァ!」
「あ、今は喧嘩祭りかぁ……」
ワープしてサーディライに来てみたら色んな人が殴り合いをしている。今は喧嘩祭りっぽいから下手すると絡まれるなぁ……
「オラァ!」
「あっぶな」
そこそこ良いパンチが僕に向かって飛んで来たので、そのまま右手を掴み、柔道の一本背負い。流石に地面にそのまま叩きつけるのはやり過ぎになってしまうだろうから投げるスピードは少しゆっくりに、受け身が取れる時間を作ってから落とす
「な、なんだ!?」
「やべっ」
別に喧嘩がしたいのではなく、殴りかかられたから咄嗟にやってしまったけど、明らかにこれは祭りの趣旨に反している気がする。だからその場はすぐに逃走する事に意識を集中させて街の中心から離れた




